天国から来た大投手 八、小さな友人 99 | 六月の虫のブログ

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月曜日の朝、森次郎は精密検査をするため、世話役のコーチ・ウイルソンに病院に連れて行ってもらった。ウイルソンさんは、寮生の郵便の仕分けや病院などに連れて行くことが仕事で、年は六十歳代後半だった。彼が昔、陸上のコーチをしていたことから、生徒達は彼のことを『コーチ』と呼んでいる。コーチ・ウイルソンは「検査が終わったら、学校に連絡して」と言うと病院を後にした。

森次郎が待合室で順番を待っていると、少年が「頭が悪いの」と質問した。森次郎は「頭は悪くないよ。検査に来ただけだよ」と答えた。その少年は「僕、ネイサン・ソーントン、九才」と言って森次郎に握手を求めた。森次郎は「僕、モリジロウ・ヨシノ、十七才」と答えた。ネイサンは「もしかして、ロバートソン高校フットボールチームのクォーターバックのモリ・ヨシオなの」と尋ねた。森次郎は「ヨシノだよ」と言って微笑んだ。ネイサンは「ワーオ、ミスター・ヨシオ。会えて嬉しいです」と言った。森次郎は笑いながら「だから、ヨシノだって。モリと呼んでよ」と言った。森次郎は「ところで、ネイサン、君、頭悪いの」と続けた。ネイサンは「さあ、よく判らないんだ。今日は、ママと週一回の検査に来たんだ」と答えた。

ネイサンは、自分がタイニーリーグでフットボールをしていることを森次郎に熱心に話した。森次郎は、こんなに小さい頃からフットボールするのかと感心した。ネイサンが「あっ、ママ」と言ったので、森次郎は振り向いた。ネイサンの母親は、森次郎を見ると「ミスター・ヨシノ、もう大丈夫なの」と言った。森次郎は「どこかでお会いしたことありましたか」とネイサンの母親に尋ねた。彼女は「私はゴードン校長の秘書のメグ・ソーントンといいます。ネイサンの相手して頂いてありがとう」とお礼を言った。森次郎は「こちらこそ、ネイサンのおかげで、待ち時間を退屈せずに過ごせました。ネイサン、ありがとう」と言った。




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