滋賀県知事選 与党の緊張感欠如も響いた
2014年07月14日 01時13分

 政府・自民党の慢心を戒める結果だった、と言えるのではないか。

 滋賀県知事選は、無所属で前民主党衆院議員の三日月大造氏が、自民、公明両党が推薦する無所属の小鑓隆史氏らを破り、初当選した。

 三日月氏は、2期務めた嘉田由紀子知事の後継者との立場を明確にするとともに、政府・自民党の政治姿勢を攻撃する選挙戦術をとったことが奏功した。

 特に、福島県での中間貯蔵施設建設を巡る石原環境相の「金目」発言や、東京都議会や衆院総務委員会での自民党議員のセクハラヤジに対する批判が高まったことが三日月氏への追い風となった。

 東日本大震災の被災者や女性への配慮を欠いた言動は、与党の傲(おご)りや緊張感の欠如の表れ、と受け止められたのだろう。

 国会は自民党が圧倒的多数を占める「1強」体制で、安倍内閣の支持率もなお高いが、政府・自民党は、より謙虚な姿勢で手順を尽くし、政策を遂行すべきだ。

 知事選は本来、候補者の資質や県政の問題を問うものだ。自民党の石破幹事長が「候補者、県政に直接、影響があること以外で影響が出ている」と指摘したような展開になったのは残念である。

 疑問なのは、三日月氏が、嘉田知事と同様、段階的に原子力発電から脱却する「卒原発」を唱えたことだ。原発政策は、政府が大局的観点から判断すべきものだ。原発の再稼働などには、知事の法的権限は及ばない。

 現状は、原発が稼働せず、火力発電の燃料費がかさみ、電気料金は上昇し続けている。政府は、関係自治体の理解を得て、原発の再稼働を急がねばならない。

 経済産業省出身の小鑓氏は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の成果を強調し、「滋賀県の経済を再生する」と訴えた。

 ただ、アベノミクスの効果が地方では限定的なこともあり、支持は広がらなかった。政府は、地域活性化にも力を入れるべきだ。

 知事選は、集団的自衛権を限定的に容認する新たな政府見解を閣議決定した直後に行われた。

 日本の安全保障環境の悪化を踏まえれば、集団的自衛権の行使を可能にし、日米同盟や国際連携を強化する意義は大きい。

 だが、三日月陣営は、政権批判の一環で新見解に反対し、「場外戦」に持ち込んだと言える。

 政府・与党は、知事選の結果にとらわれず、行使容認の必要性を丁寧かつ積極的に説明し、国民の理解を広げる必要がある

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