JUNとバーベキュー -36ページ目

JUNとバーベキュー

只今、新シリーズ執筆中

ガタンッ!!



『ぬおおお~~っ!!!!』



由紀ちゃんと京ちゃんが水飲み鳥の様にウトウトしている時、激しい崩壊音と共に決まって外れるオンボロシート。
こうなるともう狙ってるとしか思えんな、どっかにスイッチでも取り付けてんのか、ええっ?ポンコツ車掌。



『ブハッハッハッハッハッハッハッハッ!!あるある、オレも今まで何回もそんな目に遭ったよ。ウハッハッハッハッハッ!!』


『笑えへんってコレ、ああ~もう3回目やんかこれで~。何とかならへんのやろか?』



何とかしようとしても、何ともならへんのがタイの三等列車である。



タイ国鉄が使用している車両というのは、そのほとんどが日本国鉄時代に使っていた古い車両、要するにお下がりを使用しているのだが、その車両というのが昭和30年代や40年代に造られた物ばかりで、とにかくボロい。ボロいと言うよりゴミだ。
鉄道オタクからすれば垂涎の乗り物かもしれないが、そうじゃない者からすればとにかく不快なだけの代物である。



JUNとバーベキュー
無造作に積まれた花々。夢も希望も無い。




『あ、ほら京ちゃん。そこに山積みしてある花って、よく車のバックミラーなんかにお守りとして飾ってあるヤツを見るやろ?あれに使うヤツだわ』



オレ達が座っている席の隣に山積みされた無数の花。
こんなクソ暑い中の長時間移動でよく萎れないもんだと感心させられるが、日本と違ってタイは花まで強いのだろうか?



『おっ、一番上のヤツは蘭やないか。ウハハハ!こんなとこに新聞紙で巻かれて置いてある様なヤツが機内のお土産って知ったら、耳に飾ったりしてる姉ちゃん達もドン引きするやろうなぁ♪』



関空から出る便ではすっかり見掛けなくなったが、成田発のタイ航空なんかでは今もあるらしい機内で配られる蘭の花。

その可愛いらしさに記念に取っておく人も多いのだが、それが元々はこんな小汚い扱われ方をしていると知ったら誰も有り難がらないだろう。

スマン、ばらしてもうた。



ガタンッ!



『ああ~もう!またやんかあああっ!!』


『ウハッハッハッハッハッ!!災難やなぁホンマに。ウハハハハハハ!』



目の前で繰り広げられる他人の不幸に爆笑するオレ。
が、そのツケはカンボジアの安宿にてキッチリ返って来る事になる。






『よ~っしゃ!ついに着いたぞ、アランヤプラテート!』


『ふあ~~っ、やっと着いたかぁ…』


『…ぃしょっと。ふう…意外とピッタリで着きましたね、7時間は覚悟してたんですけど』


『わーい♪着いた着いた~♪』



JUNとバーベキュー
やっとの思いで到着したアランヤプラテート。
日本を発ってから12時間が経過中。




予定時刻通りの到着に、やや呆気に取られるキャプテン婚活。
そりゃそうだ。以前、オレと京ちゃんは2時間で移動出来るロッブリー~アユタヤー間を、8時間以上も掛けた苦い思い出がある。
それもこれも全てタイ国鉄といういい加減な組織のせいなのだが、今回は空港からここに到るまで万事順調なのだ。

これはおかしい、何か絶対にしっぺ返しが待っているはずだ。



『パイナイパイナイ?(どこへ行く?)』



アランヤプラテートのプラットホームで一服していると、「今しかない!」とばかりに声を掛けて来るトゥクトゥクの客引き。
ま、一日に二本しか無いバンコクからの列車だ。これを逃すと、次は夜到着の列車しか観光客を乗せて来ないのだから、実質的には今しか稼ぐ手段が無いとも言える。
そう考えると、タイの田舎というのは本当に仕事に困る場所である。



『国境』


『4人だな、200バーツでどうだ?』


『アホか』


『じゃあ180バーツ!』


『ふざけんな、行こ』



絵に描いた様なぼったくりオヤジを無視して駅を出る。
と、そこにはやはり当然の如く同じ様な連中がウヨウヨしているのだが、何と言うかこう…アユタヤーなんかと違い、客引きにもクドさが無いと言うか、とにかく交渉が軽すぎて肩透かしを喰らったような気分になるのだ。



(来るならもっとガツガツ来んかいっ!)



カンカン照りの太陽の下、トゥクトゥクの交渉ごときでいつまでも時間を無駄にするつもりは無い。
が、そこを折れてまで利用するほど寛容なオレでも無い。
駅から国境までの距離はトゥクトゥクで約10分。歩けん事も無いと感じるかもしれんが、普通の人なら確実に熱中症になるだろう。



『80バーツ!80バーツで行くからっ!』



駅を出た時からやんわりと尾けて来ていたオッサン。
よほど客が無いのだろう、4人で80バーツは悪くない。



『嫌だ』


『いくらならいいんだ?』


『60』


『んな無茶な!ガソリンだって値上がりしてるんだぞ!』


『それじゃあサイナラ』



オッサンを無視して、国道を走るトゥクトゥクをつかまえようとするオレ。
が、こんな田舎では流しのトゥクトゥクなんてそう滅多には走ってないらしい。



『分かった!じゃあこうしよう。60バーツでいいから10バーツはチップとして俺にくれ!な?いいだろ?頼むよ!』


『ウハッハッハッハッハッ!何じゃそりゃ!?まあいいか、その返しはなかなか笑えるな』



JUNとバーベキュー
田舎のトゥクトゥクというのは割かし座席が広く見える。
が、乗ってみればこの有様。




基本的にオレはコイツらの事が大っ嫌いだが、こういう面白くも正直なヤツというのは大好きだ。


「チップとして10バーツ…」


別にチップだろうがそうじゃなかろうが一緒なのだが、こんなアホみたいな返しを思い付くヤツに根っからの悪人はいない。






『さ~て!いよいよ本日のメインイベント、歩いて国境越えやな』


『わ~い!めっちゃ楽しみ~♪』










何もかもが順調だった。





ここまでは。














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タイ側から望むカンボジア国境。
ゲートがアンコールワットを模してあるが、要するにそれ以外売る物が無い。








(う~~~~……んっ!………ぷはぁ~~あ~……)



席を立ち、途中の停車駅からなかなか発車しない列車を降り、プラットホームで思いっ切り背伸びをして身体をほぐすオレ。
あと何時間くらいなんだろう?少しくらい寝とかなきゃ身体が持たんのだが全然眠れんぞ、オイ。



『今何時?』


『ア~……ガーウモーン(9時)』



オレ達に席を占領された手旗職員の兄ちゃん。
そいつが仕事をする訳でもなく、ベンチに座ってケータイをいじくっているところを邪魔する様に尋ねるオレ。
つか、まだ発車してから3時間しか経ってないんか?まいったなぁもう…



JUNとバーベキュー
プラチンブリーの駅。何も無い。




(…あれっ?ここってプラチンブリーか?つーことは珍しく予定通りに運行してんのやなぁ……まてよ?プラチンブリーって、確かラミーさんの嫁さんの実家があるとこじゃなかったっけ…)



もし実家があったとしても無理矢理上がり込んで取材するつもりなんか全く無いのだが、それにしても人と人の繋がりが色んな場所で線になって行くのは面白い。
いつかやってみようかな?知り合いの紹介で巡る旅でも(←いい迷惑)。



(しっかし田舎やな~。駅前は割と開けてるけど、駅からちょっと外れただけで何にも無いやんか。そりゃこんな町に生まれ育ったら、デカいテレビだの何だのバカ買いしてしまうわな?他に娯楽も無さそうやし……ププッ……ブハッハッハッハッ!)



ラミーさんの記事に出て来る嫁の浪費癖、それとクレジットカードを目の前でちょん切った話を思い出しながら爆笑するオレ。
いやいや、失礼ながら奥さんの気持ちも分からんでもない。
だって、こんな田舎で育ったタイ人が、いきなり年相応の貯えがある外人と結婚した訳だ。奥さんの家系の経済状況はどうだか知らんが、タイによくある普通の貧乏ファミリーなら、国際結婚=玉の輿という図式が頭の中で成り立つに違いない。
相手の親だって、「でかした!これでワシんとこもしばらく安泰じゃ!」てなもんだろう。



バンコクに住むごく一部のセレブな華僑一族ならともかく、それ以外のタイ民族というのは基本的に貧しく、そして働かない。
こんな事を書くとごく少数の真面目なタイ人から猛烈に怒られそうだが、残念ながらこれは紛れも無い事実だ。オレは今までそんなタイ人家族を嫌と言うほど見て来たし、アユタヤーに住むバカ夫婦だって同じ様な事を言っていた。



『ジュン、あなたいつかタイに住みたいの?』


『うん』


『それは、タイで死にたいって事?』


『うん』


『タイ人と結婚して?』


『うん』


『結婚は止めといた方がいいよ、住むなら日本人の奥さんと住んだ方がいい』


『………何で?』


『タイ人は良くない』



この奇行シリーズの第一部でも書いたが、アユタヤーに住む友達夫婦、特に嫁さんの方は、同じ民族でありながらとにかくタイ人というものを全く信用していない。というか、嫌っていると言っていい。



『お酒を飲めばすぐトラブルを起こすし、酷い時はピストルだってすぐに発砲する。タイの男は仕事もしないで一日中ダラダラしているだけだし、結婚したって半年も経たないうちに女を作る。今は日本人も簡単に離婚するみたいだけど、タイに比べたら全然マシだと思うわよ?』


『そりゃタイの男の話やろ?』


『ジュンはまだ何にも分かってない。悪い言い方になるけど、タイ人にとっての娘っていうのは、生まれた時から商品と同じなの。日本人からすれば大した金額じゃないかもしれないけど、娘は結婚するまでの商品として大事に育てられるの。結婚に掛かる費用って凄いんだから…』


『ふ~~ん………』



そんな話を不思議な気持ちで聞いていたのが6年前。
今じゃすっかり当たり前の話としてオレの頭にインプットされているが、タイ人との国際結婚ってのは想像以上に難しい事だと今は考えている。



(ま、確かにそうかもしれんなぁ…。タイ人の場合、男だけバカって言うよりも、女だってそれに騙されてガキの頃から妊娠したりとかいう話をいっぱい聞くもんな。確かにタイの男って最初だけは極端に優しいし、アレにみんなコロッといってしまうんやろうけどなぁ……ま、そりゃタイ人に限らずなんやろうけどな)







ちょっと昔によく話題になっていた、タイのビーチボーイ。
アイツらにしたって、日本人女性とのロマンスを純粋な気持ちで想っているヤツなんて、1000人中1人いるかいないかくらいの割合だろう。



それと同じく、バンコクやその他の地域でも、旅行者が集まる地域で生まれる恋なんてものは、タイ人からしてみれば根っこに必ず「金」という考えが引っ掛かっていると思って間違いない。
残念ながら、後は新鮮なセックスが無くなった時、そいつらは必ず姿をくらまして逃げて行く。



「彼がタイに住んでいて、半年に一度会いに行っていたが最近連絡が取れない」



なんて話を未だに耳にする事があるが、こういうのはいつの時代も無くなる事は無いだろう。
それは男も女も関係無く、いつまでも騙されている方が悪いのだ。






(しっかしまぁ、こっちで結婚して何十年も一緒に暮らしてる人達ってのはスゲェなぁ…。つか普通の日本人感覚じゃ半年も持たんぞ、マジで…)






出発を待つプラチンブリーのベンチで、隣りに座る可愛いタイ姉ちゃんがヤードムを鼻に突っ込んでいる姿を見ながら、オレはそんな事を考えていた…













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延々と続く農村風景を、延々と眺め続ける由紀ちゃん。
3度目の京ちゃんは見向きもしなかった。
思い出せ!あの澄んだ気持ちを!




JUNとバーベキュー
売り子の商品をかっぱらい、勝手につまみ食いするヤクザ警官。
タイ国内に於いて最低の人種。








『列車なら腹が減ろうが喉が渇こうがいくらでも売り子が来るからさ、そこはバスとかと違って気楽でいいよ』



これはスワナプームに着いた時、オレが由紀ちゃんとアヤ坊に何気無く言ったセリフである。

が、それがまた裏目に出るのであった…



『おっかしいなぁ…全然来ぃひんやんか、今日に限って。いや、いつもは来るんやで?鬱陶しいくらい』



裏目な男…
そう、何を隠そうそれは正にオレの事である。

その事を自覚し始めたのはもうかなり昔の事なのだが、オレという人間は自分でも嫌になるほど間が悪いというか、やる事成す事全てにおいて、とにかく裏目になるパターンが多いのだ。
これは今回の旅でも期待を裏切らず後々出て来るのだが、風水や厄払い、その他諸々の占い関係など一切信用していない…というよりも、そんな物は詐欺くらいにしか思っていないオレでさえ、時々本当に恐ろしくなるほどの裏目が付いて回る。

そのパワーが絶好調の時にコインの裏表を当てるゲームなんかしようもんなら、10回やって10回言った方の逆が出るだろう。それくらい強烈なのだ。
で、ここでもやっぱりそうだった。

さっきまで辛うじて見掛けていた、飲み物系やルークチン(魚肉を丸めて揚げた物)などの売り子。
それさえもオレ達が座る席の一歩手前で引き返してしまうのだ、これには参った。



『小腹空いて来たな』


『ですねぇ…』


『さっきから飲み物とか干物とか身体に悪そうな甘いもんばっかりで、肝心のもんはサッパリ来ぃひんねんなぁ、もおお~っ』


『ですねぇ…』


『いつもなら腹立つくらい弁当だのガイヤーンだのと持って来るくせにさぁ、誰が朝っぱらから激甘タイ菓子なんか食うっつーねん。焼鳥持って来んかいっ!ボケがっ!』


『ですねぇ…』


『あっ!言うてたら弁当持って来よったわ。京ちゃん、ガパオに目玉焼き乗せたヤツ食べる?』


『要らないです…』



なぁ京ちゃん…
もしかして絶交したいんか?オレと。



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半分寝ながら人の話に相槌を打つお偉いさん。
この後バチが当たる。




『アヤちゃん、弁当食べる?』


『ん~…アタシ、ちょっとだけでいいです』



いくら可愛いアヤ坊でも、そのリクエストだけは困るのだ。
何せオレが一番嫌いな食事のマナーが、「ちょっとちょうだい」なのである。
「ちょっとコレ味見してみて」と言って食べるのは何とも思わんが、「ちょっとちょうだい」だけは百年の恋も冷めるどころか、そいつの人格さえ否定しかねない。
要するに、それをやられた日には男女問わずに相手の事を嫌いになってしまうのである。

オレの考え方はおかしいかもしれないが、ちょっとだけ食べたいなら最初から食わないか、買うだけ買って残せばいい。
どちらにしろ売手には収入が入るのだ。遠慮は要らん。



『ニー・アライ・カップ?(これ何ですか?)』


『ルークチン』


(んなもん見りゃ分かるっつーの!形が違うヤツはどんなんか聞いとるんじゃボケッ!)



車内を売り歩くだけで進路妨害なケツをした汗臭いオバハン。
そのオバハンから仕方なく定番の丸いルークチンを3本ほど買い、味など無視で胃袋に放り込むオレ。
ちょこっと食いならこういうのが一番だ。



『何ですか?これ…』


『由紀ちゃんは初めてやもんな、こっち来てからの食いもんは。これはルークチンって言うて、魚肉の天ぷら。さつま揚げと思ったらいいよ、あんまり美味いもんじゃないけどね』


『何で美味くないもんを買うんですかぁ…』


(京ちゃん、アンタも小腹空いたって言うたよな)


『モゴモゴ……うん…まぁ別にマズいって事ないっスよ…』


(なぁ京ちゃん…。アンタが持ってる七色の味覚に文句を言うつもりはサラサラ無いけどな、言っちゃ悪いけどこのルークチンはみんなから預かった予算とは別に、オレの自腹で15バーツ払って買ったヤツなのっ!文句言うならテメェで注文しろっ!その腹話術人形みたいな粘着タイ語でっ!)



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甘ったるいチリソースが口に合わなかったのか、無理やり京ちゃんにルークチンを食べさせようとする口裂け女。
確か弱点があったはずだが、何だったっけ?




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京ちゃんにフラれ、獲物を変更した口裂け女。
こう見ると縁側爺さんみたいだな、由紀ちゃんって。




(あ~あ、やっぱルークチンなんか食ったって気持ち悪くなるだけやなぁ、飛行機でも寝てないし。どうせならこう…一番無難な串焼き系をカオニャオと一緒にガッツリ食べて、サッサと寝てしまいたいとこやけどなぁ…一人で弁当なんか食ったら、絶対に”ちょっとちょうだいビーム”を受けそうやし……ん?)



珍しくオレの願いが通じたのか、それまで来ていた売り子とは明らかに違『うタイプのしわくちゃ婆さんが向こうから…ニュータイプなのか?



(あ、やっと来よったぞガイヤーン部隊が。今までどこにおったんやぁ?も~ぉ!お~い婆さん、積水ハウスのCM並にのんびりしてんと、こっち来い早く!)



3秒目を合わせたら3年分の寿命を吸い取られそうな婆さんからムーサテ(豚の串焼き)とカオニャオ(もち米)、それにビーフジャーキーみたいな干し肉を買い、やっとの事で食事らしい食事(?)にありつくオレ達。

つかアンタ達、食うなら食うで自分らで食いたいもん頼めよ。
給士専門の添乗員か、オレは。



『うん。このムーサテ、色は変に赤っぽくて気持ち悪いけど車内販売にしちゃ味は悪くないな。それにこのビーフジャーキーみたいなヤツもアテとしてならイケるよ。ただちょっと…ん~っ!硬…んあっ!硬いし、由紀ちゃんみたいに歯が悪いと辛いやろな。あ~もう、歯に挟まるのが鬱陶しいっ!』


『いや、俺全然大丈夫ですけどねぇ、このジャーキーみたいなヤツ。んで、このもち米めっちゃ美味いですやん!これ気に入ったわ~』


『アタシ、全部美味し~い♪』










なぁ由紀ちゃん…




アンタ確か、歯が悪いからってウチの店では柔らかめの軟骨さえ食わへんかったよな?それが何でいきなりこんな硬いもん食って平気な顔してるんや?
アンタもしかして隣に座ってる反抗期軍曹の変な影響受けてるんとちゃうやろな?


もういいっ、オマエらみんな絶交だっ!
フンフン!ミーンミーン!グスングスン!









JUNとバーベキュー
例のジャーキーをグルメレポートするお偉いさん。
治療中の歯と歯医者の姉ちゃんとの恋はどうなった!レポート提出しろ!





JUNとバーベキュー
寝ているところを無理やり邪魔するオレ。
ブハッハッハッハッ!
こんなブサ顔見た事ねぇぞ。ザマーミロ!ブハッハッハッハッ!





ガタッ…



『おっ、珍しく定刻通りに発車するみたいやな。つか、どうでもいいけど出るなら出るで鐘鳴らすなり合図するなりせえっつの』



タイ国鉄の始発着駅であり、バンコクへの玄関口とも形容されるフアラムポーンだが、そのくせ当然の様に出発が遅れるというのは一体どういう事なのか?
何でもかんでも日本と比べるのは、この時期夏祭りに行く浴衣姿の女の子がキャバ嬢みたいな髪型にしている事くらい愚かだとは分かっていても、こうも毎回タイ人のアホペースに付き合わされていると他に考える事など無くなってくるのである。



『わ~い!出発進行~♪』



ディーゼルの排気で真っ黒に煤けた駅構内。

そこで散髪する者、ひたすら寝る者、車両を洗う者、出発を待つ者、そしてそれを見送る者…

フアラムポーンではいつもそんな光景が繰り返され、湿度の篭った熱気の中にまどろんでいる。

その熱を帯びた空気は、最初こそタイを旅する者にとってのカンフル剤になるのだが、それはあくまでも一時的なもの。
言ってみれば、インドで奇しいハッパを吸ったガキパッカーが、サイケな状態で書き綴ったブログみたいなもんである。

衛生面・坐り心地・利便性と、どれを取っても話にならないほどダメなこのオンボロ列車の旅だが、それでも懲りずに利用してしまう訳は一つだけ。
そう、値段の安さと喫煙OKという事以外に理由は無い。



「あそこに何か2000バーツ的な事を書いてますけど、本当にタバコ吸っても大丈夫なんですかぁ?」



京ちゃんがそんな質問をしてから、早くも一年が過ぎた。
もちろん列車でタバコを吸う事は許されない。が、喫煙するタイ人にとって、列車の中で吸えない場所は客席だけ。
つまり、車両の連結エリアやトイレなどはそれに含まれておらず、そこでは乗客だけでなく車掌や売り子、信じられないかもしれないが警官や坊さんまでもが平気でタバコをふかしている。
何が信心深い仏教国だ、馬鹿馬鹿しい。



ま、そんなヌケ作一族が作り上げたルールのおかげでオレ達喫煙組は気楽な旅を満喫出来るのだが、あと10年もすればそれも無くなるかも知れないな。
オゾン層破壊の件で、先進国ではただでさえ規制が厳しくなっているディーゼルエンジン。
要するに、タイ国鉄が「汽車」から「電車」へと全面的に移行する日が来れば、今みたいなお気楽旅はもちろんの事、これまで続いて来た”バックパッカーパラダイス”のお国柄も一気に消滅するだろう。

ま、それはちょっと考え過ぎかもしれんが、とにかくタイ人にマナーや環境維持の話を理解させるのは、サトウのごはんをチンしないで食べるよりも難しいとオレは思う。

大体、環境の事を考えろだのポイ捨てを止めろだの、それを理解する頭を持ったタイ人を育てるには田舎の親から教育しなきゃ無理だ(それ自体無駄だとは思うが)。



例えば、今回の列車の旅ではこんな事があった…






『おっ?京ちゃん、アンタの後ろで、アンタ好みの可愛い女がこっち見てるぞ』


『キャ~本当だ~!すっごい可愛い~♪』



JUNとバーベキュー
オレのツッコミに対してこの表情。
どう思う?みんな。




「またロリネタですか…」とでも言いたげな表情をしながらも、その目の奥に「しめた!」という蒼い光を宿らせているキャプテン・ロリコン。

クリクリっとした大きな瞳と均整の取れた顔立ち。
将来この娘が隣に座っていた母親らしきオバハンみたいにならない事だけを切に願う。



JUNとバーベキュー
何とも言えない可愛らしさを持つ確信犯。
STOP!成長。




『うわ~、ホントに可愛いですね、この娘。何かお菓子無かったかな?』



彼女を見るなり、急に大阪のおばちゃんの如くアメちゃんを探し出すイワナ仙人。
やはりこの娘にはオッサンを狂わせる何かが既に備わっているのだろう。
つか慌てんな、由紀ちゃん。
洞穴に棲みついた幻の巨大イワナを目撃した釣りキチ三平だってそんなに慌てんぞ?しっかりせいっ。



成人してからの美的感覚というものは人それぞれだが、幼い子を見て可愛いと思える感覚は皆同じだ。
真に残念ながら赤ちゃんだってブサイクな子はブサイクだし、可愛い子は天使の様に可愛い。

世の中には自分の子供が世界で一番美しいと思っている親も多いが、これまた残念ながら他人から見りゃ親に似て可哀相と同情するケースが少なくない。
そんな残念ママや無念パパに朗報だ。



「みにくいアヒルの子」



これだけを信じて大事に育ててやって欲しい。
が、何も変化が起こらなくても、それはもちろんオレのせいではない。

スマン、正直で。



JUNとバーベキュー
ちょっと広がった鼻が可愛いと思い出したらタイ中毒。
もちろんこんな可愛い娘は稀だが。




『あのさ、こっちに来る時にオレが渡したオレオってまだ持ってる?』


『あーっ!そういやバッグの中に入れたまんまですわ…あ、あったあった。ハイ、どーじょ♪』



見掛け仙人・口調変人といった感じの由紀ちゃんが渡すオレオを、小さな手でワイ(合掌)のポーズを決めてから受け取るプリチー確信犯。
もしオレが中国僻地の人身売買に関わっていたとしたならば、間違いなく今の一撃で改心して全員本当の親元へ返すだろう。恐るべし、仏教パワー。



が、そんな可愛いエンジェルがほっぺたをチョコだらけにした後の袋を目で追いかけていると…



ポイッ



その娘の母親は、何の躊躇も無く娘の目の前で窓の外に捨てるのであった。
これがタイ人の日常であり、だからオレは「親から教育しないと無理」だと言っているのだ。







この娘も大きくなったら人前でほじくる様になるんだろうな、ハナクソを…











JUNとバーベキュー
ほじくるのに丁度いい由紀ちゃんの爪。
想像しただけで気持ち悪い。




JUNとバーベキュー
こちらは軍曹の右手。
常に何かを握っている様に見えるのは何故か?
あと、左手より太く逞し...
考えるのやめよ、気分悪くなって来たから。






『フアラムポーン』


『カップ』


ピッ!



これまでの旅同様、悪名高きスワナプームからのタクシーは、今回も全く怪しい気配を出す事無く走り出した。
しかも、行き先を告げた途端、「カップ(はい)」まで言える様になっているとは…。
「タイなんか行った事ないから分からない」という人には何の事かサッパリな話だろうが、これはこの10年程で、スワナプームに滞留している悪質タクシーに対しての厳しい規制が、少しずつではあるが形となって出て来ているのだろう。



『今回もいきなりメーター押しよったなぁ…。何か最近ずっとこの調子やしさぁ、ちょっと淋しい気もするよな?』


『えっ!?もしかして楽しんでる?そんなんおかしいし…』



助手席の窓から白々と明けて行く景色を眺めながら、昔の悪徳タクシーを懐かしんでいるとも取られないオレの言葉に驚く由紀ちゃん。
いや、確かにオレは懐かしんでいた。

5年前、このスワナプームでタクシーを利用しようもんなら、10台中10台はメーターを無視して値段交渉に入ったものだ。



「フアラムポーン」


「OK!500バーツでどうだ?」



その度にオレは氷の微笑を浮かべ、時にはゾマホンの様にブチ切れながら他のタクシーに乗り換える…その繰り返しだった。



(これも時代の流れ、か……タイも少しずつマトモな人間社会になって来てんのかなぁ…)



緊張感のカケラも無い旅の初日だった。
そう、少なくともこの時までは…



(ありゃ、これまたえらいスムーズに着いてもうたなぁ。始発までに、まだ大分余裕があるやんか…)



スワナプームで客待ちしているタクシーの運ちゃんというのは、時間に関係無く混雑していようがいまいが市内までは高速道路(有料)を利用したがるものだ。
当たり前ながら、これは下道を通るのが面倒臭いからである。

ところがこの運ちゃん。そんな素振りを見せるどころか、例の車内ラジオ大音量大会を開催する事もなく、至って快適・至って安全運転(バンコクにしては)で仕事を完遂したのだ(タイでは当たり前じゃない)、素晴らしい。
こういう運ちゃんには言われなくともチップを弾みたくなるのが人の情というものだが、それをするとまた元の黙阿弥だ。スマンな、お釣りの2バーツは取っといてくれ。



『うわああ~~い!駅だ駅だ♪』



もはや何を見て、誰に騙されても感動の嵐を巻き起こしそうなテンションの素直姫。
もし仮にアヤ坊をこの場に置き去りにしたとしても、半日以上本人はその事にさえ気付かないはずだ。
ホント、さっきから周囲を歩くタイ人の事を凶悪殺人犯の様な目で見ているイワナ仙人とはえらい違いである。



『まだ少し時間があるけど、始発ってのは人気があって混み合うからさ、とりあえず乗り込んで席取っとこか』



予想に反して既に到着していたアランヤプラテート行きのオンボロ列車。
そいつがホームにいる姿を見た時から、何となくだが嫌な予感はしていた。



(ぬあっ!!しまった~!席あらへんやんか…)



薄暗く、蒸し返す様な湿気が篭った三等列車の通路。
そこを祈る様な気持ちで端から端まで歩いてみるが、オレ達4人が一緒に座れる席など全く見当たらず、国境までの移動手段に鉄道をチョイスした事を早くも後悔し始める。



『え~っ…と、ここはどないなってんのやろ…?』



三等車両の最前列に、ポッカリと空いた四人掛けのシート。
そこには無造作に置かれた車内販売用のガイヤーン(焼鳥)や、作ったオバハンのハナクソが確実に入っているであろうタイ飯のプチ弁当などが並んでいる。



『××××××!!××××××!!』



三日は洗濯していない様な服を着た小汚いオヤジ。そいつがその席の前でどうしようか迷っているオレに向かって、「そこはダメだ!あっちに行け!」という風な意味合いのセリフを、偉そうな態度で投げ付けて来る。
オレは祈った。
一族もろとも不幸になれ。



『これって、座れなかったとしたらどれくらい立ちっぱなしなんですかねぇ…』



メンバー全員が出来れば知りたくないと思っている疑問を、駄菓子屋の婆ちゃんに粉末ジュースの値段でも聞くかの様な勢いで質問してくるカリメロ軍曹。
何とかならんのか?敵陣どころか味方にも糞をぶっ掛けるようなその天然さは。



『簡単には座れへんやろな。2時間か3時間…いや、下手したら4時間くらいは立ちっぱなしになるかもしれん。だって国境行きの列車やしな、旅行者には人気あるし、出稼ぎに来てる田舎モンも多いやろうし…』



無情にもそう答えたオレの言葉に、一瞬ではあったが表情が暗くなるアヤ坊。
由紀ちゃんに至っては、早くも監禁された岩窟王みたいな絶望オーラをMAXで噴出させている。
仕方ないよな、こんな湿度じゃ。



『おっ!ここって多分大丈夫なはずやけどなぁ?どうせバカ職員がサボるために置いてるだけやろうと思うし…』



最初に通り過ぎた最後尾の最後席。
その上に無造作に置かれた紅白の手旗を、溜まって来たイライラに任せて通路横に山積みしてある荷物の上に放り投げるオレ。
当たり前だ。オレ達ゃ金を払って乗ってる訳で、職員の休憩席を作るために乗車券を買ってるつもりは無い。



『大丈夫ですかねぇ…』


『知るかっ!』



”一応心配しました”的な京ちゃんの呟きに取り合っていられるほどオレは気が長くない。
オレ達は客、職員は仕事で乗車しているのだ。そいつらにとやかく言われる筋合いは無い。







『よっしゃ。ちょっと狭いけど、何とかこれで国境までの席キープやな』







強引に勝ち取ったオレ達の城。






が、この後、






仙人と軍曹の身に、予期せぬ災難が待ち受けていた事を、この時はまだ知る由も無かった。









JUNとバーベキュー
何とか席をゲットし、初体験の海外鉄道に興奮を隠しきれない素直姫。
対面で由紀ちゃんがずっと股間を見つめていた。




JUNとバーベキュー
オッサン同士肩寄せ合う二人。
が、狭いと必然的に身体の小さい方がこういう目に遭う。
もしそれがイサオだとしたら、オレなら間違いなく窓から投げ捨てるだろう。





フアラムポーン(バンコク中央駅)からの話に入る前に、あくまでも個人的にだがどうしても言っておきたい事がある。
何度も言うが、”あくまでも個人的に”感じている事なので、「そんな細かい事なんてどうだっていいじゃん」と思っているヤツは、庭のヘチマをタワシにする準備にでも取り掛かってくれ。
庭が無いヤツはベランダのポプラに水をやり、ベランダも無いヤツはロジックの続きにでも励んで当たらない懸賞を夢見てくれ。



どうしても言っておきたい事…
それは、スワナプームに到着してからバンコク市内に向かう時に”何がなんでも”バスを使う連中についてだ。
オレはいつも不思議に思っていたのだが、コイツらは一体何がしたいんだろう?



バンコク国際空港がドンムアンからスワナプームに移ってから何年経ったかはもう忘れたが、三ヶ月や半年、または一年以上かけて旅をする”ツーリスト”という名の社会不適合者や就職難民の貧乏っタレならともかく、たかだか一週間や十日、長くても二週間程度の旅で初っ端から交通費をケチり倒しているバカ達を見ていると、やはりこれはあのインチキ紀行超大作・「深〇特急」に感化された包茎軍団が、まだまだ世の中には根強く残っているという事を改めて思い知らされる。


大体、ドンムアンとスワナプームでは、空港からバスターミナルへのアクセス一つ取ってもかなりの差がある。
つまり今のパッカー達は、あのインチキ本を読んで何が何でもカオサンまではバスで行かなきゃならないといった妄想にがんじがらめにされている訳だ。
実際、何年か前に一人でタイに来た時はこんな事があった。
空港ビル1Fにあるパブリックタクシーの受付前で、アホみたいに延びているタクシー待ちの行列に一人突っ立っている時だった。



『すいませ~ん、日本人っスよね?』


『…はい』


『あの~、カオサン行きのバスってどこから乗ればいいかとか分かりますか?』


『バス?…あぁ、ここからシャトルバスに乗ってちょっと行った所にバスターミナルがあるから、多分そこから出てると思うんやけど。カオサン行きがあるかどうかは知らんなぁ…あそこにはもう長い事行ってないし』



絵に描いた様なチャラ男パッカーの二人組。
ピカピカのバックパックに高そうなスポーツサンダル。そして意味不明の早朝レイバンに、前夜の名残であろう捻りワックスでグリグリにした茶髪(後にタイでも間違った方向で大流行)は、機内で付いた寝癖のせいで大変な事になっている。
つか、やめときゃいいに何でこんなキチ〇イを相手にしてしまったんだろう?ネタコレクターなのか、オレは。



『え?こっちに住んでるんスか?』


『はぁ!?何で?』


『いや、何かそんな感じがしたし、普通にタクシーんとこに列んでるから』


『いや、この時間はタクシーくらいしか無いと思うんやけどな。バスは知らんけど……つか、タクシーも安いからみんな普通に使うけどねぇ』



その時はこのチャラ男が言っている意味がレイバン並に分からなかったが、少し話しているうちにコイツらの主張せんとする事が何となく分かって来た。

要するに、


「バスでカオサンに向かうのがパッカーとしての王道」


てな訳である。オレが毎回ガキパッカーをクソミソにコキ下ろしているのは、こういうバカがいるからだ。



『ターミナルに行ってみんと分からへんけど、こんな朝早くからあそこに行くバスがあるんかなぁ?ま、待ったとしても一時間くらいやろうけど。ほんじゃ』


『あーっ!あの~、もし良かったらタクシーをシェアとかしないっスか?三人だと一人幾らくらいですかねぇ?』


『いや、シェアっつってもオレはこのままアユタヤーに直行するんやけど。三人なら一人300バーツくらいかなぁ?』


『アユタヤーって、カオサンから大分遠いんスか?』


『…………』



ここまで極端なバカは後にも先にもこれっきりだったが、冷静に考えてみるとろくに下調べもせずに来るガキなんてのはコイツらの他にも沢山いるのかもしれない。
コイツらはつまり、日本の交通に関する便利さをタイにそのまま持ち込んで来ちゃっているのだ。それがそもそもの間違いなのである。


ま、それはそれで構わんしオレの知ったこっちゃないが、如何にも短期の旅行で来ている様なレイバン族までもが、「安い=クール」と思い込んでいるのが情けない。
こういうヤツらはクロントイとかフアラムポーンのスラムを見ただけで、「俺達日本人は恵まれているのが分かった」などと感慨に耽るのだろう。






そんな君たちに一つだけ言っておこう。







毎日ちゃんと学校行け。




『う~ん、聞いてたほど悪くはないと思いますけどねぇ。こっちはどう……ぬあっ!!うわあ~、こりゃアカンわ!ウエッ!』



間違ってもらっては困るが、別に由紀ちゃんは空港施設内にあるレンタル携帯屋のバケモノ姉ちゃんと肝試しの様な3Pを楽しんでいる訳ではない。

以前から、事あるごとに京ちゃんがネタにしていたタイの缶コーヒー。それを空港の外に出た早々、京ちゃんが由紀ちゃんとアヤ坊に飲ませるためにわざわざセブンイレブンで二種類購入して来たのだ。



JUNとバーベキュー



『ウハハハハ!めっちゃ甘いやろ?でもさぁ、このアホみたいに甘いコーヒーが慣れるとだんだん恋しくなって来るんよな、特に朝方なんかはさ』



そうなのである。

初めて口にした時は、その余りに強烈な甘さに周りにある物を手当たり次第踏み付けて蹴っ飛ばしてやろうかと思ったが、この東南アジア独特の熱帯気候に身体が慣れて来るにつれ、少しずつだがこの味を自然と欲するようになって来るのだ。
その理由に関しては文章などで説明出来るもんじゃない。実際に滞在した事があるヤツ、それもその中のごく一部の者だけが理解出来る現象だからだ。



『いや~、さすがにこれは慣れないでしょ~』


『いや慣れるって。特にクソ暑い日に移動ばっかりしてたら、段々と甘い物が欲しくなってくるんだわ。な?京ちゃん』


『ンフン♪』



由紀ちゃんとアヤ坊がしかめっ面で味見しているのを、嬉しそうに眺めるドブ川スイマー。
どうでもいいけど昼下がりのオカマみたいなリアクションはやめてくれ、気持ち悪い。



『しかし参ったよな、由紀ちゃんには』


『えー?何がですか?』


『だってさっき両替する時、本当はそれぞれみんな自分でやらせようと思ったのにさぁ、オレが「千バーツ札は要らんから、なるべく細かい札をくれ」って両替屋の姉ちゃんに言ったら後ろでしっかり聞いてて、「同じ様に伝えて下さいよ」やもんな。そういう所は異常に耳が利くんやもん』


『そりゃそうでしょ!だって分からへんもん』


『いや、だからそんなとこから自力でやっていった方が慣れるの早いしさ、そやし知らんぷりしとこうと思ってたのに、しまいにゃアヤちゃんまでそれに続くんやもんな~。ホント、タイミングいいっつーか抜け目無いっつーか…』


『エヘヘヘヘ~♪ツイてたツイてた♪』


『こらこら!アヤちゃんは今回通訳にもチャレンジしてもらわんとアカンねんから、両替くらいちゃんと自分でしていかなアカンで』


『全然無理無理~♪それは京様にお任せしますよ。だって、京様はタイ語喋れるじゃないですか♪』


『いや、喋れるったってそこら辺でジュース買うくらいなら問題無いけど、それはタイでの話やからな。オレ達ゃこれからカンボジアに向かうんやから、タイ語なんか全く役に立たへんで』


『え~、アタシ全然無理ですよ~♪無理無理~!イェ~イ♪』


『…………』



当初オレが立てた計画では、オーストラリアに留学経験のあるアヤ坊に、最初の三日間は無理矢理でも通訳にトライさせようと企んでいた。
というのも、アヤ坊というのは何だかんだ言いながらもやっぱり海外というのに興味があるみたいなのだが、それにしては過去一年間に渡って経験したはずの語学力というものが全くと言っていいほどなっていない。
ま、英語なんてものは日々使わないと忘れていくのが常なので、そこら辺をとやかく言うつもりなどサラサラ無いのだが、以前書いた海外留学に関する記事の通り、オレから言わせりゃせっかくのキャリアが勿体なく思えて仕方が無いのだ。要するに、親が出してくれた大事な金をドブに捨てている様なもんなのである。
これは由紀ちゃんやオレみたいに、学歴と言っても中卒としか履歴書に書けないような者からすれば、余計なお世話だが心底勿体無い話なのだ。だから今回の旅は丁度いいチャンスだと、アヤ坊が参加すると決まった時から目論んでいたのである。



(ホンマにもぉ~…。ま、由紀ちゃんとか京ちゃんと違って、いざとなったら嫌でも頼りになるやろうし今んとこはエエか。万が一オレとはぐれたとしたら、そん時切り札になるのはアヤ坊しかいいひんのやしな…)



万が一……一応ではあるが、最悪の状況を考えながらもこの時はまだ楽観視していた。
そう、本当にその時が来るまでは…









『よ~し。ホナ時間的にも丁度いいし、そろそろ行こか!フアラムポーンに』


『行こ~行こ~♪』


『あ~、何かまだ微妙に腹具合悪い…』


『…っし。ここからまた列車で6時間ってことは…多分7時間か…、ふうぅぅ~…』






目指すは国境の街、アランヤプラテート!





『あっ…ちゃあぁ~………』



慣れてる派の仮面一族の哀れな末路を見届けた後、さぁこれからという爽やかな気持ちで臨んだ入国審査場。
そこにに溢れ返る人の波を見た途端、オレは己の復習能力の無さを心から憎んだ。



(またやってもうた…。そやし飛行機から降りたらのんびり一服なんかしてんと、サッサとここに向かわなアカンって毎回自分に言い聞かせてるやんかっ!前回も前々回もアホみたく列んだっつーのに、何でオレはいっつも分からへんねん!女が出来る度に一文無しになる玉置浩二か?オレはっ!)



JUNとバーベキュー
入国までの長い旅路....
見たくない光景だ。



『うわぁ…めちゃくちゃ列んでますねぇ…。どれくらい掛かるんですか?これ』


『最低でも一時間くらい掛かるやろな、窓口が増えへん限り』



思ったままを素直に答えるオレの顔を見て、2秒後に卒倒しそうな表情で深いため息をつく由紀ちゃん。
無理もない。ここに到るまでに、オレ達は既に7時間以上も費やしているのだ。



『あの誰も入ってない受付窓口に係官が増えれば3~40分ってとこかな?前回は途中で増えたけど、今回はどうかなぁ…』


『はああああぁぁぁぁ………』



焼け石に水とはこの事を言うのか、フォローのつもりで言ったオレの一言を耳にして余計に深いため息をつくイワナ仙人。
まずい、このままだと入国直前にして秋吉台の鍾乳洞にでも行き先をチェンジしかねんぞ。
何かもっと希望に溢れた事でも言ったらんかい!オレ。



『でもさ、前回も結構行列が酷かったけど、それでも途中からは何とかスムーズに行くようになって、結局は30分くらいで通過出来たよな?京ちゃん』


『30分で出れましたっけ?いや、もっと時間掛かりましたよ』


『はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ………』


(コラッ!人がせっかく気ぃ利かせて話振ってんのに少しは合わせんかいっ!気配りのブラックホールかオマエは)


『まぁホラ、一時間くらい掛かったとしてもその分飛行機が早く着いてるしさ、国境行きの列車には充分間に合うよ、ハハハ♪』



実は全然余裕が無かった。
時刻は既に4時を過ぎている。
ここを最短で抜けたとしても、その時点で5時。それなら国境行きの始発列車が出るフアラムポーンまでは余裕だが、それはあくまでも「一時間」という最短時間を想定しての事だ。オレの中では、パッと見でだが一時間では到底通過出来そうになかった。



(くっそ~…、大体何やねん、このバカ職員達は。タイ人専用受付なんかほとんど利用するヤツいいひんやんか。そんなもんに二つも窓口開けてどないすんねんホンマに、アホかっ)



写真を見てもらえば分かると思うが、オレ達が最初に列んだ最後尾は入国審査場のエリアを遥かにはみ出た場所にある。
その向こうにはニョロニョロと蛇行する様に待機通路が敷かれているが、肝心の外国人受付窓口は6ヶ所ほどしか開いてないのである。行列の数はざっと数えただけで四百人、地獄だ。



(くっそ~、あのタイ人専用窓口の職員はソムタムの食い過ぎでキチ〇イにでもなったんか?ヒマならさっさとこっち側手伝えや!ハナクソほじくりながらあくびしてる場合かっ!オマエらいつでもどこでも男でも女でも鼻がもげるほどハナクソばっかりほじくってるけど、羞恥心っつーもんが無いんか羞恥心っつーもんがっ!!ふざけんなこのダメ人間合衆国があああああっ!!)



JUNとバーベキュー
待機線という物を全く理解していないバカ白人。
もしオレが職員なら即逮捕、即拘留、即妊娠。




【微笑みの国・タイ】


【アメージング・タイランド】


【アンダマン海の真珠・プーケット】


【古都・アユタヤー】


【北方のバラ・チェンマイ】



これらは全てアホな観光客を騙すために付けられたキャッチフレーズと主要観光地のサブタイトルだが…





オレから言わせりゃ全部まとめてハナクソ王国じゃこのバカタレがああああああああああああ~~~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!!





…ップハアッ!ハアッ!ハアッ!ハアッ!
お、覚えとけよ、呑気にリゾート気分で観光してるセレブ姉ちゃんとかタンクトップ小僧どもっ!

オマエらがビーチリゾートで美味そうに飲んでる和傘の付いたトロピカルカクテルに刺さったストロー!


滞在中に仲良くなった綺麗で華奢なホテルの受付タイ姉ちゃんと、別れの際に交わした熱い握手!


バンコクの夜景を独り占めした様な気分になれる、ホテル最上階に構えたレストランのテーブルに光る高級そうなナイフとフォーク!





あれら全部にアイツらがハナクソほじくった後のカスが付着してる確率は、パチンコに負ける確率より数倍高いんじゃボケエエエエェェェ~~~~ッ!!!!













さ、ビオフェルミン飲んで寝よ。











JUNとバーベキュー
カラフルなタイのタクシーを見て喜ぶ素直姫。
帰国したらイサオを緑色にしよう。
あ、それはアバターで見飽きたか。





『うわあ~~いっ!着いた着いた~、タイに着いたぞ~!う~れしいなっ、嬉しいなっ♪』



結局一睡も出来なかったオレをよそに、一年間のオーストラリア留学から帰って来て以来の海外となるアヤ坊のテンションは既にMAX。
これがもし京ちゃんやイサオなら、睡眠不足と疲労から来る急性精神症と見なして日本に強制送還するところだ。



『よかったなぁ、アヤちゃん』


『うん、よかった~♪』



何がどう良かったのかなんて事は、旅慣れして心が汚れ切ったおじさんには説明出来る訳もない。

が、それでも見ていて楽めるのは、海外旅行だろうが近所の散歩だろうがこういう風に何でも素直に楽しめるメンバーが隣にいる事だ。

考えてもみて欲しい。
言ってみればアヤ坊だってオーストラリアという外国に一年という短い間ではあったが居住していた訳だ。ちょいと性格のスレたヤツなら海外の国際空港に着いた程度でははしゃいだりしないだろうし、それどころか、「へえ~…意外と空港大きいね」などと、いかにも自分が先進国から来た”慣れてる派”のオーラを、到着直後に噴出させるバカだってたくさんいるのだ。
ま、イサオに至っては飛行機を降りてから一人でイミグレに行ける様になっただけで自分は国際人だと勘違いしているほどバカなのだが、とにかくこういう連中と旅の冒頭から一緒になると一気にシラケてしまうのである。



『わあ~、すごいな~!アレは何だろ?あっ、あの飾り付け可愛いな~♪』



ここ、タイに限らず、色んな国を何度も旅した人や、日本を離れて海外に暮らしている人なら分かるだろう。
その国に初めて訪れる知人や友人が、到着してからいきなり「ウエッ!何かめちゃくちゃ変な匂いしますねぇ」とか、「あ~、日本と違ってこういうとこがまだまだですよね」なんてほざいた日には、再会した喜びや一緒に旅する気力など一瞬で消え失せるはずだ。



(うん、やっぱ連れて来て良かったな…)



こういう気持ちを文章で説明するのは難しいが、要するにそんな部分がオレの言いたい、「良かった」なのである。



JUNとバーベキュー
目に映る物全てが楽しくて仕方がないアヤ坊。
忘れないでね、その気持ちを。



『あれ?由紀ちゃんとアヤちゃん、もしかしてまだ書いてなかったの?』



飛行機から降りて真っ直ぐイミグレに向かえない、オレを筆頭とした喫煙者達。
モウモウとした隔離カプセルみたいな喫煙室の中で、天使の様に可愛いアヤ坊と鍾乳洞に住むイワナ仙人の様に怪しい由紀ちゃんが広げているのは、例の出入国カードだった。



(しまったな。アヤ坊も由紀ちゃんも海外初めてじゃないし、機内で普通に記入するやろうと思ってたけど甘かったか。オレと京ちゃんが別々になりゃ良かったな…)



『ちょっと分からないとこがあったんで、後から聞こうと思って書かなかったんですよ。泊まるホテルとかは何て書いたんですか?』


『いや、そんなのどこでもいいよ、別に調べる訳じゃないし。心配ならオレと同じ事書いときゃいいから』



Address in Thailandの記入欄に、昔はいつも「ORIENTAL HOTEL」と書いていたオレだが、それが昨今はどうも図々しい気がして(←図々しい)、知っている名前のビジネスホテルを記入する様になった。
人間誰しも謙虚さを忘れちゃイカン。



(クックックッ……)



聞こえるか聞こえないかの微かな笑い声、それをオレは聞き逃さなかった。



(何じゃコイツらは…)



喫煙室の端に突っ立っている、同じ便に乗っていたとみられる日本人のオッサン三人組(と言ってもオレと変わらんくらいだが)。
ポロシャツにスラックス、頭に乗っけたグラサン、高そうなショルダーバッグ、そして左手には関空で買ったとみられるタバコの入った免税袋。
コイツらみたいな”慣れてる仮面”の皮を被ったバカ達が、チラチラこっちを見ながら何で薄ら笑いを浮かべているのかくらいは容易に想像が付く。



(クズが…シバいたろかボケ!)



どうやらオレ以外のメンバーは、この不愉快なゴミ民族の視線には気付いていないらしい。そこは良かった。
こんな不燃物連中に雰囲気をブチ壊されてたら身が持たん。



(オマエらみたいに空港とか海外限定でのぼせ上がるクズは全員オットセイに喰われて死ねっ!しまいにゃ「一つだけパクチー抜きで」って、いきなりタイ語で話し掛けるぞゴルァアアアーッ!!)



『出来た~っ♪』



アヤ坊と由紀ちゃんが書いた出入国カードを横からチェックしてやるカリメロ軍曹。
睡眠不足なせいもあるが、例のねっとりした口調で何やらボソボソ呟いているがどうやら無事記入し終えたようだ。
成長したな、ロリコンハナモゲラ。






『さて、ほんじゃそろそろ行こうか、イミグレ混んだらかなわんし』


『行こう行こ~う♪』


『あ~、ほとんど寝れへんかった~』


『…∂÷△………ぷす~…』






軍曹が何をゴニョゴニョ呟いているのは分からんが、とりあえずそれぞれが気合いを入れているのだろう。

よしっ!ここからいよいよ奇行のスタートだ。オレもカリカリしてないで思いっ切り旅を楽しむぞ!








『……れっ?〇〇さん、ここは帰りの便の記入欄ですよ?』



喫煙室を出る直前、例の不燃物一族の一人が入国カードに出国時の便名を書いていたらしく、慌ただしく確認し合う”本当は慣れていない”人達。






とりあえず帰国した方がいいよ、オマエらは。









JUNとバーベキュー
到着早々何かを引っ張り出して極秘会議を始めるイワナ仙人。
バイヨーク・スカイでも解体するつもりだろうか?



JUNとバーベキュー
と思ったら、出入国カードがまだ未記入だった。
そういや由紀ちゃん、アレに記入する職業のとこに何て書くかずっと悩んでたもんな。
Hermitでいいんじゃねぇか?仙人って意味だけど。



JUNとバーベキュー
ようやく書き終えたアヤ坊。
よかったなぁ。さ、行こか♪




どこの航空会社でもそうだが、機内に入る時には「Hello!」とか、「こんにちは」とか、搭乗口の所で笑顔の乗務員が挨拶をしてくれる。タイ航空なら「サワディー・カー」だ。


この人達に対して無言で(しかも目線をそらしながら)会釈する人もいれば、完全にシカトを決め込んでいる人もいる。オレはこういうヤツらがいつも我慢ならない。



(何を格好付けてんだ?テメェは)



とか、



(格好付けてんじゃなくて照れてんのか?なら重要な事を一つだけ教えといてやる。照れても全然可愛くねぇぞ、オマエのツラは)



なんて思ってしまう。


確かにアレの対応は難しい。
「あ、ども」では知り合いみたいだし、「チワー」では酒屋みたいだし、「今日は一つよろしくお願いします」では公園の将棋オヤジみたいだ。気持ちは分かる。



ただね、飛行機に乗る時だけ妙に”慣れてるフリ”をするバカが多過ぎるよな?今も昔も。
あれは何でなんだろうか?



人は普段、市バスに乗る時にいちいち妙チクリンなテンションでバス停に立ったりしないし、バスに乗る前に近所のスーパーでアレコレと土産物を物色する事も無い。


人は普段、地下鉄に乗る時にいちいち日比谷線の事を「HL」なんて英語の頭文字を取って略さないし、地面に潜る前にサングラスをかけたりしようとは思わない。


人は普段、新幹線に乗った時に車内販売の姉ちゃんには当たり前の様な顔をしながらビールのお代わりを頼もうとは思わないし、弁当のパッケージを見ながら「マスノス~シ」などと変な発音でリクエストする事はない。



では、人は何故飛行機に乗った時だけ思考と行動が狂ってしまうのか?

オレが思うに、これら全ては、「オレって飛行機に慣れてるんだからねっ!」という下らないプライドと、「アタシだって何回も乗った事あるんだからねっ!」といった必死極まる見栄がこういう事態を引き起こすのだ。そうでなければ飛行機の時だけに限って、男も女もあんなトンチンカンな格好をした連中が湧いて出て来るはずが無い。



機内に於いての”我々は飛行機に慣れてる大会”に関しては更に酷い。



指定された座席に座るやいなや、手提げバッグの中から取り出したペラペラのスリッパを素早く足元にセットし、履いていた革靴は既に座席の真下辺りに仕舞い込んである。
片手には搭乗口でいち早くゲットしたスポーツ新聞、10秒後にはヘッドフォンまで装着したりと、”我々は飛行機に慣れている大会”の出場者は見ていてとにかく忙しい。

コイツらの生き甲斐というのは、とにかく横に座る”慣れてない部族”に対し、自分達”慣れてる派”の先進国ぶりを大いに見せ付ける事にある。要するに性格が悪いのだ。


慣れてない部族にとって、機内にある物は何でも珍しく光り輝いて見えるから、座った途端に何でも確認する。
前の座席に挟まれた機内雑誌や免税品リスト。
これらはほとんどが英文で書かれているため100%読めないのだが、そこに現地の秘島やオランウータンの写真なんかが載っていると食いつく様に眺めている。

窓際の席をゲットした慣れてない部族は更に落ち着きが無い。
窓の陽さしを何度も上下し、それが少しでもスムーズに行かないと、(この飛行機で大丈夫か?もしかしたら台湾上空辺りで墜落するんじゃないだろうか?)などと不安がり、真っ暗な夜の闇に延々とUFOを探していたりする。


慣れてる派は、こういう人達を横目でバカにしながら素早くスポーツ新聞を開く(中には英字新聞なんて人もいる)。
さっきまで搭乗ゲートで散々ネットのニュースを見ていたくせに新聞を開く。
そしてそれに飽きた頃、今度は目の前にある液晶画面を手慣れた手つきで操作し始める。操作し始めるが、観たかった新作映画の字幕に日本語が無い。無い。無い。英語とスペイン語、それに中国語しか無い。読めない。飛行機には慣れてても日本語しか出来ない。仕方ない。ディズニーでも観るか。ザマーミロ。


てな感じで、頭から毛布を被ってサッサと寝てしまう。



その点慣れてない部族は意外に真面目で好感が持てる。

救命胴衣の装着方法が映像で流れると、これまた食いつく様な目でしっかり観ているのがいい。


なんせ命がかかっているのである。


他にあるだろうか?乗る前に万が一の事を想定して備える乗り物が。

豪華客船に乗る前に、沈没事故が起きた時の事を想定して、サメの撃退法なんかを爺婆にレクチャーすれば、翌年には間違いなく乗客0になるだろう。
ところが飛行機は違う。

爽やか且つ緩やかなBGMと共に、にこやかな笑みを浮かべたクルーが墜落する時の事を想定して救命胴衣の着衣方法を教えるのである。



「墜落する事もあるかもしれんばってん、そん時はこげん風にすればヨカとよ」



と言っているのだ。
考えてみれば恐ろしい話だが、これが現実なのである。






飛行機というのは、普段使う地上での交通手段に比べると事故の割合は圧倒的に少なく、最も安全な乗り物だと言われる。







が、事故ってしまえば致死率はそれらと比較するまでもなく断トツに高い。だから乗客は、乗る前に必ずこう呟く。





『死ぬ時は何に乗ってても死ぬからな…』





事故ってからの生存率、





オレが思うに、それは”慣れてない部族”の方が高い様な気がする。










JUNとバーベキュー
慣れてる派を装うミッドナイトサングラス。
ふと杉山清貴の近況が気になった。