盗賊の鍵をゲットしてうかれていた僕は
大事な任務について思い出した。

村の民芸品を売って精霊の冠を入手しなくては。

民芸品をまず売ろう。

買ってくれそうな目星はいくつかつけたが、交渉次第で売価が変わってきそうな雰囲気だ。

妙チキリンな建物のあっちとこっちに出店している兄弟がいた。
どうやら兄弟仲がすこぶる悪いらしい。

僕はそこでちょっとずる賢いことを考えた。
この不仲の兄弟に、相手の言い値をばらして値上げ交渉をしたら、お互いにさらに売価を上げてくれるんじゃないかな?

早速僕は妙チキリンのあっちとこっちの往復を開始した。

…思ったとおり。

兄弟はそれぞれ、向こうの言い値を聞くとムキになって値上げしてくれた。

僕はまたまた調子にのって、更に値上げしてもらえるべく何度も妙チキリンを往復した。

上がる上がる、面白いように売価がつりあがる。

そしてもうこれ以上は、というところでストップ、
結局ガラの悪い兄貴の方が高値だったので、
人のよさげな弟ではなく兄貴の方に売った。

弟くん、ごめんね。


さて、資金もできたし、次は精霊の冠だ。

町のはずれに冠職人の家とやらがあった。
ここで冠を作ってもらえばいいのだな。

しかし冠職人は不在で、娘さんが言うことには三日前から冠の材料を調達に出たきり帰ってこないとのことだった。

職人がいなくては冠を作ってもらえない。
困った困った…

すると娘さんは、急ぎの用事なら西の橋の先の森に職人の親父さんを探しに行ってくれと言ってきた。

…う~~~ん、

しかたがない。

ちょっくらその西の橋の先にある森とやらに冠職人を探しに行ってみるとするか…。
マルシェの町…

町というところはこんなにもにぎやかなところなのか。

あちらこちらに露店が出ていたり、
妙チキリンな建物の中ではバザーが行われていたりした。

にぎやかで活気がある。
商人という人種はものすごくパワフルだ。

中には商人ではなく、シロウトっぽい売り子もいた。


こんなところでフリマをやってみたいわぁ♪

などとターニアが見たら嬉々として言いそうだ。


とりあえず片っ端から出店を見てまわった。
あきらかにぼったくりみたいな店もあれば、
インチキくさい商売をしている店もあった。

田舎モンだがこんなものには騙されないぞと。


ふと、興味深い物を売る店をみつけた。

『盗賊の鍵』

なんとも心惹かれるネーミングだ。

値段を聞くとべらぼうに高かった。
3000G。
…あるわけない。んな金。

なんとなく値切ってみたら、値段を下げてくれた。

さらに値切ったらまたさらに下げてくれた。

僕は調子に乗って値切りまくった。
店のおっちゃんもだんだんやけっぱちになってきた。
こうなれば根競べだ。
もしかして買えちゃう?

破れかぶれになったおっちゃんはとうとう300Gで叩き売りしてくれた。
最初の値段の実に9割引だ。

…買ってしまおう。

僕は財布の中身を見た。
見てすぐに落胆した。

…235Gしかない(泣)

おっちゃん、ダメだ、200しかないや。

するとおっちゃんはさらにさらに破れかぶれになり、
なんと200Gで売ってくれた♪♪♪

…最初の値段は一体何だったんだ?

おまけに、この町にある盗賊の鍵で開く扉のありかまで教えてくれた。

ありがとう、おっちゃん。

あんた、いい商人になれるよ♪

僕はホクホク顔でおっちゃんのところを離れた。

おっちゃんは苦笑いしながらこっちを見て手を振っていた。
ランドと別れた僕は先を急いだ。

なるべくならこんな山の中には長くはいたくない。

ここの崖ときたら結構入り組んでいて、
さながら迷路のようだった。

吊橋あり、洞窟あり、階段あり、
こりゃあじいさんじゃキツいに決まってる。

もちろん弱いとはいえ魔物も出る。

命からがらとまではいかないが、
やっとの思いで崖を降りきって平地に出たときにはものすごくホッとしたものだ。

…と安堵したのもつかの間、
ふもとに出たら魔物がいきなり強くなった…!

おいおい、マジかよ!
僕の装備はこん棒。
防具もたびびとの服。

…ちょっとツライ(泣)

まずいまずいまずい…
もうMPも残ってない…


…と思っていたところに町が見えた!

助かった!!

なんとかかんとかふもとの町に到着した。

ここがふもとの町、マルシェだ。
家に帰ると案の定ターニアが待ちかまえていた。

村長の用事を告げるとことのほか喜んでくれた。

「すごいじゃない♪
大役よ、お兄ちゃん。

ふもとの町まで行くのはちょっと心配だけど
お兄ちゃんなら大丈夫よねっ」

などとはしゃいでいた。

ランドのママの言ったように、ターニアは村祭りで神の使いという大役をやる。
なので今回の祭りでは兄妹揃って大役をおおせつかったことになる。

親のいない兄妹ではあるが、僕たち二人ともなかなか頑張って健気に生きているもんだ。


とりあえず旅仕度をして、ターニアに見送られて僕は早速出発した。

…が、村の外に出たら弱いとはいえ魔物が出現した。

弱いからやられるようなことはないが、
村でのどかに暮らしているのとはわけが違う。

…もうちょい装備を整えておけばよかったかな?


山道に入り、見晴らしのいい丘のところで
ランドが昼寝をしているのを見つけた。

僕はランドを軽く小突いて起こした。

「わわっ!びっくりした~、リュウか~。

このあたりは強い魔物も出ないし天気もよくて気持ちいいから昼寝をしてたんだよ。

それより今度の村祭り、ターニアちゃんが神の使いをやるんだってな。

楽しみにしてるって伝えておくれよ、ア・ニ・キ♪」

ランドはうれしそうに言った。




僕は村長の家をあとにした。

まっすぐ家に帰ってしたくをしようかとも思ったのだけれど、
なんとなく寄り道をしたい気分だったのでランドのところへ行ってみた。

ランドの家は飲み屋をやっている。
なぜかここの飲み屋は朝からやっているw
そして朝でもお客がいるからおもしろい。
まあ、さしずめ村の憩いの場、たまり場みたいなものだろう。

僕が店に入っていくと、ママさんが

「あら、いらっしゃい、リュウ。
 今年の村まつりはターニアちゃんが神の使いの役をやるんですってね。

 それを聞いてうちのランドもすごく楽しみにしているのよ~。
 もう、あの子ったらターニアちゃんにぞっこんなんだもの♪」

と、いつものまったり口調で楽しそうに言った。

そう、うちのターニアははっきり言ってカワイイ。
兄の僕が言うのもなんだけど、かなりのもんだと思う。
ランドがターニアにぞっこんで、ジュディがランドに首ったけ。
いわゆる三角関係ってやつだ。
もつれて面倒なことにならなきゃいいんだけど。


カウンターで飲んだくれてるじいさんが何やらブツクサ言っている。
どうやら昨年までのふもとの町への使いはじいさんだったらしい。
お役御免でがっかりしているようだ。
・・・別に僕が行かなくてもいいんだけど、もう引き受けてしまったことだし、じいさんではふもとの町に行くのもちょっとあぶなっかしい。


二階に行けばランドがいるかと思ったらおやじさんしかいなかった。
聞けば朝からぶらぶらと南の崖へ散歩?しに行ってしまったらしい。
おやじさんはランドがいつまでものらりくらりしているのが不満そうだった。

ランドがいなかったので、僕はしかたなく家に帰ることにした。

途中、村のおじさんに会ってちょっとだけ世間話をした。

「ムドーとかいう魔王が世界を支配しようとしているらしい・・・」

おじさんはこんなことを言った。
でもこの村は精霊さまに守られているから平気なんだとか。

魔王ねぇ・・・

魔王ムドー・・・

ん?どっかで聞いたことのある名前だな。
魔王ムドー・・・

そうか!

夢に出てきた、あの霧モヤの部屋にいた化け物だ!

なんだかちょっとだけ気味悪いような・・・
夢に出てきた化け物の噂を現実に聞くなんて。

まあ。気にしてもしかたがないか。

ターニアが心配するといけないから、
もう家に戻るとしよう。