クリスマス休暇を前日に控えた夜、森次郎はメグとネイサンのアパートで、食事をご馳走になった。森次郎はクリスマスをジュディの実家で過ごすことになっている。邪魔者の美盤は、一年半ぶりに日本に帰っている。メグやネイサンにはクリスマスも一緒にどうと誘われたが、ジュディの熱意に負けて彼女と過ごすことにした。いや、ネイサンが元気そうなので、森次郎はジュディと一緒にいることを選んだのだ。ネイサンにおやすみを言うと、メグと赤ワインを飲みながら話をした。森次郎は、メグは魅力的なのに化粧はほとんどしないし、笑顔もそう見せないことを彼女に問い詰めた。メグは、今はネイサンのことしか考えられないと言ったが、彼女は森次郎が彼女を心配する気持ちをありがたく思った。
メグのアパートから帰る時、彼女はいつもどおり「おやすみ」と言うと森次郎の頬にキスをした。森次郎が「おやすみ」と言ってアパートを出ようとした時、メグは森次郎の腕を取り抱きついた。メグは「モリ、私を抱き締めて」と言った。森次郎はメグの言うとおり、彼女を抱き締めた。メグは森次郎の腕の中で、思いっきり泣いた。森次郎は、「メグは、夫に暴力を振るわれて離婚し、愛する息子は難病にかかっていて、自分を不幸だと思っているのだろうか」と思った。
メグは落ち着くと、森次郎を見あげて言った。「モリ、ありがとう。今夜はというか、ネイサンがモリと出会ってからずっと、幸せを感じているわ。二人が一緒に遊んでいるのを見ると、嬉しくて涙が出ちゃうの。幸せ過ぎて恐いの」。森次郎は「メグが幸せで良かった」と言うと、メグのひたいにキスをした。メグは「私の方が、ずっと年上なのに。ひたいにキスされるのはパパ以外では初めてよ」と言って微笑んだ。森次郎が「メグの笑顔、綺麗だよ」と言うと、メグは「何言っているのよ。こんなおばさん、口説かないで」と言って笑った。
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