白痴 [DVD]/原節子,森雅之,三船敏郎

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 亀田と赤間は北海道へ帰る青函連絡船の中で出会った。亀田は沖縄で戦犯として処刑される直前に人違いと判明して釈放されたが、そのときの後遺症で癲癇性の白痴にかかってしまったのだった。札幌へ帰ってきた亀田は狸小路の写真館のショーウィンドーに飾られていた那須妙子の写真に心奪われる。しかし彼女は愛人として政治家に囲われていた。

 黒澤のドストエフスキー作品の映画化。166分ですのでこれでもかなり長いんですが、もともとのオリジナルは、4時間25分もあって、ものすごく切られてるわけです。それを映画観てて感じざるをえないですね。

 それでも、音楽の対位法のような、物語の人物の対立をドラマにするときに世界中のどの映画監督よりもドラマの対位法のようなものを、独自の理論で理解していたのではないかと思われる黒澤の優れた演出が見られるところに、今回もまた感心してしまいました。

 またしてもというか、日本での評価より海外それも本場のロシアでの評価が高く、ドストエフスキー作品の映画化の最高の作品がこれであると当のロシア人に言われているそうです。

 この話、キリスト教のロシアン・オーソドックスの理解も必要なのだろうと思いますが、キリスト教の善、愛、信仰を人間が受け入れることの不可能性を森雅之演ずる「白痴」の行動が周囲にもたらす破壊性によって表現してるところが、一神教を理解していない日本人の観客には今一つ意味不明に感じられるようです。黒澤明は作品の本質をたしかに理解していたと思います。でも、日本の評論家の低評価を見ても、これは日本にはなじまない作品だよなあと思います。

 インターネットで色々他の人のブログを読んでみたけれど、黒澤の作品について論じるときにあんまり細かいことはいいんじゃないかと思いますね。

 もう一つ、ロシアの冬の寒さってロシアの風土であり、ロシア人の性格を形作っていると思うので、設定を日本に変えても北海道を舞台にしたのは必然で、冬でも表で寝られるような場所ではこの物語自体成立しないし、ドスエフスキーのような作家も生まれていなかっただろうと思いました。

 私が生きてる間に4時間25分のヴァージョン公開してほしいですねえ。