ペルシャ近現代史を勉強するためイラン・テヘラン大学に留学した一大学院生の2年弱にわたるテヘラン滞在記である。

 

 著者の専門領域の話はほとんど出てこず、実際に住んだテヘランの下町の横町に住むご近所さんを取り上げ、その言動を描写しつつ、イラン人の性格と彼らとの著者のテヘランでの生活をエッセイとして書いた物です。

 

 インテリの人が、あまり接したことのない商店の従業員や店主などの庶民と友人として長時間接しているので、日本であっても多少の違和感があるのではないかと思うのですが、そこにまたイラン人のこすからい犯罪性行が加わります。それを隠さず正直に書いてます。いい人ばかりの話を読みたがる向きには、あまり感じよくないかもしれません。

 

 でも、世界各地こんなもんですよ。日本が異様なんです。庶民まで、いい人が実に多く行儀がよく、小さな犯罪も少ないのは・・・。

 

 日本人の奥さんが、親切な人だと思っていた知り合いに性的ないたずらなどされた後に、「ヒジャーブをかぶったら・・・」と著者が奥さんに勧めるところが印象的。可愛らしい奥さんは、拒否するのですが・・・。

 

 イスラム教というより、中東の男性のマナーの悪さが、ヒジャーブなどの女性を隠す慣習を生み出しているというところが、テヘランでの日常からわかるようです。男性の道徳心のなさとマナーの悪さを、女性が魅力をさらすからだと、女性の責任にしている。これは、やはり男尊女卑だと思います。

 

 あと、意外にもイスラム革命を不満に思っている庶民が多いこと・・・。パーレビ国王の時代の方が良かったと考える人が多く、若者は国外に出るチャンスをうかがっているのだそうです。

 

パーレビの時代は、政治的自由はイスラム教国になった後と同様になかったが、服装や飲酒が自由など、慣習と風俗の自由があった。世俗の自由があったんですね。

 

 革命というのは、共産主義革命同様、一部のイスラム僧侶が指導的地位を強奪するものになったため、宗教警察に服装を取り締まられるし、飲酒も駄目になり、民衆の不満と不便が高まった。加えて、核開発でアメリカなどに経済制裁されていて、経済も落ち込んでインフレ年率30%だったらしい。

 

 革命って、実際は、そんなもんなんですね。