中国は、「衰退はしても、崩壊しない。」状態に陥るだろう。
中国出身で海外に移住した、ジャーナリストと経済学者が、外国人にはうかがい知れない、中国式ビジネスと、共産党政治と中国社会の、裏側のカラクリを解説する。
中国崩壊論も、はや20年。いまかいまかと、崩壊を待ちわびている人もいるのではないか。でも、つい最近も、習近平率いる中国共産党は、立派に全人代を終わらせ、新しいチャイナ7を選び・・・、ずいぶん安定してるじゃん?
そういう疑問を持つ人には、すごく腑に落ちそうな本です。日本人が、数字をいくら分析してもわからない中国人の中国国内での行動が、すごくよく解説されているからです。
中国の腐敗の様子が解説されており、共産党の高級幹部とその親族が、濡れ手に粟で、国有企業を民営化する際に、莫大で不法な金を収奪し蓄財する様が描かれています。
また地方政府が、税収を上げるために国有資産である農地を農民から収用し、不動産開発や製造業の誘致で莫大な税収を上げる。それが地方政府幹部の出世の近道なので、農民がどんなに暴動を起こそうが、環境汚染が起きようが、全く歯止めはかからない。
中国共産党政権は、アジア・アフリカの発展途上国によくある盗賊型政権の一種なのだ。
また2009年から始まった、輸出の伸びのストップと中国人労働者の賃金上昇で外資の撤退が始まったが、全体での中国投資の額があまり減らなかった。これは、「偽外資」によるもので、海外に移住して起業した中国人が、中国にもどって不動産転がしで利益を得ようとするので、中国の不動産があまり値下がりせずに今に至っている。
最初に書いた、中国は、崩壊しない。衰退するのみですが、これは、共産党政権が倒れることはないと著者は予想しているのです。中共政権は武力で奪取した政権であり、現在も銃でにらみをきかせ、民衆はほぼすべての権利を奪われている。中国人は、第一世代の人権(選挙権、言論の自由、出版の自由、集会の自由)さえ、認められていない。共産党の権力は強大であり、政府が財政と、資源と、警察と軍を掌握している限り、共産党政権が倒れることはまずない。
では、どんな衰退をするのか・・・?
著者はいう。「衰退」とは壊滅、ほぼ総崩れを意味している。つまり、中国社会が政治、環境、社会道徳システムの面で全面的な壊滅状態に陥るだろうということである。
現状でも、様々な衰退の兆候はある。失業人口が増加し、政府の借金が膨らみ、金融システムが危機に瀕し、外貨準備高が急速に減少する。
選挙で選ばれてない政権は、北朝鮮の金政権をみても、強靭なのだ。
この本にもイギリスのメイ首相の講演の話が出ているが、最近、欧米の先進国の首脳が、人権問題で中国を批判しないのは、自分たちの理想のイメージに発展途上国をあてはめて、期待するのは諦めたということらしい。
中国や北朝鮮に民主化を期待するのは土台、無理ですね。