天国から来た大投手 Vol.58 | 六月の虫のブログ

六月の虫のブログ

ブログの説明を入力します。

第二部 吉野 森次郎


四、佐々木裕香 (つづき)


 第一球、克也のサインは内角高めにストライクのムービングファストボールだ。相手のバッターは振り遅れの空振り。二球目は、外角低めにボールになるスライダー。そのボールがあまり変化せず、真ん中に入ってしまった。バッターはボールを引っ掛けて、ぼてぼてのショートゴロ。ショートは素早く捕って、一塁に送球したが間一髪セーフ。打ったランナーは一塁上で、笑顔でガッツポーズを繰り返した。克也はタイムをとると、マウンドの森次郎のところに行った。ショートを守っているチームメイトがまず森次郎に声を掛けた。彼は「ごめん、モリ、完全試合がダメになって」と森次郎に謝った。森次郎はショートの彼に「気にするなよ。あれはヤンキースのジーターでもヒットだよ」と言って笑った。克也も「モリ、運が悪かったな」と言って、森次郎の肩を叩いた。克也がマウンドから離れようとしたとき、森次郎は克也の腕をつかみ「克也、これからはカットボールとスライダーを多く投げたいんだけど」と言った。克也はうなずくと持ち場に着いた。

 森次郎のスライダーもカットボールも六回までの切れがない。克也は疲れが出ているのだと思ったが、たまにムービングファストボールを投げさせると、スピードはまったく落ちていない。サークルチェンジもきれいに落ちる。七回は何とか無難に切り抜け、八回はショートのファインプレーもあり三者凡退で切り抜けた。ベンチに帰るとき、森次郎は走りながらショートに「ジーター、ナイスプレー」と言って、彼のグラブを叩いた。結局、九回はポテンヒットを許したが、後続を抑えて試合を締めくくった。


 つづく・・・



六月の虫のブログ