イノセンス スタンダード版 [DVD]/押井守,大塚明夫,田中敦子

¥3,990
Amazon.co.jp
前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のラストで少佐こと草薙素子が失踪してから4年後の2032年が舞台。
少女型の愛玩用アンドロイド「ロクス・ソルス社製 Type2052 “ハダリ(HADALY)”」が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者とメーカーの間で、示談が不審なほど速やかに成立し、被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9課で捜査を担当することになり、公安9課のバトーは、相棒のトグサとともに捜査に向かう…
年齢的にこれから押井守がアニメの監督をすることがないならば、これが彼のアニメ映像の最高水準の作品ということになるのではないかというのが私の個人的意見です。
『攻殻機動隊』は、士朗正宗の世界観に基いて作られていたけれども、この作品はその世界観を前提とするも脚本・監督を押井が担当したせいで押井の好みが強く反映している。統治権力の意志があからさまになる警察・公安ものであること、日常当たり前とする前提(例えば人間は人形ではない)への疑い、おかしな繰り返しが起こること。
ただ物語とテーマ(人間と人形の違いとはという問いかけ)があまり深く関係せず、殺人事件捜査のフォーマットを完成させる事と草薙素子をバトーと再会させる事で終わっている。
それを引用で語っていくという独特の手法が採られていて、若いころに乱読した思想書や文学作品へのオマージュなのか、自分がなれなかった作家というものへの憧れなのか、悪く言えば物語でテーマを語れないので引用で観客に目くらましをかけているとも言えるのかもしれない。ま、だから作家になれなかったのねと言う事ですが。
女性鑑識官ハラウェイの語る「人形」論によって物語のテーマを提示し、キムの館のシーンの後で一応の答えではないけれども結論めいたものをバトーに語らせている。
「自分が生きた証を求めたいなら
その道はゴーストの数だけあんのさ」
世界観の説明編がDVDの前篇として収録されており、その中で「ゴースト」という概念を「魂」「意識」とも言えると説明している。
しかし、精神分析家の故河合隼雄氏は、「魂と言うのは、"心"と"体"を継ぐものだ」と説明しておられたと記憶している。つまりこの考えに従うと脳と肉体を分けた瞬間に魂というものは無くなると言える。また、このような考えに従えばネットの海に生息してる草薙素子は魂を持っていないことになる。
この作品は、人間と人形の違い、サイボーグと人間の違い、人の魂とはという問いかけに答はだせていないけれども、観客に考えさせるよすがになっているのではないかと思う。
演出について:
宮崎駿に比べて、押井がプロの声優を非常に上手く使うことにも好感を持ちます。草薙素子の声が田中敦子でなかったら、ハラウェイ女史の声が榊原良子でなかったら、声優ではないけれども、キムの声が竹中直人というのも声で演技が出来る人をちゃんと選んでいる。前者の2人に至っては人格もある程度声で作られてしまっているよなあと思います。
押井はアニメにはこだわらず、実写の映画も年齢が高くなり有名になってくるにつれ本数が増え、優れた映像作家なのだという感がある。

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前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のラストで少佐こと草薙素子が失踪してから4年後の2032年が舞台。
少女型の愛玩用アンドロイド「ロクス・ソルス社製 Type2052 “ハダリ(HADALY)”」が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者とメーカーの間で、示談が不審なほど速やかに成立し、被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9課で捜査を担当することになり、公安9課のバトーは、相棒のトグサとともに捜査に向かう…
年齢的にこれから押井守がアニメの監督をすることがないならば、これが彼のアニメ映像の最高水準の作品ということになるのではないかというのが私の個人的意見です。
『攻殻機動隊』は、士朗正宗の世界観に基いて作られていたけれども、この作品はその世界観を前提とするも脚本・監督を押井が担当したせいで押井の好みが強く反映している。統治権力の意志があからさまになる警察・公安ものであること、日常当たり前とする前提(例えば人間は人形ではない)への疑い、おかしな繰り返しが起こること。
ただ物語とテーマ(人間と人形の違いとはという問いかけ)があまり深く関係せず、殺人事件捜査のフォーマットを完成させる事と草薙素子をバトーと再会させる事で終わっている。
それを引用で語っていくという独特の手法が採られていて、若いころに乱読した思想書や文学作品へのオマージュなのか、自分がなれなかった作家というものへの憧れなのか、悪く言えば物語でテーマを語れないので引用で観客に目くらましをかけているとも言えるのかもしれない。ま、だから作家になれなかったのねと言う事ですが。
女性鑑識官ハラウェイの語る「人形」論によって物語のテーマを提示し、キムの館のシーンの後で一応の答えではないけれども結論めいたものをバトーに語らせている。
「自分が生きた証を求めたいなら
その道はゴーストの数だけあんのさ」
世界観の説明編がDVDの前篇として収録されており、その中で「ゴースト」という概念を「魂」「意識」とも言えると説明している。
しかし、精神分析家の故河合隼雄氏は、「魂と言うのは、"心"と"体"を継ぐものだ」と説明しておられたと記憶している。つまりこの考えに従うと脳と肉体を分けた瞬間に魂というものは無くなると言える。また、このような考えに従えばネットの海に生息してる草薙素子は魂を持っていないことになる。
この作品は、人間と人形の違い、サイボーグと人間の違い、人の魂とはという問いかけに答はだせていないけれども、観客に考えさせるよすがになっているのではないかと思う。
演出について:
宮崎駿に比べて、押井がプロの声優を非常に上手く使うことにも好感を持ちます。草薙素子の声が田中敦子でなかったら、ハラウェイ女史の声が榊原良子でなかったら、声優ではないけれども、キムの声が竹中直人というのも声で演技が出来る人をちゃんと選んでいる。前者の2人に至っては人格もある程度声で作られてしまっているよなあと思います。
押井はアニメにはこだわらず、実写の映画も年齢が高くなり有名になってくるにつれ本数が増え、優れた映像作家なのだという感がある。