第2話*『冬のカケラ』 | jun2980さんのブログ

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       第2話


身体が重い。

目が覚めて、自分がコートを着たままでソファーの上で眠ってしまったことを思い出した。

腕時計を見ると、4時だった。

まだ、外は真っ暗だ。

カーテンの隙間から、一筋の光りさえ差していない。

また、眠ってしまうと寝坊をしてしまいそうだった。

身体を起こすと、とりあえずコートを脱いだ。

シャワーを浴びることにした。

僕はさっきから、頭をよぎる萌子さんの顔を追い払っていた。

本来なら、妻を思うべきだ。

いきなり、薬の副作用で象のようにになり、入院して心細くしている妻を思うべきだ。

そう、自分に言い聞かせているのだが、どうも言うことを聞いてくれない。

自分で自分を持て余していた。

シャワーの湯の出方を最大にして、
しばらくの間、僕は頭から湯をかぶっていた。

どしゃ降りの雨の中にいたかった。

僕はトーストと紅茶で、簡単に朝食を済ませた。

例え実亜がいても、朝は起きてこないので、いつもこんな朝食だった。

僕は仕事を終えると、実亜の入院している病院へ向かった。

仕事の場所から、市電に乗ると、10分ぐらいで病院に着いた。

僕は本当に妻に会いに行くのだ。

そう、強く自分に言い聞かせていた


病室に入ると、実亜が僕に飛びついてくるような勢いで「秀ちゃん」と甘えて来た。

隣りの萌子さんが微笑みかけながら会釈をした。

僕も軽く頭を下げた。

実亜はまだ、点滴に繋がれていた。

「大分、腫れが引いたね」

そう言って、実亜のベッドサイドの椅子に座った。

萌子さんは、気を利かしたつもりなのか、部屋から出て行った。

萌子さんの傍にいたかったが、実亜が一緒では、居心地が悪い。

正直言って、出て行ってくれてほっとした。

「ねえ、秀ちゃん、私と萌子さん、似てる?」

唐突な実亜の質問に、僕は慌てた。

「隣りの人のこと良く見ていないから、分からないよ」

やっとの思いで答えた。

「看護師さんたちが、私達2人は似てるって、言うの」

実亜の上目使いで僕を見る目は、あの20年前の冬の日の萌子さんそのものだった。

萌子さんに捨てられて、僕は脱け殻のように、生きていた。

そんな僕の前に実亜が現れた。

一年前だ。

今日のように、雪が降っていた。

ガラスのドアを開け、初めて実亜が店に入って来た時、僕は萌子さんが入って来たのかと思った。

ー例え、どこかで会っても、知らないふりをして。あいさつもしないで。

萌子さんはそう言った。

そんな萌子さんが僕の店に入ってくるはずがない。

その時、そう思った。

それに、実亜は萌子さんより若かった。

長くて綺麗な髪の実亜は、短くカットをしてほしいと、依頼した。

「どのぐらい、お切りしたらよろしいですか」

僕は綺麗な髪をブラシでとかしながら、見とれていた。

綺麗な髪の実亜は、艶だった。

萌子さんも艶だった。

「バッサリと切って」

肩甲骨の下まで延びている髪を手に取って、切るにはもったいないと思った。

でも、客の依頼に従わなくてはならない。

僕がハサミを手に持った。

萌子さんの髪を切った時を思い出していた。

萌子さんは潔かった。

でも、実亜は違っていた。

僕がハサミを入れようとした瞬間だった。

大きな目から、涙をあふれさせ、しまいには顔を手で覆うと、声を出して泣き出したのである。

僕はすっかり途方に暮れてしまった。

でも、僕は実亜を愛おしく思ったのだった。

        続く

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