ベースボール
二七、カーシャウ家へ
二月の半ばには、バスケットボールのシーズンが終わり、三月には待ちに待ったベースボール・シーズンが始まる。ベースボールのトライアウト兼練習は、早朝五時三十分から体育館で行われるらしい。三月に入ってもイリノイはまだ寒く雪が舞うこともあり、とても外で練習できる状況ではない。この早朝のトライアウトに学校から四十分以上かかるワドリー家から通うのは大変なので、マクナマラ高校から十五分くらいのところにあるカンカキーのカーシャウ家に引っ越すことになった。ワドリーさんは、私のことを気に入ってくれており、私をハーシャー高校に転校させることも考えたそうだが、授業や友達のこともありそれは断念したらしい。とにかく、そういうわけで、三月からカーシャウ家にお世話になることになった。
エドウィン・カーシャウ氏はデパートを経営していて、ロータリー・クラブの次期ガバナーで、ワニータ・カーシャウ夫人とは数年前に再婚したらしい。夫のカーシャウさんにはすでに結婚している娘が一人、夫人の方には息子と娘が一人ずついるとのことだ。カーシャウ家も、カンカキーの高級住宅街にあり、家の中の家具も高級そうだった。スチュワート夫妻もワドリー夫妻も仲のいい夫婦だったが、カーシャウ夫妻は再婚して数年しかたっていないこともあり、熱々のカップルだ。二人の熱々ぶりは、高校生カップルも顔負けで、リビングルームでくつろいでいるときも、ダイニングルームで食事しているときも、車に乗っているときも、互いのからだのどこかを触れ合っていた。これが自然に見えるから不思議だ。
つづく・・・
このハーシャーの風景と離れるのは辛かったけど、ベースボールのシーズンの始まりが楽しみだった。
注意: 『十六歳のアメリカ』は、私の体験を基に書いていますが、フィクションです。