GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0 [DVD]/田中敦子,大塚明夫,山寺宏一

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 他人の電脳をゴーストハックして人形のように操る国際手配中の凄腕ハッカー、通称「人形使い」が入国したとの情報を受け、公安9課は捜査を開始するが、人形使い本人の正体はつかむことが出来ない。
 そんな中、政府御用達である義体メーカー「メガテク・ボディ社」の製造ラインが突如稼動し、女性型の義体を一体作りだした。義体はひとりでに動き出して逃走するが、交通事故に遭い公安9課に運び込まれる。調べてみると、生身の脳が入っていないはずの義体の補助電脳にはゴーストのようなものが宿っていた。


 2008年にリニューアルされたのをDVDを借りて見て見ました。セリフが変わった部分があるようです。原作にもあった

「企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても
 国家や民族が消えてなくなる程
 情報化されていない近未来」

という背景説明がなくなっていて、1996年当時から見た未来じゃないよと言う事なのでしょうかね。

 久しぶりに見返すと、優れたシナリオで作られた映画だと強く感じました。脚本がなく、絵コンテだけで作り始めてしまうと、こういうドラマはなかなか作れないのではないかと思います。

 電脳という概念を説明していくために、最初のゴミ集収人を出して「人形使い」の存在をほのめかす。そして、草薙の悩みとバトーとの関係。「人形使い」の正体を現わして、外務省の陰謀との対決を通じて「人形使い」との草薙と邂逅を持ってくる。恋愛ドラマにもなってますしね。

 この作品のテーマとして、生命が誕生するということなので、古代の海から生命が誕生したように情報の海から新たな知的生命体が誕生するということで、音楽で古代の雰囲気を出しているようです。川井憲次のこの音楽は好き嫌いわかれるようですが、私は映画に合っていたのではないかと思います。

 また、サイボーグ概念の進化。昔、小学校にも上がる前に親戚の家で『サイボーグ009』を読んで以来、「サイボーグってこんな風にイメージが発展していったんだな」という感慨を持ちました。特に水に浸かった博物館の中での銃撃戦で生命の系統樹の根元から上へと弾痕が登っていく描写で「hominis(人の)」が一番上にあるのですけど、その上の進化は?と問いかけている。そういう哲学的描写が押井ワールドなのかなと思いました。

 柱の形が変わるほどの銃撃戦のアクション描写も、好きな人には堪えられないのでしょうね。

 漫画のセリフがそ結構そのまま使われているんですが、シチュエーションが違う。草薙素子の暗さが押井監督の個性になるのかな。
 
 原作に比べてもったいぶってると言われればそうなのかも知れないけど、私は好きです。

 攻殻機動隊 (1) KCデラックス/士郎 正宗

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 士朗正宗の原作との違い。漫画の方はあまりドラマチックではないんですよね。電脳、擬体、攻性防壁、光学迷彩などを持った士朗正宗の世界観の図鑑といった感じ。登場人物は、軽く明るく、アクション漫画。

 ネットがほぼ全体像を現わした時点での想像力が、こういうオカルト・ロマンを生んだのでしょう。時代が進んでブロード・バンドが当たり前になってもネットの情報の海から生命は生まれることはなさそうで、現在ウィキリークスに見られるように国家でさへも機密を持てないような世界が当たり前になっていくのかなと言う感じですね。

 そういう意味では、月に人類を送れるようになった時代には、UFO妄想が猛威をふるったし、もっと昔には神の奇跡を目撃をしたというような人が多くいた。人間の視覚も認識も記憶もいかにも頼りない物ですね。

 そして、未来の予測ほど難しい物はないということですね。