
1980年から1981年にかけて発表。有名な『アキラ』の前作にあたります。第3回SF大賞受賞作。
とあるマンモス団地内で変死事件が連続して発生。警察が捜査を進めるも手がかりは一向に掴めず、担当の刑事部長までが不可解な死を遂げてしまう。そんな中、一家で団地に引っ越してきたばかりの特殊な能力を持つ少女「悦子(エッちゃん)」は、団地内に住む老人「チョウさん」が超能力を悪用して殺人を行っていることに気付く。少女と老人、超能力者2人の対決はやがて団地全体を巻き込む惨事へと発展していくのだった。
この作品で大友克洋の一般的な知名度が高まったと思います。それ以前はマイナーな青年漫画というイメージでした。
上にあげたシーンは、当時他のさまざまな漫画家が「大友克洋はすごい」ということで、自分の作品に引用していました。いわゆるオマージュを捧げるというやつですね。
戦後手塚治虫が作った漫画のフォーマットは、書き割りのような背景のなかで記号化されたキャラクターが物語を語っていくというスタイルだったのですが、大友克洋の作品ではキャラクターのいる風景によって、物語を語っていくというスタイルになっており、圧倒的な画力とともに既存の漫画家たちに多大な影響をあたえたようです。
ぱっと見、背景のなかになじんでしまったキャラクターたちはいわゆる「キャラクター」らしくなく、『童夢』以前の作品を読んでも面白いとは思うのだけど、メジャーにはならないのではないかと私は感じていました。
ところがキャラクターを子供にしアクションを加えることによって、メジャーへの道が開けたようです。超能力者である気味の悪い子供たちは大友克洋の可愛くないキャラクターの画に合っていたのでしょう。
しかし、次の『アキラ』でも子供のまま成長を止めた超能力者たちがテーマです。
この後、大友克洋は漫画の世界から足を洗い、期待された『アキラ』のアニメの次回作も宮崎駿にいわせれば「つくれなくなった。」。実際には制作はしているのですが、『アキラ』のような水準の作品を作れなくなってしまったようです。
宮崎駿によると「『アキラ』のああいう終わり方はガイア論で・・・、つぎつくれなくなっちゃう・・・。」ということだそうです。
現在も活動中の大友克洋についてまとめる話はできないのですが、彼の影響はすごいものでしたけど、本人は意図してやったのではなく記号的なキャラクターは描けないけど画が圧倒的にうまかったというのが本当のところかなと思います。イメージが冷徹すぎて容易には記号化されないということもあると思います。
ただ再びどのような変貌をとげるかわからないので、私も注視していきたい作家ではあります。