オルフェウスの窓 (1) (集英社文庫―コミック版)/池田 理代子

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20世紀初頭のヨーロッパを背景に、第一次世界大戦やロシア革命といった史実を織り交ぜて、ドイツ・レーゲンスブルクの音楽学校で出会った3人の若者の運命を描く長編漫画である。物語は大別すると4部から構成され、その舞台もレーゲンスブルクからオーストリアのウィーン、ロシアのサンクト・ペテルブルク、またレーゲンスブルクへと変転する。
『週刊マーガレット』1975年から1976年まで掲載され、その後『月刊セブンティーン』に連載の場を移し、1977年から1981年まで掲載された。
20世紀初頭のドイツ、レーゲンスブルクの音楽学校で出会ったユリウス、クラウス、イザークの半生を描く。
ユリウスは数奇な運命のもとに生まれ女性であることを隠して男の子として成長し、アーレンスマイヤ家の秘密と共に危険な事件に巻き込まれていく。そしてクラウスとの恋に落ちる。
クラウスは、ロシア人でドイツに亡命している革命運動家。ユリウスが女であることを知り、彼女と恋に落ちるが、ユリウスを残してロシアに帰国し革命運動に身を投じる。
イザークは、天才ピアニスト。ユリウスを愛するがユリウスには愛されず、苦学しウィーンへの留学を足がかりにピアニストへの道を歩むが・・・。
物語は4部に別れ、1部で登場人物たちの出会いとアーレンスマイヤ家の謎が示される。2部では、イザークのウィ-ン留学と音楽家としての成長と苦闘が描かれる。3部でクラウス(アレクセイ・ミハイロフ)の子供時代にさかのぼって、彼の成長とロシア革命へと向かうロシアの革命運動、そして彼を追ってきたユリウスとの再開、恋愛・結婚と別れが描かれる。4部は、1部で示されたアーレンスマイヤ家の謎を終息させる完結編。
お正月休みを利用して一気読みしました。
個人的に2部と3部とイザーク君を割愛してしまいたい。クラウスとユリウスの話をヴェーラがユリウスの姉に語った回想にして物語をまとめると非常に上質なミステリーになるのじゃないかと思います。
私の好きなエラリィ・クイーンの「Xの悲劇」のような歴史のミステリーと実際に起こる殺人事件をないまぜにしたミステリーの質の高いやつ。
ただ、作者が描きたかったのは、「ロシア革命」でしょう。ロシア革命を女性向け漫画の中で描くための道具立てとして、1部と4部のミステリーを持ってきたのではないかと思います。
この漫画の連載当時の1970年代後半と言えば、すでに共産主義陣営の経済的・政治的なホコロビが西側に広く伝わって来ていました。商店で日用雑貨を買うのに長蛇の列を作らねばならない。西側への亡命者が続出する。などなど・・。
ですので、3部のロシア革命の描き方にしても、大人の池田さんは理想の空理空論を振り回す大学生のようなことは言っておらず、革命側からの視点を維持しながらも、何が真実だったのかは歴史によって明らかになるだろうとしています。
この作品がベルリンの壁崩壊後に描けたかどうか疑問なので、その時代の空気を反映する作品として貴重といえるかもしれません。
4部でミステリーをきちんと終息させる際に、皇女アナスタシア事件を持ってきたところなど、さすがと思いました。そして、決して歴史の事実をでっちあげることはせずにミステリーを回収する上手な語り口。この人も構成力のすぐれた一流の漫画家のひとりですね。
ただ、ほとんどの登場人物が悲劇に陶酔するように涙を頬に流し、自己陶酔しきった様なセリフをしゃべるのには、正直きついものを感じました。私の趣味じゃない。そういう場面の連続に嫌気がさして過去にこの人の漫画から離れたんだろうなと思います。

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20世紀初頭のヨーロッパを背景に、第一次世界大戦やロシア革命といった史実を織り交ぜて、ドイツ・レーゲンスブルクの音楽学校で出会った3人の若者の運命を描く長編漫画である。物語は大別すると4部から構成され、その舞台もレーゲンスブルクからオーストリアのウィーン、ロシアのサンクト・ペテルブルク、またレーゲンスブルクへと変転する。
『週刊マーガレット』1975年から1976年まで掲載され、その後『月刊セブンティーン』に連載の場を移し、1977年から1981年まで掲載された。
20世紀初頭のドイツ、レーゲンスブルクの音楽学校で出会ったユリウス、クラウス、イザークの半生を描く。
ユリウスは数奇な運命のもとに生まれ女性であることを隠して男の子として成長し、アーレンスマイヤ家の秘密と共に危険な事件に巻き込まれていく。そしてクラウスとの恋に落ちる。
クラウスは、ロシア人でドイツに亡命している革命運動家。ユリウスが女であることを知り、彼女と恋に落ちるが、ユリウスを残してロシアに帰国し革命運動に身を投じる。
イザークは、天才ピアニスト。ユリウスを愛するがユリウスには愛されず、苦学しウィーンへの留学を足がかりにピアニストへの道を歩むが・・・。
物語は4部に別れ、1部で登場人物たちの出会いとアーレンスマイヤ家の謎が示される。2部では、イザークのウィ-ン留学と音楽家としての成長と苦闘が描かれる。3部でクラウス(アレクセイ・ミハイロフ)の子供時代にさかのぼって、彼の成長とロシア革命へと向かうロシアの革命運動、そして彼を追ってきたユリウスとの再開、恋愛・結婚と別れが描かれる。4部は、1部で示されたアーレンスマイヤ家の謎を終息させる完結編。
お正月休みを利用して一気読みしました。
個人的に2部と3部とイザーク君を割愛してしまいたい。クラウスとユリウスの話をヴェーラがユリウスの姉に語った回想にして物語をまとめると非常に上質なミステリーになるのじゃないかと思います。
私の好きなエラリィ・クイーンの「Xの悲劇」のような歴史のミステリーと実際に起こる殺人事件をないまぜにしたミステリーの質の高いやつ。
ただ、作者が描きたかったのは、「ロシア革命」でしょう。ロシア革命を女性向け漫画の中で描くための道具立てとして、1部と4部のミステリーを持ってきたのではないかと思います。
この漫画の連載当時の1970年代後半と言えば、すでに共産主義陣営の経済的・政治的なホコロビが西側に広く伝わって来ていました。商店で日用雑貨を買うのに長蛇の列を作らねばならない。西側への亡命者が続出する。などなど・・。
ですので、3部のロシア革命の描き方にしても、大人の池田さんは理想の空理空論を振り回す大学生のようなことは言っておらず、革命側からの視点を維持しながらも、何が真実だったのかは歴史によって明らかになるだろうとしています。
この作品がベルリンの壁崩壊後に描けたかどうか疑問なので、その時代の空気を反映する作品として貴重といえるかもしれません。
4部でミステリーをきちんと終息させる際に、皇女アナスタシア事件を持ってきたところなど、さすがと思いました。そして、決して歴史の事実をでっちあげることはせずにミステリーを回収する上手な語り口。この人も構成力のすぐれた一流の漫画家のひとりですね。
ただ、ほとんどの登場人物が悲劇に陶酔するように涙を頬に流し、自己陶酔しきった様なセリフをしゃべるのには、正直きついものを感じました。私の趣味じゃない。そういう場面の連続に嫌気がさして過去にこの人の漫画から離れたんだろうなと思います。