恨(ハン)の法廷 (エコノミステリー)/井沢 元彦

¥1,325
Amazon.co.jp

 ソウルの高速道で事故死した大勢の日韓両国の人たちが、死後、両国の歴史認識の違いや文化的な論争を「神」の前で「法廷闘争」するというもの。この裁判ではすごい大物たちが証人として登場する。日本人では聖徳太子、親鸞、上杉鷹山、韓国人では朝鮮民族の祖とされる神話的人物・檀君、ハングルの生みの親・世宗大王など錚々たるメンバー。

 偶然ネットでこの本の書評をみつけたのでさっそくAmazonで注文したのですが新刊本はなく、タッチの差で1円の中古本を買い損ねた。カートに入れたのに注文確定したのが遅かったんですよね。1週間ほど経って今Amazonのサイトを見たら4980円のベラボーな値段の中古本が1冊だけ残っていました。

 さすが井沢元彦だわと思いました。韓国が日本を恨んでいる理由というのは井沢元彦氏の他の著作などを通じて知っていましたが、この本を読むと東アジアの思想状況や国として採用した制度が、現在のそれぞれの国家体制にどのように影響を与えてきたのかと言う事がとてもよくわかるんですよね。

 巻末に書かれた参考文献のリストを読んでも、またここに山本七平の『現人神の創作者たち』というのがあって、『現人神』を読んでわからなかった天皇の役割がはっきりここで示されています。

 また、北朝鮮では金日成が世襲をしたのに、中国では世襲が行われないのでよりまともな共産主義国家に見えるが、これは何故か。この本を読むとその理由がわかります。

 ただ、書かれたのが1991年と20年以上前で、創氏改名など歴史的事実について韓国側の主張がそのままになっている物も多いなと感じました。「嫌韓流」のような漫画が出て日本に韓国に関する知識環境も随分この10年ぐらいで変化をとげたんだなと思いました。

 韓国がずっと反日、侮日を続けている事に日本人がまともに反論しないのは、逆に韓国を馬鹿にしているのだという井沢氏の意見はその通りだと思います。日本人の遠慮はお互いの理解を妨げているのだということを日本人も理解すべきなんです。

 この本の物語の冒頭に出てくるような事件は、韓国に進出した事のある企業の駐在員などは大なり小なり経験(私が以前勤めていた商社の営業部長の一人が韓国では必ず変な問題が起こると言う話をしてました。)しているだろうなと思います。何かトラブルがあると必ず韓国側のいやがらせがあるんですよ。
 
 どんなに日本で韓国への投資を進めるセミナーをやっても日本企業の投資は低調だというのは、まあ当然だろうなと思います。