東京物語 [DVD]/笠智衆,東山千栄子,原節子

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1953年の夏、尾道に暮らす周吉とその妻のとみが東京に旅行に出掛ける。東京に暮らす子供たちの家を久方振りに訪ねるのだ。しかし、長男の幸一も長女の志げも毎日仕事が忙しくて両親をかまってやれない。寂しい思いをする二人を慰めてくれたのが戦死した次男の妻の紀子だった。紀子はわざわざ仕事を休んで二人を東京名所の観光に連れて行く。
キネマ旬報社は昨年11月20日、「キネマ旬報」創刊90周年(1919年創刊)を記念して「日本映画・外国映画オールタイム・ベスト・テン」を発表しました。
今回のオール・タイム・ベスト・テンの日本映画の1位が、この東京物語です。
昔、リヴァイバル上映を映画館に観に行ったのですが、映画のプリントの状態はお世辞にもいいとはいえません。ただ内容には深く感動しました。
映画を見た後、映画雑誌の小津特集とか、他の小津作品を色々みたけれど、小津作品の家族の絆の崩壊を描くといテーマは私の観た他の作品にも共通していましたが、完成度という点ではこの『東京物語』が一番だったと思います。
その理由は、この老夫婦が訪れる子供の家庭の生活が決して豊かといえないこと。それと、戦死した息子の嫁という立場の紀子(原節子)が、老夫婦に一番親切にしてくれるように血のつながりに頼らない家族愛を描いているからだろうと思います。
実の子供たちも決して親を邪険にしているわけではないのですが、1953年当時の日本の中産階級の下の暮らしをしている人々には、たまにやって来た親の面倒を丁寧に見る余裕もないのです。
こののちリメイク作品が多く作られていて、現代に設定を移した番組を見たことがあるのですが、そこのところにわざとらしさが見えてしまいました。
笠智衆と原節子という人間的にもいい人だと思える俳優さんが、素晴らしい味を出していて、映画やテレビというメディアは、どうにも演技が重要なのではないようなところがあるなあと思ってしまいます。この二人なぞ、要は二人の人間性ですと言いたくなるような映画のなかのたたずまいです。
この作品をブレッソン、ベルイマンの映画と並べて宗教的啓示を得られる映画作品と評してしたフランスの映画評論家の文章を読んだことがあるのですが、その理由を私なりに考えてみると、笠智衆演ずる老父が大事にしてくれない実の子供たちのことを赦しており、かつその上で、原節子の未亡人となった嫁の行く末を案じる愛情深い父親であることに深い感銘を受けるということ。また実の子以上に老夫婦に親切にする原節子が、「私はずるいんです。私はそんないい人間じゃない。」と告白するところ。彼女は誰がみても善行をしている人なのにそのような告白をするところに宗教性を感じるのだと思います。
若い人に、こういう映画から真の宗教性を学んで変な新興宗教に騙されないような知性を身につけてもらえるとよいなあと思います。
でも、どちらかといえば小津教にはまる人の方が多いかもしれませんけど・・。

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1953年の夏、尾道に暮らす周吉とその妻のとみが東京に旅行に出掛ける。東京に暮らす子供たちの家を久方振りに訪ねるのだ。しかし、長男の幸一も長女の志げも毎日仕事が忙しくて両親をかまってやれない。寂しい思いをする二人を慰めてくれたのが戦死した次男の妻の紀子だった。紀子はわざわざ仕事を休んで二人を東京名所の観光に連れて行く。
キネマ旬報社は昨年11月20日、「キネマ旬報」創刊90周年(1919年創刊)を記念して「日本映画・外国映画オールタイム・ベスト・テン」を発表しました。
今回のオール・タイム・ベスト・テンの日本映画の1位が、この東京物語です。
昔、リヴァイバル上映を映画館に観に行ったのですが、映画のプリントの状態はお世辞にもいいとはいえません。ただ内容には深く感動しました。
映画を見た後、映画雑誌の小津特集とか、他の小津作品を色々みたけれど、小津作品の家族の絆の崩壊を描くといテーマは私の観た他の作品にも共通していましたが、完成度という点ではこの『東京物語』が一番だったと思います。
その理由は、この老夫婦が訪れる子供の家庭の生活が決して豊かといえないこと。それと、戦死した息子の嫁という立場の紀子(原節子)が、老夫婦に一番親切にしてくれるように血のつながりに頼らない家族愛を描いているからだろうと思います。
実の子供たちも決して親を邪険にしているわけではないのですが、1953年当時の日本の中産階級の下の暮らしをしている人々には、たまにやって来た親の面倒を丁寧に見る余裕もないのです。
こののちリメイク作品が多く作られていて、現代に設定を移した番組を見たことがあるのですが、そこのところにわざとらしさが見えてしまいました。
笠智衆と原節子という人間的にもいい人だと思える俳優さんが、素晴らしい味を出していて、映画やテレビというメディアは、どうにも演技が重要なのではないようなところがあるなあと思ってしまいます。この二人なぞ、要は二人の人間性ですと言いたくなるような映画のなかのたたずまいです。
この作品をブレッソン、ベルイマンの映画と並べて宗教的啓示を得られる映画作品と評してしたフランスの映画評論家の文章を読んだことがあるのですが、その理由を私なりに考えてみると、笠智衆演ずる老父が大事にしてくれない実の子供たちのことを赦しており、かつその上で、原節子の未亡人となった嫁の行く末を案じる愛情深い父親であることに深い感銘を受けるということ。また実の子以上に老夫婦に親切にする原節子が、「私はずるいんです。私はそんないい人間じゃない。」と告白するところ。彼女は誰がみても善行をしている人なのにそのような告白をするところに宗教性を感じるのだと思います。
若い人に、こういう映画から真の宗教性を学んで変な新興宗教に騙されないような知性を身につけてもらえるとよいなあと思います。
でも、どちらかといえば小津教にはまる人の方が多いかもしれませんけど・・。