ゲゲゲのブラック次元 -82ページ目

ゲゲゲのブラック次元

コッペパンと妖夢が好きなゴクウブラックと
罪のない人間と海砂に優しい夜神月と
色物揃いで最強の部下たちを従えるリボンズ・アルマークが
存在するカオスな次元です

-酢乙女邸-

「お嬢様、今…何と?」

「ふたば幼稚園に通い始めてしん様にお会いしてからこの1年半、あいの数々のアプローチも虚しく未だにしん様との進展はなし……。決めましたわ。金輪際、しんさまとはお会いしません」

「しんのすけ君を諦めるおつもりですか」

「誰が諦めると…?あいは気づきましたの、しん様は大人の女性にしか興味を示さないと。ならば今は潔く足を洗って、もう一度大人になってから再チャレンジするまでですわ」

翌日-夕方-

「いやぁめんごめんご。どっかり忘れてて日が暮れちゃったけど、あいちゃんオラになんか用?」

「しん様に、お別れを申し上げようと思いまして」

「えっ?もう帰るの?……オラ、今来たばっかなのに」

「貴重な時間を奪って申し訳ありませんわ。でも、しん様にどうしてもこれを渡しておきたくて…」

「おっ、金ぴかだゾ」

「写真では置き場に困ると思いまして、ブローチにしてみました」

「ほぉほぉ、ひまが喜びそうですなぁ。これオラにくれるの?」

「ええ。今はご迷惑かもしれませんけど、しん様が大人になるころにあいのことを忘れてしまっていたとき、それを見て思い出していただけたらと…」

「あはぁ~金のブローチぃ♡」

 

 しんのすけは金のブローチに夢中で話を聞いていなかったが、あいは頬笑みを浮かべてしんのすけに背を向ける。隣の車道に黒磯の搭乗したあいの専用車が停車する。

 

「しん様、しばしのお別れですわ」

「うん、オラも早く帰らないとアクション仮面の時間に遅れちゃうし。あ、このブローチありがとね!」

「……しん様、どうかお元気で」

「お?」

 

 あいは車に乗り込む。去っていく車を眺めてしんのすけはその場に立ち尽くしていた。

 

「あいちゃん、なんで泣いてたんだろ。ま、いっか。アクション仮面アクションかめ~ん!」

13年後-野原家-

「お帰り~」

 

野原しんのすけ(18)

アクション高校3年

 

「お兄ちゃん彼女できた?」

 

野原ひまわり(13)

アクション中学1年

 

「できてたらこんな不貞腐れてねーって。オラに女運がないのは親父譲りなんだよ」

「あははははw言えてる言えてるww」

「あんたたち?それどういう意味で言ってるのかなぁ~?」

 

野原みさえ(41)

専業主婦

 

 しんのすけとひまわりは背後にとてつもない殺気を感じ青ざめる。

 

「なんでも親のせいにするんじゃないの!あんたの人生なんだからあんたが頑張らなきゃしょーがないでしょ。大学進学とかどうすんのよ」

「大学?めんどくさい」

「あのねぇ…この不景気で高卒なんかで働ける仕事なんてたかが知れてるのよ?目指すところがないならせめてアクション大学ぐらいには行ってもらわないと」

 

 一方、マサオは漫画家、ボーちゃんは科学者、トオルは一流の大学を経て一流の企業に就職するという目標に向かって切磋琢磨しているが、しんのすけには自分を突き動かす人生の目標がコレと言ってなかった。

 

「お兄ちゃんニート街道まっしぐらだね。でもウチは貧乏だから親の金なんて頼れないよ?」

「親父が課長になったからってそれまで以上に金を無駄遣いするからだろ。なぁお袋」

「……これでも節約してるもん」

「はぁーやれやれ……たまたまオラのことを好きになった大金持ちのお嬢様が突然家に押しかけてきて結婚を前提にお付き合いを!…みたいな展開にならないもんですかなぁ」

「ないない」

 

 ひまわりとみさえが同時に否定する。

 

「ただいま」

 

野原ひろし(48)

双葉商事 課長

 

「しんのすけ、お前宛に手紙がきてるぞ」

「えっ、手紙?」

「まぁ綺麗な花束まで!」

 

 しんのすけが封筒を開ける。

 

「オオオオオオーーーッ‼」

 

 封筒の中には手紙と共に気品が漂う少女の写真が同梱されていた。

 

「うわっ、スゲェ美人」

「誰この綺麗な子‼」

 

 しんのすけ、ひろし、ひまわり、みさえはその写真に驚愕する。

 

「手紙には何が書いてあるんだ?」

 

 手紙には「明日の午後9時ごろお迎えに参ります 野原しんのすけ様」

 

「差出人の名前は無しか」

「写真が入ってたんだから、その子が出した手紙なんじゃない?」

「こ、この子がオラに……」

「この見て呉れからして、かなりの大金持ちのお嬢様だぜ。歳もたぶんしんのすけと同じぐらいだ。しんのすけぇ~隅に置けねぇ奴だなお前!俺たちに内緒でいつの間にこんな美人と知り合ってたんだよ」

「し、ししし、知らねぇよ‼そもそもオラ、こんな綺麗な子とお知り合いならとっくにプロポーズして結婚してるゾ‼」

「お前まだ学生だろが」

 

 ひろしとみさえが同時に突っ込む。

 

「と、とにかく!このお嬢様が、明日ここに来るってことだよな」

「大掃除しなきゃ‼」

翌日

 

 野原家の前に黒い車が停車する。

 

(く、来る……!)

 

 玄関の扉が開く。野原家一同が息をのむ。

 

「野原家の皆さん、ごきげんよう」

 

 入ってきた少女のあまりの美しさに野原家一同声も出せず唖然とする。

 

「実際に見てみるとホント綺麗な子ねぇ」

「う…うん」

「お久しぶりです、しん様」

「し、しん様……」

 

 しんのすけの頭の中にはお花畑が広がっていた。

 

「って、アレ……しん様?」

「うわー、しん様だってよ!……どうなってんだコレ」

「あの呼び方、どこかで聞いた覚えが……」

 

 その時、しんのすけの脳裏に13年前の記憶が過る。

 

「ねぇ、その呼び方、君ってまさか……」

「思い出していただけましたか!……改めてごきげんよう、酢乙女あいです」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「ええええええぇぇぇーーーーー!!?」

「やっぱり‼」

「酢乙女あいって……じゃあしんのすけが5歳の頃同じ幼稚園だった、あのあいちゃん?」

「ええ。お久しぶりです、お母様、お父様、ひまわりさん」

「ほえぇぇ~マジかよ……」

「ずっと海外へ留学していたのですが、しん様にお会いするため、3日ほど前に日本へ帰国致しました。しん様…昔よりも更に凛々しくなられましたね///」

 

 大人になったしんのすけに見惚れているあいの手をしんのすけが取る。

 

「あいちゃんこそ、綺麗になったね」

 

 色目使い。

 

「ガタッ」

 

 ひろしとみさえの体制が崩れかかる。

 

「5歳の頃は「オラあいちゃん苦手~…」とか言ってたくせに…」

「ゲンキンな奴……」

「しん様ぁ……♡」

「じゃあ、早速結婚しますか」

「待て待て待てーーい‼」

「しんのすけ、気持ちは分かるがそう急ぎ過ぎるな。まずちゃんとお付き合いから始めないとな」

「そういう問題じゃないでしょ。あんたまだ学生なんだから結婚は認められません!せめて卒業してからにしなさい」

「ねぇねぇあいお姉さ~ん、また綺麗な宝石を…ってあれ?」

「あ、あいちゃん!?どしたのあいちゃん!」

「はぁ~しん様ぁ~……♡」

「のぼせてるみたい。よっ、お兄ちゃん色男!」

「いやぁそれほどでも」

 

 野原流照れ顔。

 

「あ、そんな場合じゃなかった。オラ、あいちゃん車に戻すから、ついでにあいちゃん家まで送ってもらってくる!」

 しんのすけは意識を失っているあいを連れてあいの専用車に乗り込む。

 

「よっ!えっと…

「黒磯です」

「ああそうそう黒磯さん。相変わらず黒いね。夏とか熱くない?

「ど、どうも…ってお嬢様⁉」

「いやぁ、あいちゃんがあまりにも綺麗になってもんだからついいつもの感じで口説き文句言ったらあいちゃん気絶しちゃって」

「お、お嬢様の作戦はどうやら効果あったようですね…(汗)」

「作戦?」

「ああいや!こちらの話です」

「ふーん。んじゃまあ、あいちゃん家に帰りますか。オラもこのまま乗っていくから」

「えっ⁉」

「まさかダメとかないよね?オラはあいちゃんのこんにゃくしゃだぜ?」

「そ、それを言うなら婚約者です…(ここで断ってもしお嬢様にそのことをバラされでもしたら…うーん…止むを得ん。)」

「では、今日はあいお嬢様のご客人として君を酢乙女家にご招待しましょう」

「チッチッチ…客人じゃなくて恋人だろ?」

「……(本気なのか)」

 

 しんのすけたちを乗せた車は野原家の前から出発して行った。

 

「しかし、あのあいちゃんがあんな美人になるなんてな」

「しんのすけとタメ張るぐらい変わっててもやっぱりお嬢様よね」

「「お父様」だってよ。うへへへwwしんのすけがもしあいちゃんと本当に結婚したら耳掃除とかしてもらおっかな~」

「鼻の下伸ばして気持ち悪い笑い方すな!」

「プレゼントで宝石とか貰いたかったな~……」

-酢乙女邸-

「あいちゃん、あいちゃんの脚綺麗だね~」

 

 しんのすけはさり気なくあいに寄り添い鼻の下を伸ばしてそう囁いた。

 

「……しん様の為に、この身体が美しく育つよう、私頑張りましたの」

「オラの為?」

「ええ、私はいつだってしん様の為に生きてきました。大好きなしん様にあいのことを少しでも好きになっていただけるよう、懸命に努力しました」

「へ~、それにしても本当に綺麗だね!あいちゃんの愛が伝わってくるよ」

「お褒めに預かり光栄ですわ。あ、あの…しんさま、あいの身体に興味を持っていただけたなら、よろしければ身体に触れていただけませんか…?」

「えっ、いいの⁉」

「こちらからお願いします。しん様の体温を、この身体で感じたいの…」

(グッ…!な、なんて子だ…オラが言いたくても躊躇してたことをこうも簡単に……。オラの記憶じゃ、あいちゃんは凄く積極的な性格だった気がするけど……いや駄目だ!彼女は彼氏がリードしなきゃいけないのに逆にオラが引っ張られてどうする!)

「あいちゃん!」

「……⁉」

 

 しんのすけはあいの胸の中に飛び込んでいた。

 

(……おっ、あいちゃん結構あるな。ってマズい!いくらあいちゃんだからって、いきなりこんな…)

 

 あいは顔を赤くして自分の胸の間に顔を密着させているしんのすけを優しく抱擁する。

 

「しん様……♡」

「あいちゃん、ダイブした後で言うのもなんだけど…む、胸よかった?」

「しん様に飛び込んでいただけるなんて、あいは幸せですわ///」

「大丈夫みたいだな…」

 

 しんのすけはゆっくりとあいの胸元から離れる。

 

「あいちゃん」

「はい///」

「何かオラに聞きたいこととかない?」

「あっ、そうでしたわ!しん様、もう既に誰かとお付き合いなさってませんか?しん様は硬派でとてもお優しい方ですから、世間の女性が放っておくとは思えません。彼女がいらっしゃらないかどうか、それだけが心配で……」

「いやぁ、硬派だなんて照れるなぁ。まぁそりゃオラかっこいいし、彼女の一人や二人いつでも作れるんだけど……

オラと付き合うなら美人で優しくて気前のいい子が相応しいかな~って思ってさ。ね、あいちゃん?」

「流石しん様!しん様はやはり私の思っていた通りの方でしたわ」

「あいちゃん…そういやオラ、5歳の頃はあいちゃんに対してやたら冷たかったよな。

まだ子供だったからとはいえ、あいちゃんの気持ちも分からずに不遜な態度とってたことは今になって本当に悪かったと思ってる。

だからその……ゴメン」

「そのようなことはまったく気にしておりませんわ。

あの頃から「例え現在(いま)は駄目でも、精進し続けていればしん様はきっとあいの気持ちを理解してくださるはず」と信じていましたから」

「……あいちゃん、オラと付き合ってくれる?勿論、結婚を前提に」

「しん様が宜しければ……///」

「チラッ……やれやれ、仕方ないな。

最近の若い女にはオラの価値が判らないみたいだから、とりあえずあいちゃんで我慢しとくか

「まぁ、その距離を置いた接し方、お懐かしいですわ」

「ハハハ…ちょっと調子に乗っちゃったか?あの頃のオラはこんな感じだったよな。

けど今のオラは君にそんなデカい口聞ける立場じゃない。

だから、あいちゃんがいてくれて本当によかったと思ってる

「しん様…///」

「あはぁ~♡今日からオラもリア充か!むふふふふ…」

「待ちたまえ」

「おっ?」

 

 酢乙女邸から出て行こうとするしんのすけを呼び止める声があった。

 

「君が野原しんのすけ君か」

「はい、そうですけど…あんたは?」

「娘がこれから世話になるようだから、挨拶しておこうと思ってね」

「娘?…あいちゃんのお父さん⁉」

「『酢乙女まこと』という。言わずもながらあいの父親だ。以後お見知りおきを」

「ど、どうもこちらこそ…‼」

「君のことは娘からいつも聞かされていたが、話の通りとても個性的で愉快な子のようだね。

私に似て変わった感性を持つ娘が気に入ったのも頷ける。

尤も、あいから君の話を聞かされる内に、私も君に興味を持ち始めたんだ」

「ほ、ほぉ…」

「娘の話によると、君は女性の好みにはうるさいと聞く。

どうかな?ウチの娘は君のタイプに当てはまるかい?」

「いやぁ、あんな綺麗な娘さんとお付き合いができるなんて世界一の勝ち組になった気分ですよ!」

「それはよかった。何分、愛情表現が少々極端なところもある子だが、根は純粋ないい子だ。

振り回されないように気を付けて付き合ってあげてくれたまえ。

私はこれから直ぐイギリスに立つが、また会える日を楽しみにしているよ」

「お達者で‼」

-野原家-

「へぇー、あいちゃんのお父さんに遭ったのか」

「なんかよくわかんないけど気に入られてるみたいでさ」

「うーん、やっぱりしんのすけはあいちゃんか。

ま、あいちゃん綺麗だし大金持ちだしお前にゾッコンみたいだし、普通に考えりゃ断る理由ないよな」

「あいちゃん脚もすっごく綺麗だったぜ?胸も程よい大きさだったし」

「そうそう!いやー、あの綺麗な脚で膝枕してもらいながら耳掃除とかしてもらいたいな!」

「オラは胸に顔挟ませてもらったけどな」

「このラッキースケベ!」

「オッホン…!とにかく、あいちゃんとお付き合いするにしてもまずは受験勉強よ」

「えっ、何のために勉強すんの?」

「大学に進学するために決まってるでしょ」

「何のために大学入るの?就職先云々なら心配ないぜ?あいちゃんと結婚すれば一生遊んで暮らせるんだから」

「おバカ。あいちゃんと結婚するならあんた婿養子になるわけだから、それなりの教養は身に着けとかないと駄目なのよ?」

「えっ、そうなの?」

「あー、なら最低大卒ぐらいの経歴は必要になってくるな……

しんのすけ、ここは覚悟を決めて大学行け!」

「ええぇ~⁉」

「お前だってあいちゃんと結婚したいだろ?

お前があいちゃんと結婚できたら、お前は勿論、俺たち野原家全員が楽に暮らしていける。

そんな薔薇色の未来を考えれば、今のほんの一時の苦労なんて屁の河童だろ」

「……決めた。オラは大学に行く!大学に行きながらあいちゃんとお付き合いして、出来るだけ早く結婚してみせる!」

「おうしんのすけ!それでこそ我が息子よ!」

「よっ!お兄ちゃん大統領‼」

「輝かしい野原家の未来はオラが掴む‼」

-酢乙女邸-

「結果はいかがでしたか?」

 

「大いに満足のいくものだったとはいえ、完璧とは程遠い結果ですわ。

私がしん様にハートを射抜かれた時のような、あれくらいの衝撃をしん様に与えることは叶わなかったのですから……。

あれでは普通の“キレイなおねぇさん”よりは上、程度のリアクション……

ななこさんが相手ならもっと……」

 

(回想)

 

「あい様が敵わないかもしれないなんて……そんな女性がこの世に存在しますの⁉」

 

「白波」

 

「如何なさいましたか、お嬢様」

 

「キャー!白波様よ‼」

 

「相変わらず凛々しくて素敵ですわ‼」

 

 あいの取り巻き達が白波の登場に興奮する。

 

「この方ですわ」

 

 あいは白波から受け取った1枚の写真取り巻きに渡した。

 

「まあ……本当にこの方が⁉」

 

 それは12年前の大原ななこの写真だった。

 

「随分とみすぼらしい方ですわね」

 

「こんな田舎娘、あい様の足元にも及びませんわ」

 

「お黙りなさい」

 

「……⁉」

 

 ななこの写真を見ながら小馬鹿にして嘲笑っていたあいの取り巻き達が、一瞬で硬直する。

 

「ななこさんは、この私が生涯のライバルとして認めた、ただ一人の女性ですわ」

 

(回想終了)

 

「白波、今夜はもういいわ」

 

「……はい。おやすみなさいませ、お嬢様」

 

 白波が静かに扉を閉め部屋から出ていく。

 

「しん様…」

 

 左手で下腹部を擦り虚ろな目で夜空を見上げるあい。

 

「会いたい…しん様に会いたい……」

 

 知らず知らずのうちに目から涙が流れ始める。

 

(しん様の心の中には、今もどこかにななこさんの幻影が……

結局私では、どんなに頑張っても、しん様の1番にはなれないということですのね……

それでも……)

 

(「……あいちゃん、オラと付き合ってくれる?」)

 

「それでも私は、しん様を…愛しておりますわ…!

世界中の、誰よりも……」

 

 ベッドに寝そべり、スカートの下へ手を潜り込ませる。

 

「んっ、しん様…しん様ぁ……しん…様……っ」

 

~翌日~

 

-アクション高校-

 

昼休み

 

「しんのすけ君、話ってなんだい?」

 

 斎賀れい(18)

 アクション高校3年

 

 中学2年からのしんのすけの親友。

 非常に容姿端麗で学力も運動力も常人離れしているが、しんのすけと同じ高校に望んで入った。

 幼少時代から憧れていた年上女性の大原ななこが結婚し、失意に苛まれていた彼を励ましたことで友情が芽生えた。

 以後もしんのすけが女子にフラれる度に励ましたりなど、何かと世話を焼いてくれる。

 しかし、自分のことは一切話そうとせず、プライベートにおける謎は多い。

 

「いやそれがさぁ、オラとうとう彼女できちゃってさぁ!」

「えっ、本当かい…⁉」

「ホレ」

 

 あいの写真を見せる。

 

「へぇー!すごい綺麗じゃないか。こんな美人どうしたの?」

 

 しんのすけはれいにあいとの関係を語る。

 

「しんのすけ君、そんな素敵な女性との関りを持っていたなんて幸運だね」

「関りって言っても、5歳の頃に1年間同じ園に通ってただけなんだけどな。思い出せたのが不思議なくらいだ」

~一ヶ月後~

 

「一ヶ月か……早いもんだね」

「幸せな時間は短く感じるものです。しん様と過ごす時間は、何よりもあっという間に感じますわ」

「あいちゃん…実は、君と付き合いながら考えてたんだけどさ」

「……?」

「オラたち、このまま一緒になっていいのかなって」

「……どういう…意味でしょう?」

「何て言うかさ、あいちゃんとオラじゃ住む世界が違うように感じるんだ。

だから、オラみたいな平凡な奴なんかとじゃ――」

「そんなことはありません‼」

「……」

「私はこれまで、しん様に認めていただけるように…求めていただける女性になると…ただそれだけを思って努力してきました!

私にまだ気に入らないところがあると言うのであれば直します!」

「いや!あいちゃんは完璧だよ」

「でしたら…何故私を拒むようなことを仰るのですか⁉」

「……あいちゃんは、今のオラと昔のオラ…どっちが好き?」

「えっ……」

「5歳の頃のオラって言ったら、一番ハチャメチャでワンパクだった時期だ。

アレに惚れたってことは、君はあの大馬鹿ぶりが好きだったってことだろ?」

「……」

 

 あいは俯き言葉を返せずにいた。

 

「オラも色々あってな…昔から憧れてたお姉さんが、オラが小5の頃に結婚しちゃってさ。

何とか友達に励まされて立ち直れたけど、現実を思い知らされたっていうか、見える世界がガラッと変わっちまって、つまらない奴になったんだよ、今のオラは。

金持ちがどうとか、家柄の違いって言うのもあるけど、それを思うとやっぱり、こんな腑抜けなんかと一緒になるなんて、あいちゃんに申し訳なくて……

久しぶりに会って、正直ガッカリしたろ?」

 

 突然あいはしんのすけの胸に抱き着いた。

 

「っ……⁉」

「そんなこと…そんなこと仰らないでください!!

言ったはずです…私はしん様に振り向いていただけることだけを思って生きてきたと!

例えどうお変わりになろうと、私の愛した男性は野原しんのすけ様、貴方だけです!

12年前から……ずっと!!」

 

 涙を流しながらしんのすけの下に蹲る。

 

「でも、どんなに努力して美しくなっても、どんなにしん様のことを愛していても、私では…しん様の心を射止めることなんてできないと……分かっておりました。

しん様の心には、いつもななこさんがいたからです……」

 

「あいちゃん……

 

「愛していただけなくてもいい……私の傍にいてください。

私にななこさんの替わりなんて勤まるわけもありませんが、私のことがお嫌いでないなら…お願いします…しん様……」

(そうだよな……)

「あいちゃん、らしくないこと言ってごめんな。

何かカッコつけたこと言っちまったけど、やっぱりオラ軟派なままだ。

こんな可愛くてスタイル良くて、誰よりもオラのことを愛してくれる子を諦めるなんてできるわけがない」

「しん様……❤️」

「好きだあいちゃん。オラが言えたことじゃないけど、君は変わらないでほしい」

「はい。死ぬまで…いえ…生まれ変わってもずっと愛しています。しん様❤️」

 

 夕日に染まるセーヌ川を前に2人は唇を重ね合った。

 

-CAST-

・野原しんのすけ(CV:神奈延年)

・酢乙女あい(CV:川澄綾子)

・野原ひまわり(CV:こおろぎさとみ)

・野原ひろし(CV:森川智之)

・野原みさえ(CV:ならはしみき)

・黒磯(CV:立木文彦)

・酢乙女まこと(CV:難波圭一)

・斎賀れい(CV:山崎たくみ)

・白波(CV:杉田智和)

・5歳のしんのすけ(CV:矢島晶子)