天国から来た大投手 八、小さな友人 119 | 六月の虫のブログ

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ロッカールームに戻ると、ヤングが檄を飛ばしたが、チームの意気はあがらない。ネイサンが何かを言おうとしたが、彼は顔をしかめてロッカールームを出て行った。森次郎はヤングに目を合わせ、ヤングがうなずいたのでネイサンを追ってロッカールームを出た。ネイサンは通路の角で、顔をしかめていた。森次郎が「ネイサン、大丈夫」と声を掛けると、ネイサンは無言でうなずき、森次郎にロッカールームに戻るよう手で合図した。森次郎は、浩輔にネイサンを見ていてくれるよう頼んで、ロッカールームに戻った。

森次郎は、ネイサンの病気について皆にも知っていてもらおうと口を開いた。「ルー、皆、ネイサンのことなんだけど。ネイサンは重い病気と闘っているんだ」森次郎がそう言うと皆は一斉に森次郎の方を向いた。「ネイサンは脳に腫瘍ができていて、今も発作と戦っている。彼のママのメグによると、発作は頭が割れるほどの激痛が走るらしい。でも、発作がおさまるとネイサンは何事もなかったように笑顔でバスルームから戻ってくるらしい。僕達も全力で戦おうよ。ネイサンに笑われないように」と涙を浮かべて訴えた。

森次郎が言ったとおり、ネイサンが笑顔でロッカールームに戻ってきた。ネイサンは皆に「ごめん、急にトイレに行きたくなって」とすまなさそうに言った。「ところで、ネイサンがバスの中で言っていたんだけど、このシーズンで一番上手になったのはルースターだって。レシーバーとしてはもちろんランニングもハイレベルだと分析していたんだ。ネイサンの観察力には、感心するよ」と森次郎が言った。その言葉を聞いて、ヤングが何かを思いついたように言った。「モリ、短いパスをルースターに集めてみよう。ネイサンの言うルースターのランニング能力に賭けてみよう。モリもルースターが空いていなければ、自分で走ってくれ。名付けて『レッツ・ウイン・ネイサン(ネイサン、勝つぞ)作戦』だ」。森次郎は、後半はディフェンスでもプレーさして欲しいと志願した。

ヤングは、ネイサンに「ネイサン、後半は必ず逆転して勝つから楽しみにしていてくれ」と言うと、「皆、そうだな。絶対に勝つよな」と檄を飛ばした。ルースターは、「ネイサン、ありがとう。俺を高く評価してくれて。必ず、勝利をプレゼントするから見ていてくれ」とネイサンの拳と自分の拳を合わせた。




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