土曜日の練習試合、ロバートソン高校は初回、デニスの三塁打で一点を先制して、ワンアウトランナー三塁だ。森次郎は四球で歩き、ランナー、一、三塁となった。森次郎は、ミスターZのサインに見入った。森次郎は心の中でうなずくと、相手ピッチャーがセットポジションに入ると、一塁を飛び出した。相手ピッチャーは驚いて、セットポジションに入ったまま動いてしまった。審判が「ボーク」と言って、森次郎は歩いて二塁まで進み、三塁にいたデニスはホームまで戻った。ロバートソン高校は労せずして、一点を追加した。相手ピッチャーの動揺に付け込んだミスターZの巧妙な作戦だった。この後も、ロバートソン高校は、攻撃の手を緩めず、二十三対ゼロで圧勝した。森次郎はこの試合で、三本のホームランを打ち、三回を投げて九奪三振と完璧に抑えた。
浩輔は「モリ、実力の差がありすぎるよ。ミスターZの初回のディレードスチールで完全に流れはこっちに来たよね。ミスターZとモリがいれば、州大会で優勝するのも夢ではないよ。ミスターZは野島監督レベルだよ。プロでも通用するかも」と試合を総括した。
早くも森次郎の野球での活躍は、モントレー界隈で噂になった。「モリはバリー・ボンズよりボールを飛ばす」とか「モリは時速百マイルのファーストボールを投げる」と。学校でも週末の開幕戦を観に行くという生徒が多く、学校は移動式のスタンドを用意した。開幕戦には、代理人のジェリー・マグアイアーやホワイトソックスのスカウトも観に来ることになっている。開幕戦の先発ピッチャーには、森次郎が指名されている。浩輔は「開幕戦は、完全試合、高校は七回までだから二十一打者連続三振を目指そう。俺が最初の四回を投げて、モリが最後の三回を投げてよ。攻撃が長すぎて四回までに一時間を超えることがないようにしてくれよ」と森次郎に言った。
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