シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 (文春新書)/エマニュエル トッド

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 ムハンマドを風刺したシャルリ・エブド襲撃事件のあとフランス全土で起こった「私はシャルリ」デモ行進についてのトッドの考察。

 エマニュエル・トッドは、1976年(25才のとき)に10年から30年以内のソ連崩壊を予言する著作を発表したフランスの人口統計学者。

 この本読むと、世界最高の知性の一人が、こういう人であることに、感動を覚えます。

 2015年1月の「私はシャルリ」デモは、イスラム教を卑猥に風刺する権利を共和国の価値だとしてフランス全土で熱狂的に行われたが、トッドは没落するフランス社会の人種差別的なナルシシズムとして批判した。フランスメディアは激昂したが、最初のインタビューが日本の日経新聞に掲載されて、それをAFPが翻訳紹介した物だったため、トッドの態度を日本国民の多くが支持しているとして、トッドが日本を知的足場と考えるようになった。

 この本途中まで、専門書のようにフランスの地図が出てきて、宗教別の態度とかと政治的指向性を比べるような話ばかりでちんぷんかんぷんです。

 結論として、こういう公式が成り立つと言ってます。

 宗教的空白+格差の拡大=(つまり)外国人恐怖症

 日本でも、かすかにこういう感覚は、ありますね。日本でイスラム教徒やユダヤ教徒になぞらえられるのは、まあお隣の国出身の人達かな・・・。ただ人が死ぬテロはまだ起きてないので、トッドは日本には何故外国人恐怖症が起きないのか、訝しがってますね。

 トッドは、フランス人は自分がしている人種差別を、ナルシシズムで、自由・平等・友愛という価値と誤認させていると批判しているのです。

 それを孤立しながらも、必死に反論する学者の知的誠実さ・・・。学者って頭がいいだけなら意味ないですね。誠実で、勇気があって、社会に必要なことをわかっていなければ・・・。

 この人ほんとに頭良くて、週刊誌に載ってたインタビューを立ち読みしたんですけど、「日本人は、人種差別的なのではなくて、完璧主義なので秩序が乱れるのを怖れて、移民を受け入れたくないんですね・・・。」と語っていた。
 私はその通りだと思います。

 
 他に、
 折り合いをつけるという選択は、その成功の確率がどんなレベルであっても受け入れることが出来る。なぜなら、対決が失敗に終わる確率は100%だからである。

 後書きの少し前に出てくる言葉なんですが、ここでも十七条の詔は偉大だったなと思います。日本の社会は、先人の努力もあって、社会が和合してますね。