第21話
実亜へ
実亜、元気にしていますか?
ご飯をしっかり食べていますか?
実亜を守ってやれなかったこと、僕は毎日、後悔しています。
でも、あの時、実亜に自首をしてもらうしかなかった。
まさか、僕と朔で死体を始末するわけにはいかなかったからね。
あの時、実亜が追い詰められていたことに気づいてやれなくて、本当にごめん。
実亜を捨てた男が萌子さんのご主人だったなんて、すごいめぐり合わせだったね。
でも、実亜はどうして、1人で抱え込んじゃったの?
実亜がご主人と援交していたことを、「ばらす」とご主人に脅されたからって、白老に行くことなかったんだよ。
僕に打ち明けてくれればよかったのに。
1人で苦しんで辛かっただろう。
実亜が援交していたからって、僕は気にしなかったよ。
過去のことだからね。
今が大切だったんだよ。
実亜は本当に僕のことが大好きで、僕との生活を大切にしていてくれていたんだから。
実亜は入院中、萌子さんに相談したんだね。
萌子さんもそれが、自分のご主人と分かったんだ。
決着をつけに、白老に行くことを選んだなんて、後から聞いて、本当にびっくりしたよ。
萌子さんは病気になり、ご主人にとってもよくしてもらっていたけれど、ご主人は心の闇も持っていたんだね。
ご主人は紳士で完璧だったのに、違っていたなんて、僕は今でも信じられないよ。
人間には誰でも汚い部分がある。
それにしても、実亜に執拗に脅してきたご主人はなにが目的だったのだろうね。
実亜が心の病を持って、僕と結婚したことを、もっと、思いやってあげれば良かったよ。
あの冬至の日、初めて、実亜と話したとき、実亜は「自分の存在は許されない」と、自分で自分に怯えていたね。
僕は実亜への接し方に戸惑ってしまった。
でも、実亜は、僕を必要としてくれていると、瞬時に思ってしまったんだ。
直感的だった。
それなのに、萌子さんのご主人と再会して、脅されて、実亜は「私など幸せになれないのだ」と、絶望してしまったんだね。
実亜、僕は実亜を待っているから。
心配しなくていいからね。
3年なんて、すぐに経ってしまうから。
また、手紙を書くし、会いに行くよ。
実亜の必要な物を持って行くからね。
手紙で知らせてくれよ。
実亜と初めて結ばれた冬至がもうすぐ来るね。
風邪を引かないでね。
秀治
札幌市東区………
札幌女子刑務所
封筒にそこまで、書いた時だった。
来客を知らせるチャイムが鳴った。
僕はインターフォンで応じた。
「秀、俺だ」朔だった。
僕はマンションのドアを開けるボタンを押した。
5階の僕と実亜の部屋に、朔は直ぐにやって来た。
玄関で靴を脱ぎながら、「急に悪いな」と、缶焼酎の入ったコンビニの袋を僕に手渡した。
朔と僕はダイニングテーブルを挟んで座り、焼酎を飲み始めた。
重たい空気が流れていた。
「実亜ちゃんに会いに行ってるのか?」
「ああ。でも、面会時間は10分だし、アクリル板通して、話しも…
だから、手紙を書いている」
「そうか」
朔が真顔になって、僕を見つめた。
「秀。今から、話すことは俺のあくまでも推測に過ぎん。だから、気を悪くしないで聞いてくれ」
僕は朔の深刻に話している異様さに
気圧されて頷いた。
「萌子さんのご主人のとどめを刺したのは、秀、お前じゃないのか」
僕は息を飲んだ。
「本当は、秀。お前が殺したんじゃないのか」
窓のカーテンを閉め忘れていた。
雪が音もなく降っていた。
続く
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愛川るな
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