最高落札価格は実に270万円(❢❢❢)
アナログ開眼で、ビートルズのレコードを〈怒涛のオヤジ買い
〉やった私だが、どうにも購入が躊躇われたアイテムがある
…通称〈Aデモ〉…
基本シングルカットの45回転ドーナツ盤で、Aデモは白地にデカデカとAの赤い文字をプリント
英国EMI社が関係者やお得意のレコード店に無料で配ったアイテムで、造られた数は闇の中 まぁ、eBayの出品も僅少ゆえ、せいぜい500枚程度か…と(勝手に)推測🤔
ビートルズの高価格レコードといえば、真っ先に〈プリーズ・プリーズ・ミー〉オリジナル・ステレオ〈ゴールド・パーロフォン〉が思い浮かぶ
とにかく高価で知られ、盤面が並クラスでも100万超え
が、同盤はLPで収録曲は14に及ぶ
一方でシングルはA面とB面の合計2曲
が、Aデモのオークション最高落札価格はデビュー〈ラブ・ミー・ドゥ〉で、実に270万円に達した…1曲 135万円かよ
ビートルズのシングル盤はおおむねAデモがあるが、いずれも高値でどうにも10万円は切らず
ゆえにいくら怒涛のオヤジ蒐集家( =私)といえど、2の足も3の足も4の足も踏む
もうAデモは〈なかった事〉と考え、一旦は諦めた
まぁ世の中、上には上が居る
〈ビートルズ レコーズ コレクション〉と銘打ったサイトでは、〈ラブ・ミー・ドゥ〉Aデモ始め極め付きのレア盤をほぼほぼ網羅
〈買った証拠〉に詳細な写真付で、編者は〈Yokono〉という日本人らしい。どこのどいつぢゃ
同サイトと比べれば吾がコレクションなど、物の数とも言えぬ
で、ズラリと並ぶAデモ見る内、〈1枚くらい、所有したいものだ〉…という危ない欲求が頭をもたげる
これは危ない。たった1回の筈が、2回、3回と重なる内、気づけば地獄に居る悲劇は、各方面で見られる
で、気づけばeBayで出品を待ち続ける自分が居た
出品があれば恐る恐る入札、当然のように負けた
その内、〈デイ・トリッパー/ウイ・キャン・ワーク・イット・アウト〉のAデモが〈Buy it Now (非オークション=即決価格)〉で出品された
うおお…男子たるもの()、ここは即断即決ぢゃ
…と、盲目的な激情に燃え、一方で〈デイ・トリッパー/ウイ・キャン・ワーク・イット・アウト〉の2曲が、吾が人生でいかなる意味を持つか、ふかい()哲学的思索に耽った
で、買った
勝ったとも思えず、むしろ欲望に負けた
気分
まぁ同盤の最高落札価格は(実に)70万円超えで、それに比べれば5分の1程度の金額
…だが、怖い
郵便事故とかあれば、立ち直れぬ
あるいは詐欺師じゃあるまいね
私は英国人出品者のアドレスをグーグルマップで検索、いちおう(地味な)商業コンプレックスと確かめ、(やや)安堵
我が家にはどれ位の日数で着いたのか…。
対面したAデモのラベルを指先でずっと撫ぜる(不気味な)私が居た
正直、音に期待はなかった
ビートルズのシングルは基本モノラルで、〈ビートルズは基本ステレオ〉派(=私)は音質に懐疑的だった 要は骨董品なのだ
またAデモとは一説に初回プレスから適当にスタンパーを選び、Aデモのラベルだけ貼ったもの…ゆえ他の(ふつうの)レコードと音質的に変わらぬと、ディスクユニオンの兄チャンも言った
別バージョンのシングルも未所有で、そもそも比較不能
という訳で、今日迄、検証せずに来た
…よっしゃ、やったろうやないか…Aデモ〈比較検聴〉
70万円 (??) vs 約2千円 シングル対決❢❢
で。雨の中とぼとぼ〈ディスクユニオンお茶の水駅前店〉に赴き、〈デイ・トリッパー/ウイ・キャン・ワーク・イット・アウト〉のUKオリジナル盤をお買い上げ …2,250円也
つい安いと思う(異常な)自分が居るが、14曲のLPとすれば3万1500円
…安い買い物とは、言えぬ
ともあれ
UKオリジナル盤をターンテーブルにのせる🍩
スタンパーから判断すれば、死ぬほど()後期の盤
うわわ、モサッとした音が団子のように聴き手に迫る…音が歪む印象もある 〈迫力〉ともいえぬ、ひでぇ音だ
で 厳かにAデモをターンテーブルにのせる🍩
鮮やかな朱のAが回転を始める…。
おおっ、細かい音もクリアに拾った、明瞭な音
こりゃ、Aデモの圧勝やね
…で終わったら、なにかつまらぬがゆえ、定評高い2009年のリイシュー〈ビートルズ イン MONO〉で〈パストマスターズ〉所収の〈デイ・トリッパー〉を聴いた🍩
近年プレスゆえいつものヴィンテージトーレンスのプレーヤーじゃ本領発揮出来まい…と考え、別のプレーヤー(ガラード)で再生🔊
ふむむ、鮮烈で迫力ある音だが、なにかAデモに比べれば面白味に乏しい気がする…労作とは思われるが
そのままUKオリジナルをかけた🍩
え…ええっ、好いね。好いよ
トーレンスのプレーヤー+英国デッカのカートリッジ+専用アームは、やや意図的に音を中域に寄せ、一方で高音過多な傾向もある、いわばアンチHi-Fiな志向性
で、ガラードは近年物オルトフォンのアーム及び米国フェアチャイルドのカートリッジで、まあ正攻法といえる
素直に鳴らしたUKオリジナルは、いい具合に角が取れ、中域のボリューム感も十分。疲れず、素直に楽しめる音だ🔊
これでAデモかければ、やや〈うるさい〉印象
ザックリ切った木の表面が笹暮だったような、フレッシュなのは疑いないが、青いというか粗いというか
これは、疲れる
ちなみにスタンパーは〈デイ・トリッパー〉がRLで、〈ウイ・キャン・ワーク・イット・アウト〉がA。まぁ超初期盤といえる
…で、思った
ビートルズのレコードは超大量生産が前提ゆえ、マザーやスタンパーの著しき摩耗を計算に入れ、摩耗が進むに連れバランスが好い音になるべく製盤された
これは大発見だ(…か
)
ビートルズ等EMIのレコードは〈両面1G〉が最初期プレスとされ、音が好いがゆえ珍重される
ちなみにスタンパーは〈デイ・トリッパー〉がRLで、〈ウイ・キャン・ワーク・イット・アウト〉がA。
私もそう思い、コツコツ1Gを集めたが、つらつら考えるに〈鮮烈過ぎる〉音にも思われる
それはそれでマニア心もそそられ問題ないが、レコード製造サイドはといえば、1Gからだいぶプレスが経過した頃を狙い、〈聴きやすさ〉のピークを置いた…とも言えまいか
ともあれ
シングル盤のモノラルで聴く〈デイ・トリッパー〉は素晴らしい
イントロのギターリフからギンギンに飛ばす
ポールのヴォーカルも迫力満点
中間部のギターソロは、シカゴブルースやサンレコーズのロカビリーも彷彿さす、すごい音 …ジョージこれほど上手かったか
実は〈デイ・トリッパー〉はボビー・パーカー〈ウワッチ・ユア・ステップ〉を真似た…と後年、ジョン・レノンが告白
同曲を聴けば、むしろジョンのセンスに感心
ビートルズのルーツはゴリゴリなブルースまたはR&Bにあった
〈デイ・トリッパー〉にハマった中学時代、〈かっこいい曲だが、もっとかっこよく成れぬものか〉と妙な感想を持った🤔
なにか〈淡白〉というか〈隙がある〉というか
がシングル盤のモノラル(AデモもUK盤も)だと、イントロのキリフから濃ゆい音で挑戦的に攻め、リンゴのドラムスがどかどかと闖入する辺、すこぶるクール
寸分の隙もない
こりゃ、斬新だ 断然かっこいい
ジョン・レノンが〈ぜったいデイ・トリッパーをA面にしろっ〉と言った真意が、十二分につたわる
で、たとえば〈赤盤〉でステレオの〈デイ・トリッパー〉を聴く👂
そりゃ、こっちの方が好い音
流石ジョージ・マーティンの手掛けたレコードだ
が、〈かっこいいか否か〉でいえば、モノラル
AデモかUK超レイトプレスか…は、もう主観次第だ
確かに音は異なる
が、異なる音のいずれか、優劣つけるのは主観
仮に〈客観的な優劣〉が在るならば、価格と(まったく)無縁な気がする
きのう見たYouTube(45rpm Audiophile)チャンネルで、著名レコード・エンジニアのバーニー・グランドマンが冒頭、〈デジタル・アナログ論争〉の事をこう喝破した
〈アナログか…デジタルか…結論を言えば、君の耳だよ。君の耳が好いと感じれば、それが良い音なのだ〉
すげぇ…バーニー。卓見
君の耳だよ…か。
が、どうにも〈私の耳〉は危うい
がゆえに検証は(きっと)楽しい
〈神の耳〉など持たずに生まれ、好かった