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JUNとバーベキュー

只今、新シリーズ執筆中

(あれっ?クッソ~っ、下ろされへんやんか~っ!)



空港ターミナルビル2階にあるATMの前で暫し呆然とするオレ。
それもそのはず。24時間利用可能な銀行ATMは一台しか無いにも関わらず、その一台とオレが持っているキャッシュカードの提携銀行がナンタラカンタラで取引出来ないとかふざけた事を抜かしやがる。
ま、十日間くらいなら手持ちの現金で事足りるとは思うが、それにしても一時期ながらアジアのハブ空港を目指すだの何だのとほざいておきながら、所詮関空なんてこんなもんである。そこにどんな下らない大人の事情があるのかは知りたくもないが、大体ローソンにATMが入って無い事自体おかしいよな?場所を考えろ場所を。



(ホンマに役に立てたへん空港やなぁ、そりゃみんなインチョンに持ってかれる訳やわ…)



成田や羽田に関しては全くと言っていいほど知識は無いが、ホントにこの関空というポンコツ国際空港に到ってはどうにかならんのかと利用する度にいつも思う。

観光産業に関しては(それだけじゃないけど)他国に比べて圧倒的に遅れを取っている日本。
それはただ単に宿泊施設や交通費に掛かる物価の高さが原因では無く、全ての旅行者が最初に訪れる場所である空港の使い易さも関係しているという事を政治やってるお偉いさん達は何にも分かっていない。
別にバックパッカーが旅し易い国にしろとは言わんが、そいつらはそいつらで困らん様な環境を作ってやらん事には、いつまで経ってもその時だけバブルな国の団体バカに引っ掻き回されて終わりだろうな。
しっかりしろ、橋下。新地の姉ちゃんとどんなプレイを楽しもうが知ったこっちゃないが、とにかく今はカジノだカジノ!
何ならオレにやらせろ、礼ならその新地の姉ちゃん回してくれるだけでいいから。



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出国前の一時を、それぞれの想いで過ごす人々。
が、特に何も考えてない。



『よっしゃ、ホナそろそろ中に入っとこか。後40分くらいで搭乗時間やしさ』



一人だけだと持て余し気味な空港での待ち時間も、仲のいいメンバーが四人も揃えばあっという間に過ぎ去って行く。
後は機内で5時間ほど我慢すればいよいよタイ上陸だ。



『ん?どうした?』



手荷物検査場で何やら止められているのは今回で三度目の訪タイになる男、京ちゃん。
ま、この一年で三回もここに来てるんだから、一応職員による確認程度の作業だろう。



『いや、あの…』


『何や?どないしたん?』



見ると、ヤツが担いでいたバックパックの底の方から、職員がシャンプーセットらしきパックをゴソゴソと取り出してチェックしている。もしかして中身はマカエキスか?



『あ!もしかして容器のサイズか!?』


『みたいなんですよ…』


『ブハッハッハッハッ!何でまたそんな蒲焼きのタレ入れみたいな大きさの容器を三つも……ウハッハッハッハッハッ!』



京ちゃんからしてみれば、必需品などはなるべく家にある物でと思って詰め替えて来たのだろう。
が、どう見たってその容器はデカいやろ?鶴橋のおばちゃんが手作りしたチョジャンを詰める時くらいしか使わんぞ、どこで買うたんや?それ。
目出たく没収処分となり、その分荷物が軽くなったハナモゲラ。初っ端から細かいネタを惜しみ無く提供してくれる男である。



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懲りもせず激マズ飯をパクつく没収生徒。
最後の晩餐はローソンのおろしソバ。



(ちっ…うっせえなぁも~…)



飛行機が離陸してから3時間半。
相変わらず乗り物では眠れない体質のオレが、ようやくウトウトし始めた頃に例の機内食という名のエサが配布され始めた。
メニューなど見なくても分かっている。ゴムの様なソーセージとダメなオムレツだ。
つか、誰が食うんだ?こんなもの。



『え…え~と、ク、クロワッサン…』



間近で見てみるとささくれの目立つ制服に身を包んだタイ人のキャビンアテンダント。
そいつの顔がマラリアにかかった羽賀研二みたいな顔だった件はこの際どうでもいい事だが、それにしても以前は簡単な英会話も聞き取れなかったハナモゲラが、こうやってクロワッサンなるセレブな食べ物を自力でチョイス出来る様になったのを見るとなかなか嬉しいもんである。
なんせ以前は、機内で使う英語と言えば「チキン」か「ビーフ」しか知らなかったレベルなのだ。
一年前なら、「飲み物はいかが致しますか?」と聞かれたとしても、「チキン」と答えていた京ちゃんが、今では立派にクロワッサンを注文出来るまでに成長した。
「チキン」さえも言えずに、「バード」と答えるイサオに比べりゃ英検2級ほどの価値があると言えるだろう。



(しっかし、みんなよく食うなぁ…こんなもん)



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眠気を耐えながら、必死になって元を取ろうとする哀しい人々。
中には機内食のスマートな食べ方なんかを自慢げに語るヤツもいるがただのバカだろう。
オレから言わせりゃキムチを持ち込む韓国のおばちゃんと同じレベルだ。



ふと周りを見て吹き出しそうになっていた。

なんせ、さっきまでグーグーいびきをかいて寝ていた連中が、たかが2・3時間仮眠を取っただけだというのに、言わばそこを強制的に起こされて食べたくも無いクソマズ飯を寝ぼけまなこでパクついているのだ。しかも地上から何千メートルも離れた空の上でである。





考えてもみてほしい。





もしこれが機内ではなく自分の家だとしたら、これと全く同じ状況をみんなは耐えられるだろうか?





『ほらっ、いつまで寝てんのっ!もう朝3時なんだから、さっさと起きてご飯食べなさいっ!』





オレなら間違いなく家族とは墓を別にするだろう。





機内食…

こんなもんに能書きタレているヤツはロクなもんじゃない。







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高度のせいもあるんだろうが、夜もあけてないというのに日の出が拝めた。
今考えれば、アンコール・ワットで見たやつより眩しかったな。





『あ~…もう関空かよ、後は帰国するだけやな』


『早い早い!』



りんくうタウンから関空に延びる連絡橋を眺めながら、リムジンバスの車窓で呟くオレにすかさずツッコむ長老・由紀(ヨシキ)ちゃん。

プラスのドライバーとヤットコ一本さえ有れば、東京スカイツリーなど半日で解体しそうなその風貌とは真逆の性格を持つこの男は、プロローグでも紹介した通り他人に対してとにかく礼儀正しい。
歳だってオレより学年では一つ上だし、週に二回もウチの店に通ってんのならいい加減にタメ口で話してくれりゃいいものを、オレだけじゃなく京ちゃんやミツコにまで敬語で会話するという徹底ぶり。
80年代のプロレスで言うならば、タイガージェットシンが「大変恐縮ですが、リングに向かうところですので皆様通路を空けていただけますでしょうか?」と、頭を下げながらターバンの代わりに白無垢の角隠しをかぶっている様なもんである。
分かりやすく言うと、背ビレのトゲ先からモイスチャーミルクのコンディショナーを出すオコゼの様な男なのだが、オレはこの旅に由紀ちゃんを同行させるにあたって幾つかの心配事があった。それは次の様なものである。



①硬い物が食べられない

②汗っ掻きなので湿気の多い場所が苦手(ベタベタするから)

③食べ物の好き嫌いが多い



こんな項目を目にしてウンウンと頷くのは、入れ歯の間に苺のタネが入り込むのを嫌がる爺さんかサラサラシートにこだわる大人用のパンパース愛用者くらいなもんだ。
普通ならそんなデリケート怪人をオレの旅になんか同行させるはずが無いのだが、これでも人格的に言えばオレが気に入っている仲間の中では群を抜いてのトップなのである。恐ろしい話だ。



『結局、バンコクに着いてからは、車をチャーターするんじゃなくなったんですか?』


『うん。実はオレ、ちょっと勘違いしててさぁ。何年前からか忘れたけど、関空からの深夜便って一時間くらい出発時刻が早くなってるんよね。そやし、向こうの空港に着いてイミグレで大渋滞に巻き込まれへんかったら余裕で国境行きの列車に間に合うと思うんだわ。バスなんかよりもチョイト時間はかかるけどね』



スワナプーム(タイ国際空港)からカンボジアとの国境の街・アランヤプラテートまでに掛かる移動時間はバスで約4時間。タクシーをチャーターすれば約3時間半。そして、今回利用しようと思っている鉄道は約6時間である。
当初は由紀ちゃんとアヤ坊の限られたスケジュールを考慮して空港からタクシーをチャーターしようと考えていたのだが、眠れるかどうかも分からない深夜便での6時間移動に加え、慣れない気候・食事・そして何よりも全員揃って喫煙者という事も考え、一番安くて(片道48バーツ)気楽な列車移動をチョイスする事にしたのだ。
列車なら煩いほど売り子もいるし、途中で腹が減ってもそれぞれ好きな物が食えるだろう。



『ま、一番快適な面で言えばタクシーを使うのに越した事は無いけどな。バスは京様ちゃんが嫌な顔するしさ』


『ブゥァスはしんどいですよぉ…』



例のモゴモゴ口調でバスだかブスだか聞き取りにくい状態になっているカリメロトーク。
ま、仮にそれがバスじゃなくてブスだったとしても、山田花子似な元チェリーの発言に説得力は無い。



『よおっしゃ、関空着いたぞ~!』


『キャ~ッ!楽しいな楽しいな~♪』


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関空に着いて大喜びのアヤ坊。
こんだけ素直に楽しんでくれるとこっちまで嬉しくなるな。
軍曹は果てた直後で足腰にガタが来てた。



ターミナルビル4階・出発ゲートに降り立ち、ついさっきまでバスの中で寝ていたアヤ坊の観光テンションにスイッチが入る。
寝付き・寝起きの悪いオレからしたら考えられん。身体のどこかに変圧器でも付いとるのか?タッチパネル式で。



『んじゃ先にチェックインだけ済ませてさ、後はコンビニで買物するなりしてのんびりしようや。とりあえず腹減ったわ、オレ』



例の如く何も食ってないまま現在に到っているオレ。とにかく腹減った。が、機内食は嫌だ。



『何かさぁ、今まで全然気付いてなかったんやけど、関空に「すき家」が24時間オープンしてるみたいなんよね。旅行行く前の一発目がすき家ってのも残念な話やけど、コンビニ弁当よりはマシやからしゃあないよな』



普段から余程の事でもないと牛丼チェーンの店には足を踏み入れないオレ。その中でもマズさでは1・2を争うこの店に、まさか関空で利用する事になるとは夢にも思わなかった。
仕方ねぇよな、コンビニ弁当アレルギーなんだから。



『んじゃ、ちょっくら行って来るわ。ローソンの前に喫煙室もあるし、そこらでのんびりしといてな』



てな訳で、腹を空かせた落ち武者の様な気分になりながら、すぐに発見出来た激マズ有名店に一人特攻。
いかにも頭の悪そうなスタッフの姉ちゃんに、「手ごねハンバーグ定食」と言う所を、「手もみハンバーグ丼」と言い間違える。
ところがこのアホ姉ちゃん、それまで散々他のスタッフと下らない話で盛り上がっている所に、いきなりいかついオッサンが現れて不可解な注文をしたせいか完全に舞い上がっているようで、「はい、手もみハンバーグ丼をお一つ」と返してくる。「え?あんの?」「いえ、無いです」。
クビだ、オマエは。


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深夜の関空でひっそり営業する激マズ店。不気味だ。




”手ごね”とは言いながら、どう見ても機械で作った様にしか感じられないハンバーグ。多分、手ごね一筋勤続五年のリストラロボット・TGN西岡君が一日10万個以上生産しているんだとは思うが、これだけは言わせてくれ。



マズい上にお冷やを紙コップで出すのだけはやめてくれ、飲尿フェチじゃないんだから。以上。







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ガラガラの関空をさまよう特攻隊。
遠近法を使っても一番背の低い軍曹が哀れだ。脚の長さが原因か。




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マクドナルドのフライドポテトが異常に塩辛いと怒り心頭の由紀ちゃん。
が、そう感じたのには年齢的な事もあると思う。
次回は豆腐屋を探そう。




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定番のポーズで写真に納まるアヤ坊。
何やっても許す。可愛いから。




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出発前の注意事項を読み上げるカリメロ軍曹。
が、誰も聞いてない。





『どうでもいいけどオマエさぁ、最初は7月1日からまた一人でカオサンに行くとか言っといて、その後は17日にオレ達と合流するって言ってたよな?それがまた何で23日にバンコク着とか訳の解らん事言うてんねん』



いよいよ旅へのカウントダウンも残り少なくなってきた一週間前。
いつもの事ながら、計画直前になってから二転三転するイサオのルーズさに、さすがのオレもいい加減イライラしていた。
というのも、



『いくら一人って言っても、大学生連中が夏休みに入る時期には余裕かましてへんとサッサとチケットを押さえとけ』



てな事をオレが散々口喧しく言っていたにも関わらず、



『イイイイ、いや。まままままだ、ねねねねねネットで安いのが、あああああ有りそうなんですよ。そそそそそれに、ちょちょちょちょっと、じゅじゅじゅじゅ順さん達と同じ日だと、ここここ小遣いが、ややややヤバいんですりょ……』



と、例によってあのハイパースキャットを繰り出しながら聞かなかったのだ。
まぁそれはそれでいい。元々旅なんて物は余裕も無いのに無理にする事じゃないし、仲の良い友達が行くから無い金を工面してでも海外に出るなんてのは、いい歳をこいていつまでも定職を持たずにパッカー崩れみたいな生活を送っている”自称ニート”のプー太郎か、いつもオレがこのブログで散々コキ下ろしている”スネかじりバカ”の甘っタレ大学生くらいなもんである。

ま、コイツらのイタ過ぎる部分というのは今更また記事にするだけ労力の無駄だから、知りたい人は過去記事を読んでもらえればオレの言いたい事が分かってくれると思うのだが、ある意味それよりもタチが悪いのがこのイサオという男だ。

大体このどうしようも無いバカは、何でこうも直前になって平気で予定を変える事が出来るのだろう?


確かにオレは、前回コイツが一人でタイに行き、そこで本当に楽しんで無事に帰って来た事もあり、「次にオマエがまたタイに行く時は、オレ達の予定にばっかり合わせなくてもいいから、カオサンが好きならカオサンを極めるくらいの気持ちで通い倒せばいいし、もし一緒に行ってもオマエが本当に楽しいと思える事に出会ったなら、そっちを優先して別行動したってオレは全然構わん。むしろオマエにそんな事が起きるなら、オレだってそっちの方が嬉しい」とまで言ってはいたのだが、最終的にはコイツのためにアレやコレやとスケジュールを調整し直し、コイツや京ちゃんでも言葉にも困らない様にと地方の日本人宿をネットで調べて予約したりと結構大変だったのだ。それなのにこのインチキ日系宇宙人は………まぁいい、コイツはコイツなりに残り少ない脳ミソを駆使して最終的にどっちが楽しかったかが分かる時がすぐに来るだろう。それまでは優しく見守っていよう、クララの婆様みたいに。



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リムジンバスの発車前に興奮を隠しきれないアヤ坊。
こんな姿を見たのは、ダブルソフト(食パン)をあげた時以来だった。



『おっ!?また貸し切りかよ。三回連続やないか、ツイてんな~♪』



大阪、上本町から出ている関空行きのリムジンバス。
最終より一つ前の便だとは思うが、いくら土曜の夜とはいえ時刻はまだ10時である。ホント、大丈夫なんか?関空。ま、オレ達からすれば大型バスをチャーターしたみたいで何だかマハラジャ気分なんだけど(←安上がり貴族)。



『へえ~、トイレも付いてるんですかぁ?すごいな~♪何か凄く得した気分になりますね!』



冷房のキッパリ効いた清潔且つ快適な関空行きリムジンバスに、広島から出て来てまだ二年も経ってないアヤ坊が感激するのも無理は無い。
ただでさえ急上昇中のテンションに加え、いよいよこれから空港に向かおうという所でいきなりマハラジャクイーンとしてデビューしたのだ。お立ち台でもあれば牡蠣のビキニでも着て踊り狂っていただろう。



『これから先、綺麗なトイレを使えるのはこのバスと空港だけだからね。今のうちに思いっ切り堪能しといたらいいよ、日本という国の偉大なる清潔さを』


『そんなに汚いんですか~?タイのトイレって』


『ん~…有料のトイレならまだしも、そうじゃない所になると息するのも苦しいな。んで、足元とかビチャビチャやしさ、裸足でサンダルとかだとキツイよね。な?京ちゃん』


『すぉ~っスねぇ~…特に田舎ぬぉ…∂∝…ふぉ…ズス……』






タイの田舎だけではなく、ラオスやミャンマーの想像を絶するトイレを嫌と言うほど見せ付けられて来たロリコン軍曹。


ヤツは、今まさにそれを思い浮かべながら、懐かしさの中に絶望感を噛み締めているのだろう。
長い事付き合っていると、口の粘膜のネトリ具合でヤツが何を言わんとしているのかが解る。









だがな、京ちゃん。




どうせ乗客はオレ達だけだし、広い車内のどこに座ろうがそれはそれで勝手にすればいい。
が、お願いだからこれだけは言わせてくれ…







アンタ、さっきから一人離れて何をニヤニヤしてんのや?
写真に写ってる顔がイッた後みたいな表情になってて無条件に気持ち悪いっつーのっ!!寝てくれっ、頼むからっ!!



JUNとバーベキュー
果てた軍曹。シュールだ。








以前にも書いた事があるが、自由な旅というものは出発までのカウントダウンをしている日々が一番楽しいものだ。



あぁ…今回はどのルートを何に乗って移動しようかなぁ?とか、前回泊まった宿の主人は受付でハナクソばっかりほじってて感じ悪かったから今回は別の宿にしようとか、現地に着いてしまえば何に乗ろうが何処に泊まろうが五十歩百歩な事くらいは分かっているくせに、「あそこに行けば旅人との凄く良い出会いがあって、しかもその出会いは一生の思い出になるんじゃないだろうか?」等と、自分にとって都合の良い事ばかりを想定しては、何度も何度もバックパックの整理をしながら出発当日を心待ちにしている……オレも若い頃はそんなイタい連中の中の一人だった。



いつの頃からだろう?
もちろん幾つになってもバックパック一つの旅というのは基本的に面白いのだが、そこが例え初めて行く未開の地であっても、旅に出て一番楽しく感じる場所は、ちょっと甘めに査定したとしても現地の空港にあるイミグレーション(出入国審査場)を抜けるまでになってしまった。

で、辛くて長くて鬱陶しい待ち時間の洗礼を喰らっているうちに、イミグレを抜けてから起こるであろう数々の厳しい現実を想定していると、約一ヶ月前からずっと楽しみにしていたプードルママの様なワクワク感はものの見事に消え去り、空港のターミナルビルを出る頃にはすっかりチャンバラ大将みたいな戦闘モードに突入しているのである。

が、よくよく考えてみると、この戦闘モードに入る事自体がバックパッカーとしての愉しみでもあるのだが、生憎そこら辺を愉しめるのも、「来た来た…よ~し、今回は絶対にこんな奴らには騙されんぞ!」なんて身構える時期。つまり、その国に通い始めてせいぜい三回目くらいまでになってしまうである。こうなって来ると気分的には楽だが肝心の刺激と言う物が足りないと感じてしまう。人間とはつくづく勝手な生き物だ。


そんな中、丁度良いタイミングで降って湧いた様に生まれたのがこの泰社会見学奇行シリーズだった。
一度目は京ちゃん、二度目は京ちゃんとイサオ、そして三度目の今回は更にバックパッカーとしては超ド素人の新メンバーを二人も加えて送るこのシリーズは、自由旅行が唯一の趣味なくせに回を重ねる毎に感動を無くして行っているオレ自身に対するカンフル剤なのである。

例えば、


『俺、こないだ一人で東南アジアを一ヶ月かけて一周して来てさぁ、電気も通って無い様な村で現地の人にメシなんか食べさせてもらって最高だったよ!』


なんてセリフを全盛期の渋谷哲平の様に興奮して言おうが、それを聞いてる相手がもし、


『え~っ!?電気も通ってないの?じゃあ、暑いとこでエアコン無しで寝る訳?え?ダニ!?ギャ~ッ!!絶対無理無理!!何でそんなとこに高い航空券買ってまで行く必要があるの?ね~ね~それよりさ~、来週みんなでディズニーランドに日帰りで行くんだけどアンタは来ないでよね、ダニなんか伝染(うつ)されちゃったらたまったもんじゃないからさ~』


てな感じで全く価値観が合わない連中ばかりが周りにいたら目も当てられない結末になるのだが、幸いな事にオレの周りにはこれまでにオレが一人でして来た様な旅に興味深々なヤツらが多いらしい。


「アンコールワットですかぁ、それは死ぬまでに一度は見ておきたいですねぇ」 

「わ~、何だか面白そうですね~!アタシも行きた~い♪」


旅に限らず何にしてもそうだが、趣味や思考、それに価値観が合わないと人の仲というのは基本的に上手く行かなくなる。
が、普段の暮らしの中でそんなヤツらがホイホイと現れる事はもちろん無い。だから人はネット上で自分と似たような友達を探すのだろう。
しかし、そこは前回の旅に於いて嫌と言うほど懲りている。いくらネット上ではこの上なく気が合おうと所詮はバーチャルな世界だ、実際身近にいる友達なんかとは比べるまでも無い。



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そんな不慣れなヤツらを引き連れての旅というのは予想以上に大変な反面、予測以上に楽しいものとなった。
何と言っても気の合う連中と一緒にいる事で常に話し相手には困らず、各々が持つそれぞれのリアクションが見ていてとにかく飽きないのだ。一人旅に食傷気味になっていたオレにとって、今さらながら旅とはこんなに面白い物だったのかと驚いている。



『よ~っしゃ~っ!!んじゃそろそろ閉店するで~。ミツコ、悪いけど居いひん間の事よろしくな』


『わかりました~、気を付けて行って来てくださいね~♪』



留守にする間の十日間、時々バイトに入ってもらっているミツコに店の鍵を預け、不測の事態が起こらない事を願うオレ。時刻は夜9時、いよいよ出発だ。


『きゃ~っ!た~のし~な~っ♪』

『うわ~.....何かメッチャ緊張してきた、俺....』

『...っこらしょっ...と.......。さて、行きますか』



それぞれのテンションで、それぞれの想いを持って店を後にするオレ達。少なくとも、これからの前半四日間は、新メンバーの二人にとっては体力的にもかなりしんどい日々になることだろう。
が、こういうスタイルの旅は、それこそが醍醐味でもある。





(よっしゃ、いい旅にするぞ....)





泰社会見学奇行Ⅲ、スタートだ。


















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航空券の価格優先で、現地では結局すれ違い日程になってしまったイサオに対して怒る妹と、それに対して言い訳さえ出来ないスペースパラノイア。
が、そのツケは後々しっかり返って来る事になる。




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わざわざ店から駅のホームまで見送りに来るイサオ。
なかなかいいとこあるなぁと感心していたが、自分の家に帰るついでだった。
虫歯になれ。




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一人取り残され、日程変更した事を後悔し始める反省猿。
それを見ていた京ちゃんが、電車の中でこんな事を呟いていた。
「バカは死んでも治らないっスよ....」

なぁ京ちゃん。どうでもいいけど、もう少し旅を楽しむ雰囲気出せんのか?
アンタだけやぞ、さっきから年寄りみたいなテンションで一人浮いてんのは。




『もう旅に女とか連れて行くのはやめときましょうよぉ…』



これは前回の旅が終わってから二ヶ月ほど過ぎた頃、ウチの店で呑んでいた京ちゃんの口からポロッと出た台詞である。



『次回はビーチなんかも行ってみるか?この前はラーン島くらいしか見せられへんかったしさ、もう少し綺麗なビーチに、もう少し優しめの明るい女の子でも誘って二泊くらいするのってどーよ?』



シリーズ第二弾で味わった、苦痛と我慢と後悔まみれの旅。
オレの中では、屈辱にも似たそんな過去を一秒でも早く消し去りたかった。だから敢えて次の旅には華が欲しいと思っていたのだ。



『次回はまだ南部に行く予定は無いけどさ、東部から西に向かう途中で時間があったらカンボジア国境に近い場所の海でゆっくりするのもエエかと思うんよな?でもホレ、こないだも思ったけどさ、やっぱりビーチには野郎だけで行ったって全然おもんないやんか。そやし、色恋とかは別にして、みんなが楽しくなれる様な明るい女の子も誘って…』


『いないですよそんな娘は!どうせまた面倒な事になりますって~!』



そのメスカブトムシみたいな輪郭をした風貌とは裏腹に、京ちゃんという男はこう見えてもなかなか頑固な一面がある。
いや、頑固というよりは、一度失敗したと感じた事に対しては必要以上に用心深くなる性質(タチ)である事を、オレはこれまでの旅を通じて知っている。
例えばそこら辺の屋台で軽く済ませようと思った昼メシなんかでも、「京ちゃんは何にする?」と、オレがマザーテレサの様な微笑みでごまかそうとしても、「う~ん…あんまり食欲無いんでボクはいいです…」と、如何にもマズそうな所ではグレた尾方大作が歌う無錫旅情の様な顔つきで頑なに拒否し続けるのである。



『いや、オレだってこないだみたいな地雷はもう懲り懲りやけど、あん時はたまたま強烈なハズレくじを引いただけかもしれんしさ、それに、さすがに世の中あんな気の狂った刑事貴族みたいな女ばっかりや無いやろうし、しっかり見極めれば大丈夫やって』


『どうやって見極めるんですか…』


『う~ん…』


『でしょ?もうやめといた方がいいですって。どうしても参加させるなら、ここで面接してからにしましょうよぉ~』


『面接っつったってオマエ…んじゃもし東京とかからわざわざ大阪まで来てくれても、話してみたら発情期の丹頂鶴みたいにうるさい女やったらどないしたらエエねん?』


『だからやめといた方がいいんですよ。よっぽど知ってる人以外は絶対失敗しますって!』


(知ってる人かぁ……オレの知ってる女っつーと限られてくるもんなぁ…まさかKUORAさんにホタテビキニ着せて連れ回す訳にもいかんし……)


『タム子みたいにアホっぽくて楽しい女が身近におったら一番いいんやけどな』


『タム子さんだって実際会ってみたら全然違う女性かもしれないじゃないですか。よっぽど知ってる人じゃないとダメですって』


(ん~…そんなもんなんかなぁ……つか、あのタム子にさえ警戒するって事は、よっぽどトラウマになってるんやろなぁ…前回の事が。それよりタム子って、実際会ってみたらやっぱりあのままとはちゃうんやろか?オレのイメージでは年がら年中キャミと短パンで顔中を子犬に舐められたヨダレの跡でテカテカにしながら凄い動物臭を撒き散らして、片手には常に瓶ビール握りしめてる様な姿が思い浮かぶんやけどなぁ…。ま、アイツはアイツで毎回あちこち遊び回るので忙しいやろうし、なかなか会うのは難しいやろけどな)



京ちゃんのダメ出しを左耳で何となく聞きながら、頭の中では泥酔したイサオとタム子が浅瀬のウニを踏ん付けて悶絶しているシーンを想像しているオレ。
木陰のハンモックに揺られながら是非観戦してみたいものだ。
本物の宇宙人と脳内乙女座宮のスペースバトルを。






それから約3ヵ月後…






『うわ~、ヨシキさんも行くんですか?い~な~!アタシも行きたいな~』



ウチの店から徒歩2分の場所に住み、予約で忙しい時などは無理矢理バイトをお願いする事もあるアヤ坊。

彼女は一年半くらい前に就職で広島から出て来たのだが、引っ越して来た日にたまたま通りかかったウチの店に家族で来て以来、それからずっとオレ達ファミリーの一員として店の残り物を持ち帰ってきた(←これホント)。
意外にも京ちゃんやイサオ、それにヨシキちゃん達よりもウチの店ではデビューが早いアヤ坊。
そのおっとりとした人懐っこい性格は、言ってみればみんなの可愛い妹分という存在である。



『え、マジで!?おいでおいで!もしホントにアヤちゃんが来れるんなら、その連休に合わせて出発出来るようにしてやるし』


『ホントですか~!?じゃあ休みの日が決まったら順さんにすぐ言いますね~♪』



思わぬところから突然参加が決定した花一輪だが、いくら用心深いトラウマキャプテンでもアヤ坊なら話は別である。



『あ~、でもアタシが参加したら京様が嫌がるんじゃないですかね~?だって女と旅するのは嫌なんでしょ~?』


『大丈夫大丈夫。アヤちゃんが参加するかもって言ったら、「あ~、アヤちゃんなら全然大丈夫ですよ」って上から目線で言ってたから』


『ホントですか~!?キャー嬉しい♪アタシ、なるべく順さんと京様のお邪魔にならない様にしますから~♪』


『…………』









とにかく呑もう、今夜は。









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アヤ坊もアメブロやってます。
【ふっくん、毎日幸せですよ。】
で検索してちょ(←いい加減貼り付け覚えろ)。


第一回は二人、第二回は四人、そして今回は入れ替わりがあるものの総勢で五人と、回を追う毎に何故か参加メンバーが増えて行くこの旅なのだが、仕事の関係上仕方なく三泊四日という強行軍で参加する事になった二人の新メンバーをここで紹介しておきたい。



まず最初に紹介するのは、この間の二周年の時に書いた記事でウチの店に虫よけネットを取り付けてくれていたヨシキちゃん。

彼はその熟練山伏の様な見た目とは裏腹に、ウチの店の中でも1・2を争う礼儀の正しさを持つ所に定評があるのだが、残念な事にいい歳こいてとにかく女っ気が無い。

仕事はちゃんと真面目にしているし(建設業)、しかも一応社長である(一人だけど)。
それに加えて性格は温厚で、土建関係にありがちな酒乱でも無い。
んじゃ年齢的にキツイところまで来ているのかというと、学年で言えばオレより一つ上なだけで、出会いの場さえあればチャンスはいくらでも転がっているはずだ。
ビジュアルだって背は高いし、普段毎日着ている現場の作業着さえ赤ラメ入りのスパンコールジャケットに替えれば、北新地辺りのインチキマジシャンよりは説得力があるだろう。糊(ノリ)の効いた立て襟のカッターシャツにロングのサロンでも纏(まと)ってシェーカーを振れば、そこら辺のバリスタ兄ちゃんなんか話にならんほどサマになるだろうし、キャバ嬢としてのピークを過ぎた事を自覚しながらも、ホストに貢ぐ癖が抜けない自分の将来が不安になっている女達の相談相手としては、これ以上ピッタリのオッサンもそうそういるもんじゃない。



じゃあ、何がダメなのか?



オレはこれまでにも何度かヨシキちゃんに女を紹介しようとした事があるが、返って来る言葉は山口さんちのツトム君並にいつも同じなのである。



『面倒臭いし、今は一人がいいんですよ』



ま、その気持ちは分からんでも無いし、オレだって結婚願望なんてこれっぽっちも無い訳だから人に無理強いする訳にも行かない。


が、ヨシキちゃん…


アンタ、周りをよく見てみろ。
ヤクザまがいの自称紳士とか、雨上がりの雑草に溜まってる水滴を舐めて生き延びてそうな両生類とかそんなんばっかりやないか。
つか、揃いも揃ってオッサンばっかりで遊んでへんと、たまには女でも連れて色気出せや!そやしオレ達にはいつもネチっこいホモ疑惑が付き纏うねん!








という訳で本人達の意向は全力で無視する事にして、ついでにオレのファミリーでもある恵まれないオッサン達のためにここで彼女募集のお願いをさせていただきます。





【由紀(ヨシキ)】


性格:温厚

趣味:エロ動画鑑賞、イサオいじめ、トルエン収集

特技:防虫ネット設置

尊敬する人物:ミツコ

好きな食べ物:流動食




【シマ】


性格:ヤクザ

趣味:ひき逃げ、待ち伏せ、日本刀収集、半殺し、コンクリート風呂、ピグライフ

特技:秒殺、暗殺、撲殺、ピグライフ

尊敬する人物:八代亜紀

好きな武器:出刃包丁




【ヨネ】


性格:病気

趣味:詐欺被害

特技:記憶喪失

尊敬する昆虫:ナナフシ

好きな食べ物:親指の爪

苦手なインテリア:虫コナーズ










ご応募お待ちしております。





さて、主役の京ちゃんもさる事ながら、シリーズ第二弾で圧倒的な存在感…というか、ある種ゲテモノ的な意味合いで一気にブレイクを果たしたこの男。
そう、イサオである。



普段から何を喋っているかイマイチ分からない上に、酒を呑むと翻訳担当の京ちゃんでさえ8割が解読不可能になるというややこしさを兼ね備えており、更には残りの2割が根も葉も無い嘘を超えた狂言であるという特異な悪癖を持つ男。

ヤツを知る者はその驚異の生態から、ある者は狂言師、またある者は狼中年、そしてある者からは宇宙から来た壊滅ウイルスと呼ばれ、ウチの店に夜な夜な集まってくるゾンビの様なダメ人間達の間でのみ恐れ慕われている。


ヤツという人間を一言で表すなら「底無しバカ」。
日本の歴史やブラックミュージックの一部には詳しいが、それさえもよくよく問いただしてみると話のあちこちからボロが溢れ出て来るといういい加減ぶりで、そんな厚顔無知を超えた知識のひけらかし方から、オレの中では近々本気で脳の精密検査を受けさせようと考えているほどだ。誰か特殊な動物実験を行っている研究所を知っていたらすぐに連絡をくれ、頼む。



ま、こんな風に正直な事ばかり書くとイサオの事だから酔った勢いで例のミッドナイト・テロ・メール攻撃を仕掛けて来る恐れがあるので、ここら辺でイサオに最近起こったいい話もしておこう。



え~~~~~~~~~~~~~っ…………と……………………無いな、スマン。

あ、そういえばこの前、オレが風邪でぶっ倒れていた時に気遣いのメールが届いてたな。代わりにそれをいくつか紹介する事にしよう。



【お元気ですか?あにち僕もようやく熱が微熱にあの日、順さんに帰れ言われた日は熱38,7度ありましたわ次の日病院に行きさすがに看護婦に!すいませんもう待てないです!言いました】


【兄貴すいません僕くちんがうつしたんですね】


【ピピ人だす。おもんなー?】


【(^O^)/もーよ、!寝不ターミネーター】



良識ある読者の皆さんに一つ聞きたい…


具合が悪くて寝てるところに、こんなメールが大量に送られて来たとしたら、あなたなら一体どうする?



更に今回、オレはイサオが17日からなら旅に参加出来ると言って来たので、新メンバーが帰国する前夜にヤツが泊まるカオサンの宿に迎えに行き、嫌々ながらもオレ達全員がそこに泊まれる様に予約を頼んでおいた。
そして翌日には帰国する二人をスワナプームまで見送りに行き、オレと京ちゃん、そしてイサオの三人はカンチャナブリーに向かうため、現地では日本人宿として有名なゲストハウスのエアコン付きドミトリー(三人部屋)までネットで予約済みなのだ。
ところがこのバカは一体何を考えてるのか知らんが、先日ウチの店に現れた時にこんな事を話し始めたのである。



『ネネネネネ…』


『何て?』


『ジュジュジュジュ…さん、ネネネネネネットでチケット見てたらら、チョチョチョちょっと日にちずらしたら安いんれすよ』


『そやけどオマエ、もう発券してあるんやろ?チケット。こんだけ日にち迫ってたら、もう変更出来ひんのとちゃうか?』


『ででで、出来るんですろ。乗り継ぎでけりょ、ああああんまり時間も変わらない…スね』


『そりゃ別にかまわんけど、それやとオマエ、その頃にはオレと京ちゃんも西の方に行ってるやろうし、オマエの勝手な都合で一々空港まで迎えに行かれへんぞ?』


『どどどど、どうしたらいいしゅかね?』


『無理せんとカオサンで遊んどきゃエエやんけ』


『ジュジュジュジュ順さん達は、いつ頃バンバンするんしゅか?』


『何や?バンバンて…』


『いいい、いつ頃バンコクに戻るんしゅか?』


『分からんけど、23とか24日くらいとちゃうか?つか、オマエいつから来るつもりやねん』


『にににに、21でしゅ』


『ホナそれまでカオサンでアホな姉ちゃん捕まえて仲良くクラブ通いでもしとけ』


『そそそそ、そうしゅね』



言っとくが、オレは当初の予定を考えて既にカンチャナブリーのゲストハウスまで予約しているのである。
このアホがそこまで気付いているのかどうかは知らんが、昨日、オレとのメールのやり取りの中で、このドアホはこんな事を書いて寄越しやがったのだ。






【決まったか?】


【ゆっくりで行きます】


【日にちの事を聞いてんねん!】


【23~27です】












さ、ゲストハウスにメールして、部屋の変更してもらお。







つかパシリかよ、オレ。





『順さんがそんなにハマるんだから、よっぽど面白いんでしょうねぇ~。何か、ぶぉくも行ってみたくなって来ましたよおぉ…』



丁度一年前の今頃、毎度ながらわざわざ梅雨時に合わせた様な粘着感を織り交ぜながら、5杯目のビアジョッキを空にした辺りで呟いた一言。それがこのシリーズを始める事の発端になろうとは、その時は誰一人思わなかった。



(ま、どうせ酒の勢いで適当な事を言ってるだけやろ…)



もちろんオレだってそう思っていた。



大体、酒の席で盛り上がった話というのはそのほとんどが実行された試しが無い。

例えば誰かの送別会か何かで、



「近いうちに、オレの方から会いに行くよ」


「何かあったらいつでも連絡してね」



などと、その時は話の流れとノリだけで調子のいい事を言っても、時間が経てばそれを実行するヤツなんていうのはホントに限られた一握りの友人だけだ。それ以外の奴らに呑んだ時の話を別の機会に持ち出そうもんなら、「空気の読めへんやっちゃなぁ…」と鬱陶しがられて、以後呑みに誘うのも躊躇されるに違いない。

酒の席というのは、あくまでもバカ話をするための場であって、相手が真剣になるような話をする事はタブーなのだ。だから酒にのまれるタイプの人間というのは、翌朝には自分で穴を掘ってでも入りたくなるほど必ず後悔するハメになるのである。


他にも辛い時、悲しい時、大切な人を無くしそうな時、それらをひっくるめて、これからどうしていいのか分からなくて悩んでいる時…


そういう時にも酒なんか呑んじゃダメだ、特に夜中は絶対にやめといた方がいい。これは崇高な経験者による有り難いお言葉だ、身に覚えのある者は胸に刻め。





ま、そんな酒に関するお悩み相談室を開く気はサラサラ無いのでここら辺で止めておくが、とにかくこの年中引きこもって股間ばかりイジっている京ちゃんという男と一緒に、まさか本当にオレのサブテリトリーであるタイを旅する事になるとは夢にも思っちゃいなかった。


ところがこの”逆子de難産”を絵に書いた様な頭をしたロリコン教授は、その日から三日ほど過ぎた日の午後、



【先程、パスポートの申請に行って来ました。よろしくお願いいたします】



という様な内容のメールを、わざとオレが昼寝している時間を狙って送り付けて来やがったのである。
これがもしイサオなら、その日のうちに張り倒してでもツケを全額払わせるところだ。



(あら……コイツ、マジで行く気になったんかよ?)



このブログでも何度か書いた通り、京ちゃんという男は防波堤のフナムシ並に人見知りをする男だった。

実際、京ちゃんがオレの店に初めて一人で来た時などは、「席空いてますか?」の一言どころか、オレが気付かないうちにいつの間にか座っていたという現在(いま)のイサオくらい気持ち悪い出会いだったのだ。そんな化け物と誰が好き好んで海外を二人だけで旅すると言うのか?





それから一ヶ月後。


オレの言う、「めちゃめちゃ面白い」という言葉にマンマと騙された京ちゃんは、初めて経験した海外での旅で怒涛の如く押し寄せて来る嫌がらせの波に徹底的に打ちのめされながらも、持ち前の駄々っ子精神でそれらを何とか耐え抜き、そして、オレがいつも口にしている日本という国とはまるっきり違う文化の魅力を少しだけだが理解し、それをかけがえのない自分自身の財産に変えて帰って来た。
アニマル浜口なら娘を担いで5分以上は号泣しそうな熱苦しい話だが、それ以降オレはこの生パスタの様にフニャフニャしたフナムシ男を相棒として認めているのである。



そして、今年一月に決行された、シリーズ二回目の社会見学奇行。


タイはもちろんの事、自身二ヵ国目となるラオスでは、地酒で泥酔したイサオに深夜まで連れ回されるという苦行を味わい、翌朝には仮眠もとれないバス移動で地獄の悪路を7時間以上も揺られた。

三ヵ国目のミャンマーでは、前回から楽しみにしていたミャン飯屋で動物園のエサの様な物を食わされ撃沈し、新たに加わったメンバー達には幼子の様な理由で激しいジェラシーを燃やして大いにオレを困らせるという子供っぷりを発揮。
一時は旅の中止を考えたほどである。






そしてシリーズ第三弾となる今回の旅も、いよいよスタートまで残すところ後四日に迫って来た。



今回の旅のテーマは、前回と前々回には思う様にいかなかった「日本人宿に於けるアホパッカーの調査」というのも含まれてはいるが、着いた初日にはカンボジア入国する事もあり、基本的には真面目に社会見学をしてみようというのが本質にある。
時間的に無理だとは思うが、出来る事ならアンコールワットを観て感動するだけじゃなく、トゥールスレンやキリングフィールドにも連れて行って、そこで最近まで起こっていた悲惨な歴史を体感してもらいたいものだ。



また、アンコールワット観光の後は他のメンバーの都合により一旦バンコクへとんぼ返りになるが、その後はオレなりの「カンチャナブリーの歴史」を紐解いて京ちゃんに伝えてみたいと思っている。



<今回、初めてカンチャナブリーの戦争博物館を訪れて、戦時中に日本軍が行った残虐な行為の数々に、同じ日本人としてすごく辛い気持ちになった…>



などと、アホなアメ人が偏見テンコ盛りで撮った「戦場に架ける橋」をそのまま鵜呑みにしているめでたい奴らや、ガイドブックの1ペーくらいしか読んでないパッパラパッカーが書いたブログなんかを読んで世界を知った気になっている残念な奴らには丁度いい旅行記になるに違いない。





ま、何にしても今回の旅の主人公は京ちゃん、オマエだ。





その簾(すだれ)の様に伸びきった髪にイライラするのも後僅か。





カリメロ軍曹復活の日は近い。









JUNとバーベキュー-120706_2223571.jpg
イサオが近づくにつれ目線がおかしくなる元カリメロ軍曹。
ソンキッドがバリカンを握りしめて待っている。

つか正男......、お前ホントに日本人か?




早くもシリーズ第三弾のお知らせです。



来月に迫ってきた、「泰社会見学奇行Ⅲ」のツアースケジュールがほぼ決まりました。
今回は新メンバーとして、ウチの常連であるアヤちゃん、ヨシキちゃんも参加します。




【初日・7月15日】

タイ到着(スワナプーム)
am5:20

タクシーでモーチット・マイ(北バスターミナル)へ。バスにてアランヤプラテートへ直行。

カンボジア入国。目指すはアンコールワット。

カンボジア泊



【二日目・7月16日】

アンコールワット見学

カンボジア泊



【三日目・7月17日】

移動

バンコク泊



【四日目・7月18日】

アヤちゃん、ヨシキちゃんの二人が帰国。
ここでイサオ合流予定。

カンチャナブリー泊



その後、19~25日まではスケジュール未定。









今回は京ちゃんの念願でもあったアンコールワットを第一目標に、その後はカンチャナブリーの真実やコラートのアホ寺、ナコーン・パトムの奇人を訪ねるなど、Ⅰ・Ⅱを遥かに超えた壮大なスケールでお送りします。





バンコク滞在中は、可能な限り読者の方々ともお会いしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。








ま、ただでは済まんな、今回も。




photo:01




到着するちょっと前から電車が貸切状態になっちゃってたんでね、何かおかしいなぁとは思ってたんですよ。

つか、正月明けとは言え、一応世界遺産に登録されてる訳じゃないですか?
いくら何でも観光客くらいはそこそこいるだろうと予想してたんですけどね。


photo:02




まさかの観光客0。
そして、唯一の土産物屋と食堂も全て休業中。

あの~……とにかく周りから音が一切聞こえて来ないんですけど、もしかして鼓膜が消滅したんでしょうか?
ウトウトしてる間に。


photo:03




しょうがないから自販機でお汁粉なんか買ってみたんですけどね、なんせ外の空気がフリーザー並に冷え切っておりましたので美味いこと美味いこと。

つか何年振りだろ?
缶のお汁粉なんか買ったのって。


photo:04




んで、こんな誰もいない霊山に入ったって自殺志願者と間違えられるだけなんでね、周りの山をクルッと眺めただけで引き返す事にしました(何しに来た?)。
するとホラ、さすがは吉野杉が有名なだけはあって、そこら辺にある民家の庭にもこういう植木がチラホラあったりするんですね。

が、相変わらず人の気配どころか全く音が無いんですけど…
忽然と消えた文明なのか?この村は。


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で、トボトボ歩いてるうちにやっと村人を発見したんですけどね、不思議に思ったのは、何で田舎の人っていつもゴミを燃やしてるんですかね?
途中でゴミ収集車も見かけたけど恐ろしいくらいピカピカだったぞ。
使っとらんのか?一度も。


photo:06




駅3つ分くらい歩いてたら大きな川に架かる橋に出ましてね、見下ろしてみると地元のオバハンらしき人が一人で行ったり来たりしてました。
要するに、面白くも何ともなかったって事。


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腹ペコなんだけど、まともに食べる場所さえ見当たらなくてね、仕方が無いからこの駅に着いた時点でお散歩終了。
改札口横の駅員室に職員が一人だけいたけど、窓さえ開けてくれなかったんで切符を買った意味が無かった。
鉄ヲタには天国みたいな町だな、ココ。


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で、橿原神宮前駅まで戻ったところでようやく腹を満たせたんだけど、年末からソバばっかり食ってるオレってどうなのよ?
「ぜいたくソバ」ってネーミングもやっつけ仕事としか思えんぞ。
奈良県民には名付けのセンスという物が無いのか?


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やっぱりと言うべきか、ここでトドメのトラブル発生。



まず写真をよく見て欲しいのだが、何も考えずにトイレの中にある小便器に向かって用を足そうとしたら、何と背後から「キャーッ‼」という若いお姉ちゃんの悲鳴が。
オレも「ぬあああ~~~っ⁉」という叫び声を上げて慌ててしまい込みながら外に飛び出すと、外の表示には用のマークが…



なぁ、橿原神宮前駅の職員…



何の嫌がらせでこんな罠を仕掛けてるんかは知らんが、もう少しで公然わいせつ罪に問われるとこやったぞ。


それとな、帰宅するまでズボンの前がず~っと濡れたまんまで心身共に寒かった。




分かるか?
この情けない気持ちが。





次回は日本海見に行くわ、オレ。