町長選挙 (文春文庫)/奥田 英朗

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 泣く子の黙る伊良部の暴走が止まらない、絶好調シリーズ第3弾

 前2作に比べて、アマゾンのレヴューでも星が一つ少ないですが、私は楽しめました。

 4編中3作品が、実在の人物のパロディになってるんですが、名前は変えてあるので、許可は取ってないでしょう。

 「オーナー」がナベツネ
 「アンポンマン」がホリエモン
 「カリスマ稼業」が黒木瞳

 私、「オーナー」と「アンポンマン」はすごく面白かったし、モデル本人にも読んでもらってかまわない、良さがあると思いました。決して揶揄するだけの内容ではなく、モデルの魅力というものを伝えている作品だと思った。
 「カリスマ稼業」は、ちょっと不満。黒木瞳が若く見えるのはそうだとしても、体型さえ維持できれば、照明がものをいうのが、テレビや映画の世界ですから、本人が焦るのはなんか違う気がした。黒木さんの容姿だけを問題にして、性格の特徴(厳しいと言われる)をテーマにしていないのは、研究不足じゃないかなと思った。

 
 最後の「町長選挙」なんですが、伊良部でなくても成り立つ話でした。でも、面白かったです。ただいま真っ盛りの米大統領選も、この千寿島と同じで、お祭りなんだと思うと理解出来るような気がします。

 民主主義なんて、やれる場所は世界でも限られてるでしょう。選挙と言いながら、買収競争に興じ、果ては勝負事で決めるなんて言うのも、節度さえあればOKかも。

 ドクター伊良部の一言「物事、死人が出なきゃ成功なのだ」は、名言だと思いました。

 前作の「空中ブランコ」は、直木賞を受賞し230万部も出たので、新しいことに、挑戦した作者の心意気を褒めたいです。