舞姫(テレプシコーラ) 1 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)/山岸 凉子

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 埼玉県のベッドタウンで暮らす小学校5年生の篠原六花(ゆき)。彼女はひとつ上の姉千花(ちか)と、自宅でバレエ教室を営む母のもとで、バレエを習う少女である。おっとりした性格の六花は、優秀で明確な意思を持ってプロバレリーナを目指す姉の千花と比べられながらも、ただ踊るのが好きでのんびりとバレエをやっていた。
 夏休み明けの新学期。奇妙な転校生、須藤空美が現れる。醜い外見からは想像もつかないが、彼女のアンドゥオールの足や180度に開く脚を見た六花には、彼女はバレエをやっているとしか思えなかった。その頃六花はバレエダンサーとしては致命的ともいえる自分の身体的欠陥を知らされる。一時はバレエを止める決意までしたが、空美の踊る姿を見て再びバレエへの気持ちを取り戻すのだった。
千花と共に埼玉バレエコンクールに出場した六花は、予選通過の実績が認められ東京の貝塚バレエ本部のエリートクラスに加わり、新しい先生達とも出会う。千花はバレエ団本公演『くるみ割り人形』のクララ役に抜擢され、華々しいデビューを飾るが、舞台上のアクシデントで重傷を負い、幾度もの手術と先の見えないリハビリを強いられ追い詰められていく。
 中学生になった六花は振付に興味を持つようになる。彼女のコリオグラファー(振付家)としての天分を見抜いた富樫により、六花は本公演のクララ役に抜擢され、重圧に翻弄されながらもクララを見事に踊りきり、その経験を自らの力とした。だが千花の方はプロバレリーナを目指す最後の望みを託した靭帯生体移植手術でも完全回復せず、絶望する。
 果たして彼女は一流になることができるのか。バレエに対する情熱と自分自身に対する不安。バレエダンサーを目指す者特有の壁が立ちはだかる。
 同時に、小学生時代から仄めかされていた「いじめ」問題が篠原家を翻弄する。更にバレエという夢舞台の裏側の、少年少女達の厳しすぎる現実をもえぐり出す。(Wikiより)


舞姫(テレプシコーラ) 第2部 5 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)/山岸 凉子

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 六花は高校1年生に。ローザンヌのビデオ審査を通過し、同じく審査を通過した茜や他の参加者共々成田空港に集っていた。六花は前年秋のユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)日本予選でもシニア3位、決選出場権を獲得するまでになっていた。千花の夢と共にローザンヌに挑戦すると決意した六花。ところが、雪によるフライト欠航の影響で一行は予定を大幅に遅れ前日深夜に何とかローザンヌ入り。そして翌朝、ローザンヌ・コンクールが始まった。
 そこには、世界各国からの出場者がいたが、特筆すべき存在として中国系アメリカ人のローラ・チャンがあった。彼女は東洋的な美貌、長身の完ぺきなスタイルとバレエ・ダンサーとしての身体能力とテクニックを備えたローザンヌの本命というべきダンサーだった。彼女との交流を通じて、六花はローラがいなくなった空美の成長した姿なのではないかと思い始めるのだった。


 山岸先生の『アラベスク』以来のバレエ長編。昔のアラベスクでパ(バレエの動き)の名前を色々間違えていた事を知ったそうで忸怩たるものがあったらしく今回とても色々取材なさってますね。

 この物語の重要な人物は、主人公の六花と千花姉妹、空美、ローラ・チャンですね。

 特に千花と空美は、同じ像の表面と裏面と言ってもいい存在なんですよね。プロもバレエ・ダンサーを目指しているが不運と近親者の身勝手な行動の結果、バレエ・ダンサーへの夢を立たれることはおろか大人になることも出来ない。

 六花は、その2人のイメージを抱えて少女から大人への坂を上ってくのですよね。特に姉のイメージに叱咤されながら。

 そして、ローザンヌでローラ・チャンに出会う。

 ローラ・チャンは、千花と空美が統合されて大人になった姿なんだなと私は見ました。

 第2部の中では、ずっとローラが実は空美の成長した姿なのかという疑問が提示されますが、これは最後まで答が出されません。

 終わった時に理由がわかりました。山岸先生は、この続編を書く気がないのですよね。だから、はっきりさせなかったし、六花の振付家としての将来とローラをディーヴァとして彼女の振付をローラが踊るという組み合わせを暗示してこの作品を終わらせています。
 これは、日本のバレエ界の現状を反映させるのが、この作品の役割だと山岸先生が明言されているので、名振付家が日本に出ていない現状では、六花の未来は書けない訳です。

 アラベスクと違い、日本を舞台に出来たのは、森下洋子さん以来日本にもたくさんの優れたダンサーが出て活況を呈しているからなんだそうですが、優れた振付家が出て日本のバレエを作る日が来たら、また山岸先生がこの続編を描いてくれるのでしょうかね。

 なんか楽しみですね。