十六歳のアメリカ ニュー・ファミリー 二三、感謝祭 68 | 六月の虫のブログ

六月の虫のブログ

ブログの説明を入力します。

二三、感謝祭 (Thanksgiving) 

 十一月の第四木曜日は、「アメリカが故郷に帰る日」 (America goes home) だ。この日は、家族全員が揃って、七面鳥を食べる。スチュワート家にも長男のロブ以外の全員が揃った。マムは、朝早くから、御馳走作りに追われている。アンもキッチンでマムを手伝っていた。ランチを軽くサンドウィッチで済ました後、チャックとリックとボクは、外でフットボールをした。マムによるとこんなに暖かい、感謝祭は初めてらしい。外の気温は、華氏 (Fahrenheit) 六〇度前後、つまり、摂氏 (Centigrade, Celsius) 十五度くらいもあった。平年より摂氏で十度以上暖かいとのことだった。

 フットボールはチャックたちとよくしたが、結局彼らのフットボールの動きについて行けなかった。物心付いた頃から、フットボールと親しんでいる彼らに敵うはずがなかった。ただボクもクォーター・バックをしている時だけは、多少様になっていたようだ。ランニング・バックもガードも失格で、レシーバーとしても合格とは言えなかった。野球に比べ、フットボールの方が、チーム・メイトにも相手チームにも親近感が持てるような気がする。試合中、野球のように、選手は分散していないし、一つのプレーごとに選手が集まって次の動きを決める。プレー自体も各選手の役割は決まっていて、みんなで一致団結し協力し合って作戦を遂行する。各選手が作戦どおり動かないと、作戦は失敗する。作戦も野球のそれとは比にならないくらい、複雑できめ細かい。当然個人プレーは許されない。

 フットボールを一時間くらいやった後、各人シャワーを浴びて御馳走を待った。マムが食事の用意ができたことをみんなに知らせ、みんながお客さん用の大きなダイニング・テーブルについた時は、外はもう暗くなっていた。みんなで感謝祭のお祈りをした後、ダッドは丸焼きになった巨大な七面鳥をカットし始めた。マムはボクに、今日は特別だと言って、ワインを勧めた。ボクはビールがやっと飲めるようになった程度だったので、ワインを注いでもらったものの、一口しか飲まなかった。マムはボクが週末、悪友たちとビールを飲んでいるのを薄々気付いていたようで、「ワインは嫌いなの」とボクを皮肉った。ボクは聞こえなかった振りをして、七面鳥のおなかの中に入れて一緒にローストしたスタッフィング(ここでは「ドレッシング」と呼んでいる)に、ローストしている間に七面鳥から滴り落ちた汁を使って作ったグレイビー (Gravy) を掛けた。七面鳥を食べるのは生まれて初めてで、どんな味がするのか楽しみにしていた。ダッドがカットした七面鳥がテーブルを回り出した。ボクは、ホワイト・ミートとダーク・ミートを一切れずつ自分の皿に取って、その上にグレイビーを掛けた。七面鳥の肉は、チキンに比べて、大味で乾燥していたが、グレイビーを掛けるとおいしく食べられる。ボク的にはホワイト・ミートよりもダーク・ミートが好きだ。みんな精一杯食べたらしく、気のせいかみんながデザートのアップルパイを食べるスピードがいつもより遅いように感じられた。ボクも熱々のアップルパイの上にアイスクリームを載せて食べるのが大好きだが、この日は満腹で食べるのに苦労した。その後、三、四日は、ランチにターキー・サンドウィッチを食べることとなった。翌日はロン・フィンチの家でも、デイヴ・ケルチの家でも、スチュワート家同様、昼はサンドウィッチ、夜は七面鳥のスープを食べることとなったらしい。

 感謝祭の翌日の金曜日は、ブラック・フライデー、クリスマス・ショッピング解禁の日だ。統計的にもこの日からクリスマスまでの期間を、正式なクリスマス商戦期間というらしい。この日はどこのモールやショッピング・センターも異常に混んでいる。この日のショッピングもある種の伝統になっているようだ。



七面鳥にグレービーソースとクランベリーソース。アメリカに一人でいて一番ホームシックにかかる時期がこの感謝祭の時期だ。