前記事の続きです。
前記事はタイトルと11日の仁川到着以降を、少し修正しました。
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まずはユヅ・ハビの記念写真から・・
『YUDURUⅡ』より
ブライアンの語りを続けます。
「私は今でも目をつむると、あの夢のような時間を思い出します。それはショートの前日となる15日午後の公式練習での出来事でした。」
「夜のメインリンクでの公開公式練習はキャンセルしたので練習と言える練習は、これが最後でした。」
その練習リンクには150人もの報道陣がつめかけ、多くのジャッジも、様子を見に来ていました。
プログラムの練習や4回転ジャンプ、最後の曲かけ練習が終わった時でした。
「すると2人が、一緒になって、チームブライアン名物の基礎スケーティングの練習を始めたのです。簡単なステップやクロスロールなどの交えたフットワークで、普段の練習でチームのセッションの最後に皆でおこなって基礎を磨きます。トップ選手が一斉に同じフットワークをする様子は、とても荘厳で美しく、私が一番好きな瞬間です。」
トロントでの二人ですが こういう感じかしら・・ You Tube のスクショ
「2人はこの基礎スケーティングを、なんとオリンピック最後の公式練習で行ったのです。ぴったりと足並みを揃えて、まるでシンクロするような美しい動作でした。」
何人ものジャッジが、他の選手たちの4回転ジャンプの練習よりもその2人の姿を見ていたと。
「『ああ、すべてが実を結んだ』と思いました。重要なのは、4回転サルコウや4回転トゥループ+3回転の連続ジャンプでもなく、美しいスケーティングなのです。」
「そして何より、あのとき2人は真の絆を結んでいました。」
ブライアンはここで、振り返ります。オリンピックシーズンだったから仕方ないが、2人の心理的な距離が難しいシーズンだった、と。
2人はお互いに、ブライアンやトレーシーがどれだけ相手に時間を割いてるか面倒を見てるかを見ている。ハビのほうが重圧を感じやすく気分が塞いで神経質になるらしく、ブライアンが気持ちを引き立てる。
一方の結弦くんは、オリンピックとなると周りのことばが耳に入らなくなり、コーチの言いたいことを理解させ落ち着かせなければばらなくなる。
「2人が違う状態になり、自分のことで手一杯になっていました。この1年はこれまでの6年間のどんなシーズンよりもそのアップダウンが激しく、2人が共に氷に乗る練習は大変でした。
(中略)2人は最高のライバルだけど、調子が悪かったり、怪我をしていたりの状況のなかでは、お互いを「良い刺激」として高め合うのは難しくなります。ですからこのオリンピックに向けては、それぞれが自分のことに集中しなければなりませんでした。お互いに敬意を抱いてますが、2人はまったくタイプの違う人間です。ユヅルは自分に期待し、ハビエルも自分に期待しています。ユヅルも勝ちたいし、ハビエルも勝ちたい。当たり前のことです。」
その2人が、なんとあの瞬間に一緒になったのです。
どちらともなく、『最後はいつものスケーティングを一緒にしよう』と目配せで合図して、スケーティングを始めたのです。本当に美しい光景でした。
2人はライバルですが、スケートで結ばれていました。そして私たちクリケット・クラブを、チーム・ブライアンというファミリーを、教えてきたことのすべてを、その基本的で簡単なスケーティングで代表していました。それは素晴らしいことでした。
ここまでの日々が間違っていなかったのだと思い、私は胸が締め付けられました。2人を見てきた日々の中で、最もうれしい瞬間でした。(中略)私にとっての忘れられない体験は、このときの練習の2人の姿でした。」
「わたしはどうしてもその気持ちを2人に伝えたくなりました。
『君たちは素晴らしいね。君たちは本当に素晴らしい選手で、信じられないようなスケーターだ。私たちは君たちにお礼を言いたい』
するとユヅルとハビエルがハイタッチをしたのです。私にとって、本当に忘れられないハイタッチでした。すべてのことが好転し、もう大丈夫だ、うまくいくんだ、そう確信する瞬間でした。
これかな・・? 『フィギュアスケートマガジン』2017-2018平昌五輪男子特集号 より
私は目頭が熱くなっていました。トレーシーも目が潤んでいました。ユヅルとハビエルの2人が、つらい練習を乗り越えてきたこと、人間的に成長してきたことを誇りに思ったからです。
困難なシーズンを超え、2人はお互いの存在を尊敬し、助け合うところまでやってきました。オリンピックの会場で2人がお互いの絆を確認し合ったこと。それが、チーム・ブライアンにとっての勝利でした。ショートの本番を前にして、私はもう世界で一番幸せなコーチになっていました。」
結弦くんは本番まで、追い込んだ練習なし、曲かけでは一度もパーフェクトの演技をしていませんでした。それでも、「ユヅルはリラックスしていて、自信もあり、何より落ち着いていました。」
「試合のためにエネルギーを使ってない」こと、そしてあの有名な記述「たましいの奥底まで降りて行き、エネルギーをかき集めていた」こと、ブライアンは確信めいたものを感じます。
そうして、結弦くんは、ついにパーフェクトな演技をします。
「すべてが完璧に調和した芸術でした。」
「彼が乗り越えてきた苦難を」「どんな逆境をくぐり抜け、どんな不安を抱えてきたかを」知っているブライアンは、大舞台で滑ったときの結弦くんの最高のショートの演技に圧倒されます。
そして、感動しながらも、「興奮している状態を心の奥にしまい込み」、スペインのジャージに着替え、トレーシーと待機しているハビのところへ行きます。「ハビエルは、落ち着いた表情をしていました。」
そうして、ハビも完璧な演技をして、2位につけます。107.58点。「正直なところ私は、ハビエルは109か110点が出るかなと思ってました。」でもブライアンは、二人がショート1,2位でスタートを切る夢のような時間を噛みしめました。
翌日、ショートの勢いのままフリーを向かえます。
「ユヅルは張り詰めたオーラを全身から出して集中します。」「1分いや1秒たりとも気を抜きません。」そのものすごい緊張状態のまま、ウォーミングアップが整うまで、(結弦くんのタイミングをつかんでいる)ブライアンは結弦くんと過ごします。
一方のハビのウォーミングアップをトレーシーが担当しました。リラックスしていて普通に会話もしたりして、2人のテンションが真逆になるので、本番直前は顔を合わせないようにさせます。
ブライアンは、6分間練習では、国旗のつかない自前のセーターを着て、フリー本番ではそれぞれの国のジャージを着ます。国籍の違うトップ選手を二人持つコーチは、忙しいですね。
フリー本番、結弦くんは、最後のあの鬼門ルッツをなんとか堪え、かなり疲れていたけれども、「ここからは奇跡の時間でした。」まるで「宇宙の力」によって」動かされるかのように「ユヅルは滑り切りました。」
「あれほどの苦難を克服した選手の、あんな素晴らしい演技を見たことはありません。40年フィギュアスケートに関わってきた私にも初めてです。」
ブライアンも、結弦くんも感動していました。そしていろいろな感情がありました。
総合得点317.85点。
ブライアンも同じでした。でも、感傷に浸っている時間はなく、涙をのみ込み、次に滑るハビのところへ向かいます。
そして、結弦くんが滑った直後のプーのぬいぐるみがほとんどなくなったところでハビをリンクに送り出す計画でしたが、それもむなしく、名前を早々にコールされてしまいます。
けれども、「私の心配をよそにハビエルは、ぬいぐるみの落ちている氷に、迷わず降りていきました。ハビエルの心は静かでした。(中略)7年間ハビエルの面倒を見てきたなかで、一番凛々しい顔をしていました。」
後半の4Sが2回転になった以外は素晴らしく、プログラムが途切れるようなミスはひとつもなく、総合得点305.24点。
昌磨くんが滑り終え、結果は結弦くんが金メダル、ハビは銅メダルになりました。
「素直に言わせてもらえば、ハビエルが銀メダルだったと主張したいくらい、ハビエルは素晴らしい演技でした。」と書いています。「とはいえ彼の性格から考えても、銅メダルで喜んでいるに違いありません。」
YouTube スクショ
一番乗りでユヅ・ハビのいるグリーンルームに駆け込んだブライアン。「2人とも目が潤んでいました。」トレーシーも加わり、ハグしあい、記念写真を撮ります。
「感動的という言葉はめったに使う機会はありませんが、こういうときに使えばいいのだと思うような時間でした。」
わたしにとってのいちばんのクライマックスは、なんといっても結弦くんの金メダルが決まったところですが、
ヒソヒソ・・・ ( ・・・) きっとここかな アナザストーリーズ 画面撮り
ほら・・ 泣いちゃった・・
罪なおとこだ~
もうすぐ表彰しきなの・・ 泣き虫くんバイバイ こちらは平昌OPの録画から
ハビとのハグ、ハビの表情、あの「you're so bad !! 」を、今では切なさごちゃまぜ・・
結弦くんの、泣きたい気持ちを必死で振り払う健気さと、ユヅルを泣かせたハビの表情、両方にウルウルしながら、この二人に見入ってしまいます。
表彰式を終え、リンクの中でそれぞれ撮影を終えた後、再び二人はハグ・・抱きしめ合います。
もう一度、これ・・
そして、それぞれの歩む方向を見ながら、最後に、ハイタッチして、別れました。
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あ・うん ・・
ユヅとハビが15日にブライアンに見せてくれた、
「二人の弟子」の、集大成のかたち・・
どちらからいうとでもなく、目配せでわかる・・
こんなこと、あるんですね、大舞台の練習で・・
どちらも素晴らしい技術があり、どちらも勝ちたい。
それぞれに勝ちたい2人が一緒に身に着けた、
ブライアンのスケート哲学・・
そこに気脈が通じ合い・・
それぞれに勝ちたいはずの2人の間に満ちていた、
純粋で、美しい・・何だろ?
緊張高まる空気の中で、2人だけ別の世界にいたかのよう・・
もう、私はここでも涙腺崩壊でした。
ブライアンは、どんなにか嬉しかったことだろう・・
本文と関係ないけど・・なんとなく良くて・・(T_T) YouTubeだったかな
そこに満ちていたものは、優勝とかメダルとか以上に、とても大切なもので、ブライアンが目指すものがそこにあるんだなあ・・と、思いました。
試合の素晴らしい結果というのは、そのあとに、自然についてくるものなんだよ、それこそが、本物だよ、と言っているかのよう。
あの苦しい状況があったからこそ、二人にそんな美しい光景も生まれ、さらには、二人の絆があの平昌の地でしっかり結ばれたのではないかなあ・・ と、考えてみたりしています。
平昌に行く前は、「背中を見せ続ける」思いもハビの中にあって、距離を置いていたわけだし。
ハッピーな二人
結弦くんもハビも、凄いけど(素地が良いからかもしれないけど)、
二人をそんな美しい絆にまで導いたブライアン・・
本物の指導者ではないかと思いました。
画像は、一部お借りしました。
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