天国から来た大投手 十三、最後の一球 246 | 六月の虫のブログ

六月の虫のブログ

ブログの説明を入力します。

翌日、前日投げた森次郎は完全休養日だ。森次郎は、裕香達と昼食をとった後、球場に入った。浩輔も完全休養日でリラックスしているのか、森次郎が存在していないかのごとく彼の目線は常に裕香に注がれている。鈍感な森次郎にも分かるくらいだから、周りにいるスタッフにも丸分かりだろう。もし彼等に浩輔が見えたなら…。

第二戦、アストロズのロケットが好投して、ソックスはゼロ対一で惜敗した。森次郎は、チームメイト達には悪いが、もう一度登板する機会があると思うとホッとした。浩輔は、アストロズの勝利の瞬間、大きくガッツポーズした。森次郎は浩輔のガッツポーズを見て微笑み、二人は小さく拳を合わせた。裕香も森次郎のピッチングがもう一度見られるということとアメリカ滞在が延長されることを喜んだ。

ヒューストンに移動して行われた第三戦、第四戦とソックスが勝利して、世界一に王手をかけた。浩輔は、第五戦の登板が最後だということを承知している。森次郎は、ピッチングもだが打席に立てることを楽しみにしている。森次郎は、浩輔と過ごす時間が少なくなっているのはわかっているが、意識を試合に集中させていた。第五戦は森次郎から先に投げることにした。浩輔に世界一になる瞬間、マウンドにいて欲しかったからだ。

「レッツ・プレーボール」、審判がコールした。アストロズの先発は、ペティット。ペティットは、テンポ良く、ソックスの初回の攻撃を三者凡退に抑えた。森次郎は大きく深呼吸して、マウンドに向かった。森次郎は、三振よりも連打や長打を許さないことに重きをおいてピッチングを組み立てることにしていた。集中力が違った。キャッチャーのA.J.も森次郎の気迫を感じ取ったようだ。森次郎はA.J.のサインどおり、彼のミットに投げ込んだ。




    2005年ワールドシリーズ(ウィキペディアより)