超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)/水野 和夫

¥778
Amazon.co.jp

 世界金融危機を単なる景気循環の問題としてとらえるならば、この先を読むことはできない。むしろ、資本主義そのものの大転換、四百年に一度の歴史の峠に我々が立っていることを認識してこそ、経済の大潮流が見えてくる。
 資本主義の歴史的な構造変化を大胆に描いてきた異色のエコノミストと国家への深い洞察にもとづいて理論的考察をくりひろげる哲学者が、経済学者には見えない世界経済の本質を描く意欲的な対論。(表紙見返り)


 水野さんは、「過剰」を戒めてらっしゃるのか、著作の刊行は少なめです。色々、「あ、そうだったのか。」と思うようなことが書いてありました。

 一つ目。イラク戦争にアメリカが出ていった真の理由。イラクの地下にある石油資源の利権を目的としていたという意見を当時にも聞きましたが、実はそうではなかった。

「1999年にEUの共通通貨ユーロが発足すると、サダム・フセインは2000年に、これからは石油の売上代金をドルで受け取らない、すべてユーロで受け取る、ということを宣言した。」これが、イラク戦争の原因だと萱野さんは主張しています。アメリカのドルの国際基軸通貨としての地位が揺らぐのを嫌ったわけです。

 ね、こういう本を書く学者だって、アメリカの金融帝国主義ぶりは、指摘してるでしょ。石油の代金だけドルを発行できシニョレッジ(通貨発行益)が入り、イラクを通じて銀行にまわったドルは何倍もレバレッジをかけて投資できる。

 国際基軸通貨としてのドルを守るために戦争までするんですから、政府紙幣を発行しようとする大統領の3人や4人、ぶち殺すくらいなんでもないですよ。


 二つ目。グローバル化以降、景気がよくなっても、実質賃金が増えなかったのは、売り上げよりも資源(石油)価格の増え方が大きかったから。お金ジャブジャブやってもインフレは起こらない。製品価格の安い途上国との競争になったから。


 金融資本主義も資本主義の一変形に違いはなく、投資の余地がなくなれば低利子率になるのですけど、資本主義の終わりのその後は、経済学者にも哲学者にも示せないみたい。

 アングロサクソンは、ルール作りで新しいフロンティアをまた発明するかもしれません。

 日本はどうだろうか?私は、日本は新しいエネルギー資源開発とか、蓄電技術開発のような方向で頑張るしかないのかなと、思います。


 日本が作ったルールを採用してくれるほど世界は親切じゃなさそうだもんね。

 それと社会保障費の問題をまったなしでなんとかしないと、近い将来年金も医療も破綻すると思います。