未来世紀ブラジル スペシャルエディション [DVD]/ジョナサン・プライス,ロバート・デ・ニーロ,キム・グレイスト

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 20世紀のどこかの国。情報省はテロの容疑者「タトル」を「バトル」と打ち間違えてしまい、無関係なバトル氏を無理やり連行していく。それを一部始終見ていた上の階に住むトラック運転手のジルが抗議をするも、全く相手にされない。
 一方、情報局に勤めるサムは、このミスをなんとかするために試行錯誤していた。近頃サムは、夢の中でナイトの格好をして、美女を助け出すというおかしな夢を見ていたが、情報省に抗議に来ていたジルがその美女にそっくりだということに気づく。
 ある日、サムが家に帰るとダクトが故障しており、非合法のダクト修理屋と名乗るタトルが勝手に直してしまう。サムはまた夢の中でサムライの怪物と戦い、美女を救う夢を見る。サムはジルの正体を知るために断っていた昇格を望み、友人であったジャックの元を訪ねる。そして、様々な事柄が複雑に絡まりあっていく…。


 監督のテリー・ギリアム自身が、「1984年版『1984年』」だとこの作品のことを述べているそうで、随所にジョージ・オーウェルの『1984年』に似通った面が見られます。

 ただ、違う点もかなり多くて、テロが問題になっている点、独裁者が出てこない点、テレスクリーンのような監視装置が見られない点など怖ろしい全体主義社会というより、間違いを認めない間抜けな官僚政治による全体主義社会と言う感じで、映画の作り方もコミカルな感じなので最後まで怖ろしい感じではありません。ロバート・デ・ニーロの演じるテロリストが、勝手に修理をする配管工ですから。なんかイギリス社会の非能率を皮肉ってる映画にも見えます。

 映画の道具立てに昔のハリウッドの大がかりなミュージカル映画の雰囲気をまねてその時代の音楽も使っています。また、衣装も全体的に非常にクラシック。主人公はソフト帽にスーツという服装です。

 テリー・ギリアムのイメージ豊かなCGの美しい映像も見もの。ストーリーの意味を考えるのが面倒なら映像を楽しむだけでもいいのではないかと思います。

 また、イギリスに特有のタイトルの付け方。どこでもない架空の世界と言いながら、"ブラジル"という固有名詞をつける。この映画全体を通して使われている「ブラジルの水彩画」というサンバの英語タイトルが「ブラジル」だそうですので、映画全体がその音楽をテーマにしているのだと強弁することも可能になっています。

 テーマとしては、全体主義に対する批判。それも、テロを利用して国家としての統制を強め個人の生活を蹂躙するよう巧妙な全体主義に対する批判かなと思います。でも、ありがちな話ですので、映像を楽しむだけでいいかも・・・。