僕は家の外へ出た。

朝日がまぶしい。
気持ちのいい朝だ。

なんとなく、そばの井戸の方へと歩いた。
井戸は村の中心にあって、村人のたまり場になっている。

…まさしく井戸端会議、だ。

この日の朝も、村のおばちゃんとばあちゃんが井戸にいた。
僕を見つけると話しかけてきた。

「リュウ、おはよう。
村長さんがあんたのことをさがしていたよ。
おうちまで行ってみたらどうだい?」

…ターニアの言っていたことと同じことを言われた。

わかった、わかったよ。
今から行きますってば。

僕はぶらぶらと村長の家に向かった。
村長の家は村の北の高台にある。
寝起きでイマイチ力が出ないが、階段をのぼって行って村長宅におじゃました。


村長は居間にいた。

「おぉ、リュウ。来てくれたのか。
実は頼みたいことがあってな。
この村の民芸品が町で高値で売れることは
リュウも知っているだろう?」


ああ、そのことなら知っている。
機織りとかいろいろあるんだ。
この村の名産みたいなものだ。

「毎年、民芸品の売上金でふもとの町で作ってもらえる精霊の冠を買って村祭りのときに飾っているのだがな…

今年はリュウに精霊の冠を買ってきてほしいんじゃよ。

この村から山をおりてふもとの町へ行くのは大変じゃが、リュウなら大丈夫じゃろう。

売り物は、この木彫り細工と絹織物10枚じゃ。

行ってくれるか?リュウ。」


村長はこう言うと、にこやかに民芸品を差し出した。
引き受けざるをえない雰囲気…。

まあいいか。
ふもとの町に出るなんてそうはないチャンスだから。

ちょっと遠いけど行ってみよう。

僕は快諾し、民芸品をうけとった。
村長は満面の笑みで僕の肩をばんばん叩いた。

「頼んだぞ、リュウ。
村を出て南の崖をおりればマルシェの町があるぞ」


村長からそのあたりの話をよく聞き、
さておいとましようかとしたところに
村長の娘のジュディがあらわれた。

ジュディは僕の悪友のランドのことが好きらしくて
僕はいつも愚痴やらのろけもどきやらを聞かされる。

朝っぱらから面倒なので適当にあしらって
今度こそ村長の家をあとにした。

さて。

ちょっと大変なお使いを頼まれたぞ。
着の身着のままでは行けない。

一度帰宅して準備でもするとしよう。
「……ちゃん。

お兄ちゃん!大丈夫!?」


…誰かの声がする。

僕に声をかけているようだ。


…ん?ここは?僕の家!?

あれ?なぜかベッドの下に落ちている。
寝ていて落ちたっぽい。

夢?夢をみていたのか…。

「もう、お兄ちゃんたらびっくりさせないでよ。
いきなりベッドから落っこちちゃうんだもん。
頭打たなかった?」


…ああ、なんだかあちこち痛い気もするけど大丈夫。


僕は…僕の名前はリュウ。17歳。

そして今目の前にいるのは妹のターニアだ。

どうやら夢をみてうなされて、
ベッドから落っこちたらしい。


ターニアがおもむろに言った。

「さっき村長さんがお兄ちゃんに会いにきたのよ。
寝てるって言ったらまたあとで来るって帰って行ったよ。」


村長?ああ、村長ね、わかった。
後で行ってくるよ。


ここはライフコッドという山の中の小さな村だ。

僕は妹のターニアと二人で住んでいる。
他に家族は…いない。

これが僕の今の現実。

さっきの夢、あれはなんだったのだろう。
夢にしてはやけにリアルだった。

今でもあの霧モヤの中で浮かんでいた恐怖感を覚えている。

…嫌な夢だった。


「こんな朝早くから村長さん、
お兄ちゃんに何の用だったのかしらね。」

そうか、今は朝か。

夢のせいでなんだか時間の感覚まで狂っているようだ。


頭の中をスカッとさせるためにも表へ出て、
ついでに村長の家に行ってみようか。

僕は寝起きでぼんやりしたままの足どりで
家の外へ出てみることにした。
僕たちはお城の中へと潜入した。

かなり立派なお城だ。
内部は広くて迷子になりそうだ。

「どうやら前に進むしかなさそうね。
 リュウ、先に行って」

えええええ?
・・・やっぱそうなるんだ。。。
そうなるような気がしてた。

この流れには抗えない。

僕は先頭に立って歩きはじめた。
とりあえず城内をくまなく歩いてみるしかない。

魔王ムドーとやらを探して倒す・・・
それが目的・・・。


城内は広いのだが、思ったよりも複雑ではなくて、
廊下を進み、階段をのぼり、広間を抜けて、

ここをのぼれといわんばかりの階段発見。
やや長いその階段をのぼってみる。

するとまがまがしい気がたちこめた外廊下。

「くそっ・・・。
 まわりの空気がやけに重ったるいぜ!
 けど敵さんの姿は見えねえな。」

「い・・・息苦しいほどの邪悪な気配を感じるわ。」

本当に息苦しいくらいの、身の毛のよだつような気配だ。
空気そのものがよどんでいるとしか思えない。

つきあたりに扉があった。
扉からは邪悪最高潮の気配を感じた。

ここが目的地に違いない・・・!

気がせいて扉に手をかけようとしたそのとき、

「まって、リュウ!
 この扉の向こうにはたぶん魔王ムドーが待ち構えているわ。」

「いよいよだな。けどよ、それにしちゃ静かすぎやしねえか?
 敵さん、一匹も出てこなかったぜ?」

たしかにそうだ。
あまりにもここまですんなり来れてしまった。
こんなにすごいお城なのに、ここまで簡単に入り込めるとは・・・。

「・・・ええい!考えててもしょうがねえ。
 さっさと乗り込もうぜ!リュウ!」

一同、顔を見合わせ、うなづいた。

そしてその邪悪な扉に手をかけ、そ~っと開けてみた。


扉が開くと中は霧のようなものがたちこめていた。
躊躇する間もなく部屋の内部に引きずり込まれてしまった。

「えっ!?こ、この部屋は!?」
「なっ!なんだこりゃあ!これじゃなんにも見えねえ・・・
 ・・・うわっ!!」
「キャ~ッ!!」

いきなり体がふわふわと浮かび上がってしまった!

おどろおどろしい霧モヤで何も見えない上に体の自由を失った。


どこからか不気味な声が聞こえてきた。

「ふははははは。
 この私を倒そうなどとは甘く見られたものだな。

 愚か者よ。
 石となり、永遠の時を悔やむがよい!!」

霧モヤの向こうにうっすらと化け物の姿が見える・・・。
あいつがムドーか?

などと思っていたらいきなり空中に浮かんだままグルグルと回り始め、
右も左も、上も下もわからなくなってしまった。

僕たちは恐怖のあまり叫び声をあげ続け・・・

そのままどこかへ飛ばされたような感覚に・・・


「うわ~~~~~っ!!!」
 





僕は二人の消えた闇の方へと歩いていった。
だんだん闇に目が慣れてきた。

二人はどこだ?

・・・ああ、いたいた。

道は行き止まりで、二人はその行き止まりにいた。

そこは・・・断崖絶壁のがけっぷちだった。


「この崖の下が魔王ムドーの居城だ。
 もうあと戻りはできねえぜ・・・。」

兄ちゃんが興奮を抑えるかのように静かに言った。

崖の向こうは真っ暗闇の暗黒の世界。

が、ときおり稲光りがして闇が一瞬だけ明るくなる。

「いよいよですね・・・。
 もし言い伝えが本当なら、この笛で・・・。

 さあ、笛を吹くわよ・・・。」

お姉さんは、がけっぷちに立って、なにやらオカリナのような笛を取り出した。

そして闇に向かってオカリナを吹いた・・・。


・・・すると、真っ暗な空の向こうから何かが飛んでくる!
な、な、なにがきたんだ???

こっちへ来る!

・・・ドラゴン?

ドラゴンだ!

真っ黄色のドラゴンが鳴きながら飛んできた!
ってか、でけぇ!!

ドラゴンは僕たちのいる崖の前で止まった。
どうやら乗れと言っているようだ。

オカリナはドラゴンを呼ぶ笛だったのか?
はなからそういうシナリオになっているらしい。

僕たち3人はドラゴンの背中に乗った。

なぜだか不思議と怖くはなかった。

3人を乗せるとドラゴンは猛スピードで飛び始めた。
あたりが真っ暗闇な上にすごいスピードだからかなりスリリングだ。

でもなぜだか落ちる気がしないw


ん?あれは・・・

あれはなんだ?

・・・お城だ!

はるか下界にお城がうすらぼんやりと見えた。
ドラゴンが空中を旋回しながらお城の方へと降りて行った。

そしてお城の入り口で僕たちは降りた。
そのとき僕は、たき火にあたりながら寝そべっていた。


あたりは漆黒の闇、たき火の炎だけが赤々と燃えている。


一緒にたき火を囲んでいるのはキレイなお姉さん。
・・・誰だろう・・・?

どうやら僕は少しうとうとしていたらしい。

キレイなお姉さんが言った。

「あら?もう目がさめた?
 あまり眠れなかったのかしら?」

ん?僕に聞いているんだな。
いや、うとうとしていたから少しは眠ったようだけれど・・・。
目がさめて話しかけられているのだから、あまり眠れなかったのか?

「無理もないわね。
 いよいよですものね。

 ところで彼、どこまで見に行ったのかしら・・・。
 ずいぶん遅いようだけど。」

するとそのとき、茂みの向こうから誰かがすっとんできた。

「おっ!二人とももう起きてたか!
 ちょっとまわりを見てきたが、やっぱあの城に間違いなさそうだぜ。

 そろそろ出発しよう。
 もうじゅうぶんに休めただろ?」

すっとんできた人物、やたらガタイのいい兄ちゃんが言った。

「そうね。こうしててもはじまらないわ。
 そのために今までずいぶん長い旅をしてきたのですものね。」

「そうだな。さあ、行くぜ、リュウ!
 相手は大魔王だ!死んだ気で戦おうぜ!」

兄ちゃんはこう言い放つと、すたこらと闇の向こうへ消えていった。
・・・気の早いヤツだ。

「もしこの戦いに勝てば、
 世界に平和がおとずれるはずよ。

 準備はいいわね?リュウ。
 さあ、行きましょう。」

キレイなお姉さんも行ってしまった。

たき火の火がそのまま燃えている。
このままにして行ったら危ないような気がして、
僕はなんとかかんとか火を消した。

あっという間に真っ暗闇になった。

・・・ちょっと怖い。

とりあえず二人の後を追って行こう。