アートは資本主義の行方を予言する (PHP新書)/山本 豊津

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「東京画廊」のオーナーが豊富な知見を披露しながら、資本主義と美術の関係を解説する。そして現代アートから予測できる未来の世界とは・・・。

 水野和夫さんが、帯解説を書いていたので、つい手に取ってしまいました。

 東京の銀座にある画廊のオーナーである著者は、美大の建築科を出て政治家の秘書をやったあとに、実家の仕事に戻った変わり種。学生時代は、学生運動のまっただ中で、あまり大学での勉強はせずに、グループを作って、資本論などを読んで勉強していたそうです。

 ですので、ここに書いてある、資本主義と美術品の価値の関係の分析は、とても正鵠を得ていると感じます。権力と文化・芸術の関係と言ってもいいですね。

 現代アートなんて、意味もわからないし興味をもてなかったけど、作品には歴史的な意義が必要になるということを聞くと、勉強すれば私にもわかるかもと思いました。自分でアートを制作して売ろうと思ったら、自分の世界に引きこもって居ては駄目だとも・・・。他人の意見を聞かなければいけないと。

 資本主義は、現状フロンティアを失った状態。中国の次の場所が、資本主義の準備が今ひとつ出来ていない場所しか残っていない。アートに注目すると、中国の次の市場がないのですね。

 西洋近代がもたらした行き詰まりは、世界中でISのような揺り戻しを起こしています。みんな不安で不安定なんですね。それを無理矢理押さえつけようとするのでイスラム原理主義に回帰しようとしたり、国家主義や民族主義が台頭したり・・・。

 そうなったとき、日本は次はどうしたらというアイデアとして、著者は江戸に戻ること提唱。まあ、そういう運動は、おこりつつありますね。近代化で、ないものされた価値観を掘り起こすような活動が目につくようになっています。意外とやってる人達も、無意識です。

 現実が動くと、そんなもんです。