稀代の社会科学者にして数多くのベストセラーを輩出した小室直樹氏。その経済論の代表的著作『小室直樹の資本主義原論』と『日本人のための経済原論』を合本して復刻。経済学の基本、日本経済、日本社会の問題点を、博覧強記の著者が古今東西の逸話を取り混ぜながら解説。目指すところは「あなた自身が経済学者になれ」。著者の数ある著作の中で、まず最初に手にしたい小室思想の入門書。

 

前から読んでみたかったんですが、価格が高いし大きくて場所ふさぎなので久々に図書館に行って借りてきました。市の図書館が新しくなってて、貸出もセルフ・サービス。広々として綺麗でした。

 

2冊の本を復刻して合本したものです。1997年と1998年の初出ですが、紹介文に書かれているように古さを感じません。難しい言い回しは多いですが、古いというより著者に教養がありすぎるのだろうという感じです。

 

まずキリスト教を元にした「所有」の概念が、日本にはない。だから日本には、資本主義がないのだと言ってます。私でも、人からもらった物を処分するのにちょっと気がひけるというか、捨てられないみたいな感じ持ってますね。

でもキリスト教文化圏での「所有」は、煮るなり焼くなり好きにするというのが、「所有」です。それは神が被造物を破壊しても殺戮しても良いと旧約聖書に書いてあるから、そこから派生した概念なのだそうです。

 

日本経済は、封建主義と資本主義と社会主義の鵺経済だと小室先生は言ってます。そして資本主義とは、「淘汰」だと・・・。

 

日本には「淘汰」がない。確かに、いまだに零細企業には、奥さんがパソコン使わずに電卓と紙の帳簿つけてるような商店や会社がありますね。

 

また、古典派経済学とケインズ経済学、マルクス経済学を比較して解説。高校で習う需要と供給の交点で価格が決まるとか、よく経済記事や国会の質問で出てくる、

 

国民総需要=国民総生産=国民総所得=消費+投資

 

とか有効需要とか乗数の計算。公共投資に威力があるのがグラフでわかるようになってます。

私も数学苦手ですけど、出てくるのは、微分と数列。あとは一次関数と四則演算くらいです。丁寧な解説ですけど、小室先生は数学嫌いな人は読まなくてよいと言ってます。

 

経済学部ではない人や、大学で経済f学部だったけど全然授業の内容をわかってなかった人に、経済の基本を教えるてくれる優れた解説本だと思います。

 

世界中の歴史的事例の考察が多数あって、宗教の解説本という趣もあります。

 

でも、やっぱりこういうの、小室節っていうんだろうなあ・・・。