一人旅でタイにやってきたリチャード(レオナルド・ディカプリオ)。誰もしたことのない冒険をしたいが、このままでは連れのガールフレンドもいない観光ツーリストの自分にうんざりしていた。
そんな時、カオサン通りの安宿でダフィという奇妙な男と知り合う。ダフィは伝説のビーチについて、とり憑かれたように語る。そこは、美しすぎるほどに美しく、日常の全てから解放される夢の楽園。だが、その翌日、ビーチの場所を記した地図をリチャードに残し、ダフィは変死していた。
ビーチの存在に半信半疑なリチャードだったが、ダフィの残した地図に魅せられ、隣室にいたフランス人のカップル、フランソワーズとエティエンヌをさそって、伝説のビーチを探す旅に出かける。
アレックス・ガーランドの原作を先に読みました。といっても、オリジナルはすごい文量らしく、私が読んだのは、95ページのPenguinReaders(外国人向けの英文多読シリーズ)。英文多読シリーズもStarterから読み始めて、6段階目のAdvancedに到達。私が読んでいたMcMillanReadersのAdvancedは21冊ありましたが14冊読んで、他の出版社のに目移り。だっていまさら、「アンナ・カレーニナ」や「怒りの葡萄」を英語で読んでもな・・・。McMillanは、大きな出版社ではないらしく、古典が多いんですよね。版権を買う必要がないのでしょう。なので、McMillanに義理立てしないことにしました。あと、7冊ほかの出版社のAdvanced読んだらComplete!ということで・・・。
英文多読って、知らない単語を調べる頻度が少なくなるので楽だし、小説が好きじゃない私にとっては、煩雑な描写や気取った文学的表現が省かれている物語になっていて読みやすいし、それでいて作品から受ける感動はちゃんとある。英語の小説は英語で読んだ方が、内容がわかりやすいし。
閑話休題
このアレックス・ガーランドの原作は、傑作だと思います。映画との違いですが、まずリチャードの国籍。映画の中で、何回も「俺は、アメリカ人だ。」という場面がありますが、原作ではイギリス人です。
それと、リチャードは、映画の中ではフランソワーズと寝るし、サルとも寝る。でも、小説では寝ているフランソワーズの頬にキスするだけで、初心(うぶ)な雰囲気です。それでも、映画以上にスリリングに話が展開します。
あと、重要な人物のジェドが省かれてます。リチャードは、ジェドとライスを買いに行くし、サメに襲われたクリストを看病するのは、エティエンヌではなく、ジェドです。クリストが、苦しんでうめき声を上げるので、みなに嫌われて離れたところのテントに入れられますが、原作では最初からHospital tentに入って、ジェドが一人で看病する。ビーチの住人は、ほとんど誰も会いに来ない。
楽園っていうのは、苦楽の“苦”を隠した場所だと言いたいみたいです。楽だけの人生は偽物だよということかなと思います。
最後、ゼフとサミーに地図を残してきたのがバレて、映画ではサルがリチャードを殺そうとしますが、原作ではサルではなく、ビーチの住人の何人かに刺されたり、切られたりする。そして、リチャードが気を失っているうちにジェド、キーティ、エティエンヌ、フランソワーズにラフトに運ばれビーチから脱出する。
その後のリチャードを描写する、原作の最後のフレーズが気に入りました。
I carry a lot of scars.(たくさん傷跡がある。)
I like the way that sounds.(その言葉の響きが好きだ。)
I carry a lot of scars.
「人生は、試行錯誤だよ。」と言いたいんでしょうね。どこかのビーチに宝石の原石のような“自分”が埋まっていたりはしないんですよ。