1961年。ルドルフ・ヌレエフはキーロフ・バレエ(現マリインスキーバレエ)の一員として、パリ公演のために生まれて初めて祖国ソ連を出た。傲慢・我儘・反逆児と評される一方で、踊りへの情熱は誰よりも強いルドルフは、異国で得られるものすべてを吸収しようとするが、その行動はKGBに監視され、政府の圧力は強まるばかりだった。 6月16日、次の公演地へ向かおうとするルドルフは、突然帰国を命じられる。それは、収容所に連行され、踊りを続けることすらままならない未来を暗示していた。団員たちが旅立ち、KGBと共に空港に残されたルドルフが、不安と恐怖に襲われる中くだした決断とは一

 名古屋の映画館にミリオン座というところがあるんですが、今年の4月にちょっと引っ越したんですよね。同じ地下鉄の駅のはす向かいの位置に・・・。まだ新しい劇場に行ったことがなかったので、新しい劇場見たさにどれでもいいから、見た映画というか・・・。

 有名なダンサーですけど、伝記映画がみたいほど興味もないというか・・・。海外公演の最中にソ連から亡命したというのは、有名なエピソードとして他の映画にも使われてたことがあったんですが、今回のは亡命の場面がリアルでした。そしてそれがクライマックス。

 今が、イデオロギーの時代じゃないのが映画にも表れてます。社会主義について演説ぶつような場面がありません。ダンサーとしての彼の人生を描くなら、尻切れトンボだし、「自由」を求めての亡命なら、もっと「自由」とは何かを描いてほしかった。

 ヌレエフにとっての「自由」とは何かを。

 KGBとフランスの警察官のやりとりが、おもしろかった。対立するんですね。その下っ端の役人同士も・・・。個人に主義主張があって、ヨーロッパ人って、面倒くさいわ。KGBの脅し方も、北朝鮮が日本人拉致被害者にやったのと同じやり口。

 映画の中の、人に指図されるのが嫌いな人でしかないヌレエフが、「踊れない」と感じる社会体制は、いいわけないですよね。独裁者は自分に従わない人や、自分を無視するような人が嫌いです。性格のままに行動してたら、上からにらまれてというのは、どこの世界にもある話。

 1960年代の初めは、ソ連も重厚長大な産業を成功させ、結構自信があったんですよね。このあと、産業が高度化すると、生活必需品をうまく作れないことが顕著になっていく。この時代は、まだ生活に困窮して西側に渡りたいという人は、あまりいなかった。

 計画した亡命ではなかった。ネタばれになるので書けませんが、要するに、瓢箪から駒みたない亡命だったんですね。

 そして、それは多分正解だった。
 
評価は、☆三つくらいかな・・・