資本主義の正体 マルクスで読み解くグローバル経済の歴史/池田 信夫

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 池田信夫氏が、「搾取」とか「格差」とかバイアスのかかった視線でながめずに資本主義を虚心に眺めて資本主義の正体をあらわすことを目的とした本。

 結構分厚くて難しかったです。池田氏の本は、難しいので売れないと本人も言ってますけど、わりと正当なところを書いてると私は思います。

 次の動画で、いまはやりのピケティの理論の解説と比べながら読むとこの本の内容も理解しやすいのではないかと思いました。

 


 簡単な結論から言うと、資本家が投資から得られた収益をまるどりできるけれども、その投資が失敗したときには投資損失を負わなければならないというところが、これまでほぼ資本主義に関する理論から抜け落ちていた。ということのようです。

 つまり資本家は、「リスク」を取っている。だから、当たったときには、まるどりするのが当たり前ってことですね。博打打ちがスッテンテンになるのをみんな知ってるのに、資本家にはそれがあることをみんな見ないふりと言うか、無視してきたのではないかという、とってもショボイ結論みたいです。

 格差が拡大して見えるのは、資本が蓄積されてくると資本収益が大きくなるということのようです。資本収益率が大きくなるわけではない。

 それをあらわした数式がこれ、

α=r×β(資本収益/国民所得=資本収益/資本 × 資本/国民所得)

 つまり r(資本収益率)が一定だったら、資本が大きくなれば国民所得に占める資本収益の割合は高まるということですね。

 

 お金があるから資本家になれるわけでもないですね。リスクを取る気がない人には無理です。

 資本主義ができたのは、植民地からの財貨の強奪によって大規模投資が可能になったからなのだというのが、最近の歴史経済学の有力な説になってきている。

 それに似た例は、多いですね。例えば韓国も日本からの経済協力金5億ドルで大きな経済的飛躍を成し遂げた。まず大資本ありきなんですね。しかし現在の韓国は借金まみれです。一度経済破綻もしてますね。つまり中進国の罠に並の国だとはまって終わりになる。タナボタや借金で事業を始めたはいいけど、投資を上回る収益を上げ、浪費せずに自前の資本蓄積が行えたか?これができないと、中進国で止まるんです。韓国はすでに欧米資本の植民地と化してます。

 中国も規模が大きいし経済統計が胡散臭いので、実態がはっきりしないですけど、最近、リーマンショック後800兆円を無駄に投資したとニュースになってました。中進国の罠にはまってる可能性が大ですね。

 日本は唯一例外らしい。戦争に負けてボロボロになったので、よそから取ってきた財貨で資本主義を成功させたのではないですね。これこそ、勤勉と倹約。そして石油資源を安く買えて加工貿易で大儲けできたこと。

 シンガポールのリー・クアンユーが「日本は普通の国ではない、特別な国だ。それを覚えておく必要がある」と言ったのはこれを指していると思います。

 過去の栄光にひたっていても仕方ないですね。池田氏は、円安誘導てきなアベノミクスは、一時代前の日本に適切な政策で、現在はGDPを増やすのではなくGNI(国民所得)を増やす政策をとるべきだと言ってます。