すべてがFになる (講談社ノベルス)/森 博嗣

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孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。

 この森博嗣さんをデヴューさせるために創られたメフィスト賞の第1回受賞作。

 私、森さんのオリジナル小説読むの初めてだと思っていたんですが、この犀川先生と萌絵ちゃんの関係と設定(萌絵の叔母が愛知県知知事夫人、叔父が愛知県警本部長)を読んだ覚えがありました。タイトルも作者の名前も覚えなかった訳で、気にいらなかったわけですね。我ながら、ひどい本の漁り方してます。

 なぜ、気に入らなかったのか、文章に雰囲気がない。登場人物にあまり魅力を感じなかった。ぐらいかな。この『F』は、トリックもなかなかですし、コンピュータを使った新しい時代のトリックが新鮮ですけど、雰囲気はないですね。

 ただ、犀川先生の設定がN大工学部助教授という森さんの肩書と同じなわけで、作者がコンピュータに関する知識をちゃんと専門家として持っているところがこの小説のよいところだと思います。この小説は時代を超えられると思います。なぜならコンピュータに出来もしないことは書かれていないからです。

 専門家というのは「出来ないことを知っている。」人のことだと改めて思いました。

 
 密室殺人の舞台になる「妃真加島(ひまかじま)」ですけど、日間賀島のことです。実際の日間賀島はフグとタコが名産のオジサンたちが忘年会で出かける俗な島です。船で港に入っていくと大きな赤いタコのオブジェが出迎えてくれます。

 森さんてかなり愛知県にこだわって書いてらっしゃる作家の方かもしれません。