『ロミオとジュリエット』はもちろんウィリアム・シェイクスピアの戯曲なのですが、その骨太な構成故に何度も映画化や時代を現代に移し替えた改作が行われています。


 大成功を収めたミュージカル作品『ウエスト・サイド物語』1957年初演の舞台の映画化。映画は1961年。現在でも劇団四季の公演が盛んに行われている。

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音楽:レナード・バーンスタイン、振付:ジェローム・ロビンス。

これは『ロミオとジュリエット』に着想を得たオリジナルという扱いになるし、音楽と踊りが重要な要素をしめるミュージカルなので、作品としての成功はストーリーのせいではないかもしれない。

DVDの写真の中央に映っているジョージ・チャキリスなどは一生をこの作品のおかげで食いつないだのではないだろうか。

この作品では後半部分が改作されていて、オリジナルの『ロミオとジュリエット』とかなり違うし、古典的ではあるがすぐに銃を撃ち合うアメリカ社会を反映していて不思議と感じるようなところはない。



 時代劇として作る場合は何も問題ないのだが、これが時代を現代に移すということになると1990年代になって携帯電話が本格的に普及してきたところで無理が生じてきた。
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 1996年のバズ・ラーマン監督作品『ロミオ+ジュリエット』。これは、時代を現代に移しているが、台本はオリジナルという作品。アロハシャツを着たディカプリオのロミオが17世紀の英語で"Dost thou love me?"と叫ぶのだ。また、ストーリーもかなり原作に忠実なので、後半が問題になってくる。

ディカプリオのロミオが見られれば何でもいいという方にはいいだろうが、私は当時封切りの映画館で見ていて後半部分のすれ違い場面であの昔のdocomoのコマーシャルのセリフ「携帯とか持ってないの?」とつぶやいてしまった。

 ただでさへ後半の仮死状態に陥る薬というのがまだまだ科学が常識となっていない17世紀的で、リアリティが感じられないところへ持ってきて、現代の若者のトレードマークである携帯電話をもたずに駆け落ちしようとする恋人同士を演じる。深刻に無理がある。


 この映画を観終わった後、『ロミオとジュリエット』の現代化は、大幅な改作をしない限りこれ以上無理だなと思った。こののちめぼしい現代化リメイクは行われていないように思う。