第2話
とにかく、中間テストが終わった。
11月の期末テストまでは時間がある。
それに向けて、直ぐに勉強を始める気には誰もならない。
生徒たちの顔は解放感で輝いていた。
形のよい顔だちに切れ長の目が利発さをかもし出している野口怜那は、
陸上部の活動に出るため、更衣室でジャージに着替えていた。
他の運動部の生徒たちも談笑しながら、着替えていた。
怜那は他の生徒たちより、首一つ出ていた。
そして、長い脚には引き締まった筋肉が形良くついている。
「野口さんがいれば、100メートル走は優勝間違いなしよね」
丸い鼻をした内山信子が調子良く、話しかけてくる。
しかし、これがくせ者なのだ。
「でも、野口さん」
声をかけてきたのは、たまご形の整った顔をした前川美紀だった。
怜那は小さくため息をついた。
美紀は怜那とクラスは違うが、陸上部で走り幅跳びの選手として活躍している。
「野口さん、胸が大きくて重たくない?今度の大会では抱えながら走るんじゃないの」
美紀の言葉がまるで号令をかけたかのように、一斉に
笑いが起きた。
怜那は黙って下唇を噛んだ。
そして、みんなは笑い笑い、更衣室を出て行った。
少し遅れて、怜那が出ていくと、
「怜那」と理沙が呼びかけた。
「どうしたの?」
いつものことだと分かっていたが、
怜那は理沙に問いかけた。
「部活が終わるまで怜那を待っている」
理沙はくったくなく微笑んだ。
「帰りなよ。帰って勉強したら?」
理沙は怜那が言葉の暴力を受けていたのを知っているはずだ。
怜那はばつが悪くて、わざとつっけんどんに言った。
理沙はどこの部にも所属していない。
いわゆる帰宅部だ。
怜那と理沙は校門を出ると、右と左に別れる。
家が逆方向なのだ。
しかし、理沙はいつも怜那の部活が終わるのを待っていたのだった。。
2年生になって、クラス替えをしたのだが、そこで初めて怜那と理沙は同じクラスになった。
理沙は陸上で活躍していた怜那に1年生の時からあこがれを持っていた。
怜那はなついてくる理沙を、最初はうっとうしいと思ったが、理沙といると心が和むのだった。
運動も勉強も出来ない理沙だが、そんなことを気にもしない様子でいる。
焦るとか羨むとか、理沙には無縁だった。
どうして、そんなふうに生きられるのか怜那には不思議だったが、いつの間にか、怜那は理沙といると楽な気持ちになっている自分に気がついた。
こうして、妬まれて言葉の暴力を受けた後、正直言って、理沙が待っていてくれることは、怜那にとって支えだった。
「今日は雨が降っているから、廊下で筋トレなんだ」
「うん。知っている」
理沙は嬉しそうに答えた。
「教室で待っていて」怜那が言うと、
「わかったあ!」
理沙は素直にうなづいて、教室に続く廊下を歩いていった。
怜那は陸上部では独りぼっちだった。
団体戦はリレーだけだから、独りぼっちでも練習することに差し障りはなかった。
怜那はリレーの選手でもあったが、バトンの受け渡しが上手く出来ればそれでいい訳だ。
それほどのチームワークは必要なかった。
だから、言葉の暴力を受けながらも、大好きな走ることを辞めないでいられた。
「絶対に辞めない」
怜那の切れ長の目に揺るがない光りが宿った。
しかし、怜那は相葉先生が言った「人生にも王道なし」を目の当たりにすることになる。
つづく
最後まで、読んでいただきまして、ありがとうございます。
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愛川るな
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