天国から来た大投手 十二、ワンダーボーイ 218 | 六月の虫のブログ

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登板日の朝、森次郎はジュディとミシガン湖畔をジョギングした。森次郎は、これが初登板の日だとは思えないほどリラックスしていた。ジュディは試合よりも、試合後の日本のマスコミ攻勢を心配していた。

森次郎とジュディは、広報が手配してくれた車でU.S.セルラー球場に着いた。選手の通用口には、マスコミ関係者が大挙して陣取っていた。二人が車から降りると、マスコミ関係者が彼らを取り囲んだ。森次郎は、ジュディの手を取った。「職場に彼女同伴ですか」という心無い記者の質問に、「いいえ、彼女はスタンドで見守ってくれます。グランドには降りません」と森次郎は日本語で答えて通用口から球場入りした。ジュディが戸惑った顔をしているので、「彼女、美人だねと記者が言ったから、彼女は僕のもので、誰にも渡さないと答えたんだ」とウインクした。「モリ、大リーガーになるといろいろな誘惑が多いと思うけど」とジュディが腕にしがみついた。森次郎は「アイ・ラブ・ユー、ジュディ」と彼女の頬にキスした。

森次郎がロッカールームに入ると、選手はまだ誰も来ていなかった。ジュディも特別にスタンドに入れてもらった。ジュディはスタンドで『ダヴィンチ・コード』を読んでいる。森次郎が読んで、ジュディに推奨した長編小説だ。森次郎はオフの前日数回の徹夜で読破した。これだけ集中して読んだ小説は、森次郎が父親に薦められてはまったジョン・アービング著の『第四の手』以来だ。

森次郎がユニフォームに着替えてグランドに出ると、浩輔が現れた。浩輔はいつもどおり、故障しないよう森次郎にウォームアップに時間をかけさせた。浩輔はこの日のために、長い間努力してきたのだ。チームメイト達がグランドに出てきても、森次郎は入念にストレッチを繰り返した。ヤンキースの先発ラインナップが発表されると、森次郎はA.J.とスカウティング・レポートを見直した。浩輔も横で聞いている。森次郎が一番楽しみにしているのは、A.ロッドとの対決だ。浩輔は、A.ロッドに対してまともにいっても抑えられないと思っている。ジュディは、ジャイアンツの選手は良く知っているけど、ヤンキースでは、かつてサンフランシスコの隣にあるオークランドにいたジアンビーとA.ロッドしか知らない。

浩輔は、心躍っている。森次郎がスカウティング・レポートを見ている間、浩輔は打線の三順目までの投球をイメージしていた。点差によって試したい投球もあったが、この試合は勝利することを第一に考えることにした。浩輔は、最初から投げたいと森次郎に言った。森次郎もそのつもりでいた。監督のオジーも七回まで投げてくれたらいいと言ってくれている。




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