![]() | どですかでん[東宝DVD名作セレクション] 2,700円 Amazon |
とある郊外の街の貧しい地域。六ちゃんと呼ばれる少年は、学校にも行かず毎日近所の空き地に出かけては、他人には見えない電車を運転し、当人は自分が運転手だと本気で信じ込んでいるようで、それを母親は、息子が精神に異常をきたしたと思い嘆くが、六ちゃんは母親の頭のほうがおかしいと考えている。
内職職人の良太郎は、妻が浮気性なため子供をたくさん背負っているが、自分をほんとうの父ちゃんだと子供たちが思えばそれでよいと考えている。日雇い労働者の河口と増田は夫婦交換をして、翌日には何食わぬ顔をして元の家に戻っている。陰気な平さんの所にはある女が訪ねて来るが、この女と平さんとは過去に何かがあった様子。女は平さんの家事手伝いをするが、彼は終始無視していた。廃車に住む乞食の親子は邸宅を建てる夢想話をしているが、子供はしめ鯖にあたって急死する。彫金師のたんばさんは人生の達人といえる人物で、日本刀を振り回す男を鎮めたり、家に押し入った泥棒に金を恵んだりする。
ここに暮らす人たちは、変わった人ばかりである。六ちゃんはその中で電車を走らせ、日は暮れてゆく。
黒澤明が、『デルス・ウザーラ』の前に日本で撮り、以後5年間日本で干される原因になった大コケした異色作。
無理もないです。人間、作り事としてヒューマニスティックな作品は観たいけど、人間の汚さ、情けなさ、いい加減さを正面から活写した映画なんて、たまの休みに映画館まで出かけて観たくないですよ。
しかし、黒澤明って、どんなジャンルの映画でも映画が撮れたらそれでいいという監督だったんだなと納得のいく作品です。ある物語があったらそれをどう映像で表現するかに腐心する、表現者だったんだよね。
自分の選んだテーマの作品を観客にわかりやすく伝えようという精神は痛いほど伝わってきます。夫婦交換する夫婦の組み合わせを紅組、黄組と衣装で分類する親切な演出を観ると、黒澤明がどんな監督だったのかわかろうというもの・・・。
「どですかでん」というタイトルは、六ちゃんが架空の電車を運手して電車が動き出すときの音を表しています。