マルシェに着くと僕はすぐに宿屋に行き、泥のように眠った。
しばらく眠って目が覚めたら、思いのほか体疲れがとれて体が軽くなっていた。
街のバザーは終わりが近いらしくて、
片付けをはじめている店もあった。
あの大穴で助けたおじさんが冠職人のビルデさんだと思うので、僕はビルデさんの家に行ってみた。
仕事場ではビルデさんが一心不乱に机に向かっていた。
やっぱりあのときのおじさんがビルデさんで間違いなかった。
僕が話しかけるとビルデさんはたいそう喜んでくれた。
そして出来立てホヤホヤの冠、
『精霊の冠』
を渡してくれた。
お代を払おうとしたら、助けてもらったからいらないといってタダにしてくれた♪
おじさんの身代わり?に穴に落ちて大変だったが、
村の民芸品を売ったお金がまるまる浮いたからかなり得した気分になった。
精霊の冠…
なかなか素晴らしい冠だ。
ターニアに似合うだろう。
これを入手してくるのが僕の役目だったわけだが、
それにはずいぶんと不思議な体験をしたものだ。
いわば苦労の象徴だ。
あのまま知らない世界から帰ってこれなかったらと思うと心底ゾッとする。
だいたい透明人間になっただなんて、
もうひとつ世界があるだなんて、
誰が信じてくれることだろう?
僕はビルデさんに御礼を言って、ライフコッドへ帰ることにした。
帰路、あの不思議な世界の話を村のみんなにしようかどうしようか考えた。
ターニアやランドに話したら何て言うだろうか?
ターニアはともかく、ランドなんか信じてくれないかな?
そんなことを思いめぐらせながら、
僕は例の崖を今度はのぼって帰路を急いだ。