空港ターミナルビル2階にあるATMの前で暫し呆然とするオレ。
それもそのはず。24時間利用可能な銀行ATMは一台しか無いにも関わらず、その一台とオレが持っているキャッシュカードの提携銀行がナンタラカンタラで取引出来ないとかふざけた事を抜かしやがる。
ま、十日間くらいなら手持ちの現金で事足りるとは思うが、それにしても一時期ながらアジアのハブ空港を目指すだの何だのとほざいておきながら、所詮関空なんてこんなもんである。そこにどんな下らない大人の事情があるのかは知りたくもないが、大体ローソンにATMが入って無い事自体おかしいよな?場所を考えろ場所を。
(ホンマに役に立てたへん空港やなぁ、そりゃみんなインチョンに持ってかれる訳やわ…)
成田や羽田に関しては全くと言っていいほど知識は無いが、ホントにこの関空というポンコツ国際空港に到ってはどうにかならんのかと利用する度にいつも思う。
観光産業に関しては(それだけじゃないけど)他国に比べて圧倒的に遅れを取っている日本。
それはただ単に宿泊施設や交通費に掛かる物価の高さが原因では無く、全ての旅行者が最初に訪れる場所である空港の使い易さも関係しているという事を政治やってるお偉いさん達は何にも分かっていない。
別にバックパッカーが旅し易い国にしろとは言わんが、そいつらはそいつらで困らん様な環境を作ってやらん事には、いつまで経ってもその時だけバブルな国の団体バカに引っ掻き回されて終わりだろうな。
しっかりしろ、橋下。新地の姉ちゃんとどんなプレイを楽しもうが知ったこっちゃないが、とにかく今はカジノだカジノ!
何ならオレにやらせろ、礼ならその新地の姉ちゃん回してくれるだけでいいから。


出国前の一時を、それぞれの想いで過ごす人々。
が、特に何も考えてない。
『よっしゃ、ホナそろそろ中に入っとこか。後40分くらいで搭乗時間やしさ』
一人だけだと持て余し気味な空港での待ち時間も、仲のいいメンバーが四人も揃えばあっという間に過ぎ去って行く。
後は機内で5時間ほど我慢すればいよいよタイ上陸だ。
『ん?どうした?』
手荷物検査場で何やら止められているのは今回で三度目の訪タイになる男、京ちゃん。
ま、この一年で三回もここに来てるんだから、一応職員による確認程度の作業だろう。
『いや、あの…』
『何や?どないしたん?』
見ると、ヤツが担いでいたバックパックの底の方から、職員がシャンプーセットらしきパックをゴソゴソと取り出してチェックしている。もしかして中身はマカエキスか?
『あ!もしかして容器のサイズか!?』
『みたいなんですよ…』
『ブハッハッハッハッ!何でまたそんな蒲焼きのタレ入れみたいな大きさの容器を三つも……ウハッハッハッハッハッ!』
京ちゃんからしてみれば、必需品などはなるべく家にある物でと思って詰め替えて来たのだろう。
が、どう見たってその容器はデカいやろ?鶴橋のおばちゃんが手作りしたチョジャンを詰める時くらいしか使わんぞ、どこで買うたんや?それ。
目出たく没収処分となり、その分荷物が軽くなったハナモゲラ。初っ端から細かいネタを惜しみ無く提供してくれる男である。

懲りもせず激マズ飯をパクつく没収生徒。
最後の晩餐はローソンのおろしソバ。
(ちっ…うっせえなぁも~…)
飛行機が離陸してから3時間半。
相変わらず乗り物では眠れない体質のオレが、ようやくウトウトし始めた頃に例の機内食という名のエサが配布され始めた。
メニューなど見なくても分かっている。ゴムの様なソーセージとダメなオムレツだ。
つか、誰が食うんだ?こんなもの。
『え…え~と、ク、クロワッサン…』
間近で見てみるとささくれの目立つ制服に身を包んだタイ人のキャビンアテンダント。
そいつの顔がマラリアにかかった羽賀研二みたいな顔だった件はこの際どうでもいい事だが、それにしても以前は簡単な英会話も聞き取れなかったハナモゲラが、こうやってクロワッサンなるセレブな食べ物を自力でチョイス出来る様になったのを見るとなかなか嬉しいもんである。
なんせ以前は、機内で使う英語と言えば「チキン」か「ビーフ」しか知らなかったレベルなのだ。
一年前なら、「飲み物はいかが致しますか?」と聞かれたとしても、「チキン」と答えていた京ちゃんが、今では立派にクロワッサンを注文出来るまでに成長した。
「チキン」さえも言えずに、「バード」と答えるイサオに比べりゃ英検2級ほどの価値があると言えるだろう。
(しっかし、みんなよく食うなぁ…こんなもん)

眠気を耐えながら、必死になって元を取ろうとする哀しい人々。
中には機内食のスマートな食べ方なんかを自慢げに語るヤツもいるがただのバカだろう。
オレから言わせりゃキムチを持ち込む韓国のおばちゃんと同じレベルだ。
ふと周りを見て吹き出しそうになっていた。
なんせ、さっきまでグーグーいびきをかいて寝ていた連中が、たかが2・3時間仮眠を取っただけだというのに、言わばそこを強制的に起こされて食べたくも無いクソマズ飯を寝ぼけまなこでパクついているのだ。しかも地上から何千メートルも離れた空の上でである。
考えてもみてほしい。
もしこれが機内ではなく自分の家だとしたら、これと全く同じ状況をみんなは耐えられるだろうか?
『ほらっ、いつまで寝てんのっ!もう朝3時なんだから、さっさと起きてご飯食べなさいっ!』
オレなら間違いなく家族とは墓を別にするだろう。
機内食…
こんなもんに能書きタレているヤツはロクなもんじゃない。

高度のせいもあるんだろうが、夜もあけてないというのに日の出が拝めた。
今考えれば、アンコール・ワットで見たやつより眩しかったな。
























