バリー・リンドン [DVD]/ライアン・オニール,マリサ・ベレンソン,パトリック・マギー

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 18世紀半ば、アイルランドの農家に生まれたレドモンド・バリーは、初恋相手の従姉の婚約者のイギリス将校を決闘の末に銃殺してしまったと思いこみ(実際にはバリーの銃には麻弾が装填されていたため、気絶させただけだった)、警察の追求をかわすために村を出る。

 バリー・リンドンの栄達と没落を描いた一代記。随所に決闘が出てきて、軍隊の脱走、裏切、イカサマ賭博に、貴族の金持ち女性の誘惑など社会の階段を上っていくバリーの人生が描かれる。

 美術や衣装が完璧で一見ヴィスコンティかと思うような映画ですが、ヴィスコンティが様式美を追求しているようなのに対し、キューブリックはドキュメンタリーのように撮ってると感じます。かといって淡々とと言う言葉は出てこない。ほんとにわかりにくい体質の監督です。

 私にわかるのは、ロマンティックに語ることを拒否していること。

 情報将校に化けてドイツを旅する時、行きずりの農家の女性に食事をもらい宿を借りて、女性の夫が戦争に取られていないので、彼女と寝るシーンなぞかなりロマンチックな雰囲気なのにこんなナレーションが入る。「軍服姿の男に心を寄せる女性は次々と男を迎え入れる覚悟が必要であろう」その通りですけど、バリーに純愛はさせないぞという監督の変な意地を感じます。

 この人の映画で素直に一般受けしたのは『2001年宇宙の旅』ぐらいでしょう。あとは、「怖い」「わかりにくい」が一般的な評価。まあ、2001がわかりやすいとも言えないでしょうけど。

 思い入れしにくい映画なのですよね。ですから、エンターテインメントの要素が薄すぎて、賞も取りにくい。美術や撮影、衣装では賞をとれるけど、監督賞はとれないみたいな・・・。

 でも、私は結構好きかも知れません。完璧に撮りながら、その撮ってる自分の作品をこれだけ小馬鹿にするぐらい突き放している映画監督なんてそうそういない。

 かといって監督に非人間性を感じるということはありません。愛情もあまり感じないけど。なんか諦観のようなものがあるのかもしれません。そういうところ、非人間的につらい事に耐えて頑張るなんて絶対しそうにない英国のインテリという感じがします。それって「ユーモア」のことかな?よくわからない。

 サッカレーの原作はユーモア小説というジャンルになっていました。さも、ありなん。ストーリーの展開だけみてるとフォレスト・ガンプを思い出すくらいですもの・・・。

 最後の締めの言葉が作品のテーマですね。

"Good or bad, handsome or ugly,rich or poor

They are all equal now"

「善き者も悪しき者も、美しい者も醜い者も、富める者も貧しき者も

今はみな同じあの世」