失われた週末 [DVD]/レイ・ミランド,ジェーン・ワイマン,フィリップ・テリー

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 売れない作家のドン・バーナムは、酒びたりの生活から抜け出すため兄ウィックの計画で週末田舎に静養に出かけようとする。しかし見送りに来た恋人のヘレンのコンサートに兄をつき合せた挙句、隠れてまた酒をあおり汽車の時間に遅れてしまう。怒ったウィックは一人で田舎に帰ってしまう。
 残されたヘレンは恋人ドンを必死で立ち直らせようとするのだが・・・。ニューヨークに残されたドンの週末は・・・。


 1945年度アカデミー受賞映画であわせて監督賞、脚本賞、主演男優賞をも得ている。

 名画です。アルコール依存症に陥っていく作家の3日間を描く。

 これ見てて、ドンの気の弱さやその怖れがひしひし迫ってくるんですよね。酒を全く飲まない私でも、依存症に陥ってしまう心の弱さが自分の中にもあることを感じてしまうリアリティがこの映画にはあるんです。

 アルコール依存症の人って、酒を好きで美味しくて飲んでるわけじゃないんですよね。酒を飲んでると惨めな自分を忘れていられるので飲んでしまうんです。アルコール依存症から抜け出す道は、自分の惨めさと人生における敗北感を受け入れることだと言われています。

 最後に立ち直ろうとするドンが酒の入ったグラスに煙草の吸殻を投げ入れるシーンが象徴的で、彼が酒を美味しいと思っていないことがわかります。実にうまいシーンの作り方だなと思います。

 リアリズムの映画なのかといえばこれは違う。アメリカは町が廃墟にならなかったのでイタリア映画のような戦後のオール・ロケ映画ってないんですね。ニュー・シネマが生まれるのはもっと後になった。

 こんな献身的な恋人ヘレンは、「ありえない。」と感じますけど、いかにも物語になっていて「ああ、よかった。」と感じますので、ハッピー・エンドはやはりいいなと思います。