高校野球の季節になりました。
日本の高校野球といえば、”送りバント”という印象があるのは私だけでしょうか。プロ野球でも送りバントは多いですね。
私がアメリカの高校で野球をしていたことは以前にもご紹介しました。ポジションはピッチャーでした。打順は9番を打つことが多かったです。打率は、.149と低かったのですが、送りバントを命じられたことはありません。ほぼ好きなように打たせてくれました。自慢じゃないですが、ランナーが満塁の時の私の打率は3打数3安打の1.000でした。ランナーがいると集中力が増すのです。
自慢話はここまでとして、”送りバント”はいい作戦だとは思えません。
理由1:”送りバント”が必ず成功するとは限りません。
送りバントの世界記録を塗り替えたバントの名人、川相昌弘選手(元巨人など)ですら、10回に1回はバントを失敗していました。
理由2:”送りバント”は相手チームにアウトを1つプレゼントするものです。
特にノーアウト1塁で、2塁にランナーを進めるための”送りバント”は、理解できません。バント失敗の可能性がある上、成功しても1アウトランナー2塁、ヒットを打たないと得点できません。
さて、大リーグはどうでしょう?
指名代打(DH)制があるアメリカン・リーグでは、ピッチャーが打席に立たないので”送りバント”は少ないです。ピッチャーが打席に立つナショナル・リーグは、アメリカン・リーグよりは多いですが、日本のプロ野球の約半分です。
大リーグで”送りバント”が一番多いチームは、ナショナル・リーグのシンシナティ・レッズで55個(112試合消化)、一番少ないのはアメリカン・リーグのオークランド・アスレチックスの8個(111試合消化)です(8/5時点)。
選手個人別では5人が”送りバント”数9個で並んでいます。この5人の選手で打率が.250以上の打者は一人もいません。
日本のプロ野球はどうでしょう?
”送りバント”が一番多いチームは意外にも、指名代打(DH)制があるパ・リーグの日本ハムの116個(96試合消化)で、セ・リーグで一番多いのはDeNAの91個(90試合消化)です(8/5時点)。
選手個人別ではパ・リーグでは35個のソフトバンクの今宮選手、セ・リーグでは広島の菊池選手の31個です。そして、二人とも打率は.250を超えているのです(それぞれ、.253と.320)。パ・リーグの”送りバント”数上位11人のうち打率が.250を超えているのが7人、セ・リーグでは上位8人中4人です(8/5時点)。
ちなみに、前述した川相昌弘選手が2003年に塗り替えた”送りバント”の世界記録511個は、73年前の1930年(昭和5年)に作られたものでした。川相選手の通算打率は.266で、全盛期には.300を超えたこともあります。
”送りバント”は試合の終盤または延長に入った時の切羽詰ったノーアウトの場面で、ランナーを3塁まで送れる時、または迎えるバッターがピッチャーのように低打率の選手の時だけにやるものだと思います。作戦もデータ重視でやっているマネーボールのオークランド・アスレチックスの”送りバント”数が一番少ないのは、データの裏付けがあるからだと思います。
それ以外の場面では、”送りバント”よりも自由に打たせたほうが結果が出ることが多いと思いますし、見ている方もそのほうが楽しいです。
『送りバントの鬼』川相選手(フリー画像より)