パリに住む富豪のフィリップは、頸髄損傷で首から下の感覚が無く、体を動かすこともできない。フィリップと秘書のマガリーは、住み込みの新しい介護人を雇うため、候補者の面接をパリの邸宅でおこなっていた。

 ドリスは、職探しの面接を紹介され、フィリップの邸宅へやって来る。ドリスは職に就く気はなく、給付期間が終了間際となった失業保険を引き続き貰えるようにするため、紹介された面接を受け、不合格になったことを証明する書類にサインが欲しいだけだった。

 気難しいところのあるフィリップは、他の候補者を気に入らず、介護や看護の資格も経験もないドリスを、周囲の反対を押し切って雇うことにする。フィリップは、自分のことを病人としてではなく、一人の人間として扱ってくれるドリスと次第に親しくなっていく。

 

 白人の富豪と黒人の介護人が親友同士のようになっていく過程を描く話で、「ドライビング・ミス・デイジー」のような話のフランス版なんですが、少し違うのが、アメリカ人とフランス人の違いと20世紀の初めと21世紀初めの違い。

 

 昔聞いたことがあるのは、フランスの黒人のほうが信頼できると、言われていました。それは、フランス人の黒人の扱いが比較的良かったから・・・。

 

 ドリスの「実用的」な性格と、フィリップの「形式的・芸術的・象徴的」な性格を、お互いに影響し合って、それぞれが相手の性格を取り入れて行くんですね。これは、「ドライビング・ミス・デイジー」の中で主人が召使いに善良で知的な人間性を見いだしていくのとは、はなから個性のある人間同士なんだという点で、前提が違います。

 

 エマニュエル・トッドのいうとおり、フランス人はいい加減なので、真面目に「差別」をしないんですよね・・・。

 

 ちょっとブラックなジョークや男同士の卑猥な冗談が満載で、笑っているうちに、そういう人間同士のドラマが見られる佳作です。

 

 実話に基づいているんですが、実話の方は、劇中では雇ったのはドリスというアフリカ系の黒人になっているが、実際はアルジェリア出身のアブデルという青年(当時24歳)だったそうです。

 

 2011年、第24回東京国際映画祭のコンペティション部門の最高賞である東京サクラグランプリを受賞、日本で公開されたフランス語映画の中で歴代1位のヒット作となった。