ゲゲゲのブラック次元 -104ページ目

ゲゲゲのブラック次元

コッペパンと妖夢が好きなゴクウブラックと
罪のない人間と海砂に優しい夜神月と
色物揃いで最強の部下たちを従えるリボンズ・アルマークが
存在するカオスな次元です



俺たちに翼はない~AnotherStory~(アナザーストーリー)


 
「伽楼羅、お前行って来いよ」

「ならぬ、それでは我が何のために玉座を捨ててまでこの奈落に戻ってきたのか…」

「俺、まだ子供のままだったんだ…だから、俺が言ってもポッポにまた迷惑かけるだけだしさ。それよか、お前がポッポを護ってあげた方が絶対いいって」

「し、しかし…」

「いいから、行ってこーい!!」

「グルアアアアアアアアァ!!父上ーーー!!」

「頑張れよ伽楼羅ーー!!」


「そっか、お兄ちゃんまた戻っちゃったんだ…」

「申し訳ありません、もしまたあのお方にお会いしたければ、何時でも私にお申し付けください」

「伊丹さんのおかげでお兄ちゃんに久しぶりに会えました。ありがとうございます」

「いえ、王家の血を引く者として、先代国王コンドルの忘れ形見であるプリンセス・ダヴの命を聞くのは当然のこと」

「あはははは…。伊丹さんはお兄ちゃんとずっと同じところにいたから、今まで千歳さんや成田さんみたいにはこっちに出てこれなかったんですよね。なら、その分伊丹さんの時間を大切にして楽しんでください」

「何と温かい慈悲の心…有り難き幸せ」

 

(回想)

 


「んじゃ、また遊ぼうねー」

「うむ、明日も国が平和であればな」

 

(回想終了)

 

 

(親愛なる我が友フェニックス、どうやらお前との約束が果たせそうだ。天に、小鳩様に感謝。)

 

「では失礼…」

「あっ、お食事が終わったら『ごちそうさまでした』って言うんですよ」

「ほぅ、どうやらこの国では私の知らない言語や儀式が多いようだ。ごちそうさまでした」

「あ、あと、言うの忘れてましたけど食べる前には『いただきます』って言います」

「うむ、やはり何かの儀式ですかな?」

「挨拶のようなものだと思います」

「なるほど、『おはよう』や『こんばんわ』と同じというわけですな」

「た、たぶん」

「では、儀式が終わったところで、私はフェニックスとの約束を果たしに行ってまいります」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「む?」

「学校には行ってもらわないと困ります!」

「学校…?あー、ホークが通っていた美空学園という学び舎ですか。ご心配なく、私は王でありこの国を治めるものであるが故、既に十二分なほどの知識を身に着けております。いや、しかしこっちの世界についての知識は持ち合わせておらんかった」

「とにかく、早く制服に替えて学校に行ってください!!」


「じゃあ、行ってきます」

「あれ、鷹志さん?」

「ガルーダ100の能力の一つ『ダイヤル・チェンジ』。現代人にわかりやすく説明すれば、知っている人物の性格を完璧に模写することができるのです。これなら下賤な者共に目立つことなく戦を乗り切ることができます。では、王ガルーダ、出陣いたします!!」

「け、健闘を祈ります」

「皆の者、後に続け、栄えある王の凱旋だー!!」

「大丈夫かなぁ……」


 伽楼羅は電車に乗り、柳原駅の改札口を出たところである後姿を目にする。

「おい、そこの烏」

「ん?ああ、アンタか。クールには程遠いが、昨日は楽しかった。鶏が入れ込むだけはあるってことか」

「そうか、良しなに。昨日のソナタとの戦い、敵ながら天晴であった。その功績をたたえ、ソナタに大烏の名にちなんで『レイヴン』という名を授けよう」

「これはこれは、アンタから名前をもらえるとはね。それがアンタの楽しい遊びのリングネームってわけか、有り難くいただいとくよ」

「気に入ったかレイヴンよ。もははは!」

「ところで、今日はそんな恰好でコスプレ大会かい?」

「貴様も同じなりであろうに。プリンセス・ダヴの命に逆らうことはできん、誰が好き好んであんな下賤な者どもの通う学び舎になどに行くものか」

「同意だねぇ。俺も何であんなつまんねぇとこに行こうとしてんだか…。けど、アンタが来るんならこれからは楽しくなりそうだ。それと、あんなロックな遊びなら大歓迎だ。また誘ってくれよ」

「戦いを好んでするとは、奴とは共感が持てそうだ」


 美空学園前で伽楼羅は誰かに呼び止められた。

 

「おはよう羽田君」

 

「(出たな、ホークの女…またの名をエセプリンセス。)」

「あっ、おはよう渡来さん」

「ううぅ……」

「んっ?」

 

 伽楼羅は背後に気配を感じ振り向く。

 

 

「ひぅっ?!」

 

 

 美咲はすぐさま身を隠す。

 

 

(おかしい…確かに何者かの気配を感じたのだが……)

 

「羽田君、どうしたの?」

「いや、誰かに見られてたような気がしたんだけど…」

「そういえば、私もさっきから後ろに殺気のような悪感が…」

「なぁ……さっきから林田はあそこで何やってんだ……?」

「さぁな……まぁそっとしといてやろうぜ、林田だから……」


「羽田ァー、オメさっさと話し進めろよー。でないとみんな帰れないだろ」

「話ってなんだっけ?」

「だから、卒業文集の分担割り振りだっての!ホンット仕えねぇな…!」

「はーい、委員長に全部任せまーす!」

「あっ、それ賛成、羽田なら出来るって!うちらが保証するわ。」

 

 生徒達が高笑いを揚げる。

 

 

(ゴブリン共め、少し身の程を思い知らせてやるとするか。)

 

 

 伽楼羅は片手で力強く机を叩く。

 

 

「……?!」

 

「じゃあ、君が文集の回収班。で、そこの君はまとめ班。そっちは写真の仕分け班で、そっちはレイアウトで、そっちは製本関係。よろしくね。じゃあ後は班ごとに作業を進めようか。以上!」

「なにそれ、なんで羽田が勝手に決めちゃうわけ?!」

「どうしてうちらが?!チョーむかつくんだけど!!」

「僕は委員長、君達が任せるって言ったから決めてあげたんだよ。なにか異論があるのかい?」

 

 伽楼羅はギロリと睨みつける。

 

 

「そ、そういう意味で言ったんじゃなくて…ねぇ今日の羽田なんか感じ違くない?」

 

「クッソ…羽田なんかにチョイびびったぁ…。こうなったら、チャコに全部ぶっこましてもらお!」

「うん…!」

「あっ、ああ…いんじゃね?」

「えええええええええええええー?!」

「羽田君、さっき…なんか妙に怖かったよね?羽田君らしくなかったね。どしたの?」

「あ、ごめん。びっくりさせちゃったね…。皆があまりにも言うこと聞いてくれないもんだから、少し頭にきちゃって…。柄にもなく偉そうなこと言っちゃったね、後で皆に謝るよ」

「ああ、いや…別にいいって。そりゃ誰でもあんな態度されたら腹立つって。いくら羽田君でも、怒るよね……?」

「しつれーい」

「あっ、先輩」

「さっきはクールだったぜ陛下」
「ふん、役立たずのゴブリン共に身の程を思い知らせてやっただけの事。兵を手足のように従わせる力がなくては王の器にあらず。兵を従わせるためには絶対的な力をもって屈服させるしかない。あの程度のゴブリン共に舐められるとは…我が最初の愚弟であるホーク・シアンブルーに、やはり王たる器はない。のうレイヴン、貴様もそう思わぬか?」
「まったくだね……」
「ふん」
「にしても、学校にいる間は委員長モードで行くのかと思ったらとんだアドリブだ。また面白いものが見れた。これからもたまにでいいから盛り上げてくれよ。できる事なら何かお礼がしたいな。王よ、今アンタは何を欲す?」
「世の存在意義は憎悪と怨嗟、だがせっかく学び舎に来たのだ。今はこの変わり果てた国についてあらゆる知識を身につけておきたい。かつての私は人知勇を兼ね備えてグレタガルドを動かしていた。今の私に足りないのは知性。それさえ身につけば、私は完全な王となり再びこの国を手中に収めることなど造作もない」
「ほぅ、それは面白い。だったらいい場所があるぜ?まず基本的な知識からだ。図書館に行けば、だいたいのことは身につくはずだぜ?俺は一度も行ったことないけどな」

 
「ここが図書館という場所か、何やら怪しげな書がたくさん並べられているな。よし、早速この中にある本を全て朗読してみようぞ」

(羽田先輩、すごく熱心に読んでる…!)

 2時間後

 

「うむ、ひとまずここにある本は全て完全暗記した」
(えええええー?!あの本当に読んでるのかさえ疑問に思うぐらいのスピードで暗記までしてたなんて!流石私の羽田先輩…♡あっ、まだ声もかけれたことないんだった…。それにしてもやっぱり羽田先輩ってすごい人なんだなぁ…心なしか前にも増して羽田先輩が遠くに感じる…。ううぅー…プリンセスが羨ましいー…!!)
更に完全なる王へ近づくため、王ガルーダは次の図書館を探す旅に出るのであった。ンッ?!誰だ!!そこに隠れているのは解っておるぞ!!
(ひいっ?!ば、ばれちゃった!!)
「そうか、今朝私を背後から見張っていたのも貴様だな。どこの手の者だ!!このガルーダを闇討ちできるものならしてみるがいい!姿を現せ卑怯者!!」

 

 美咲はついに抑えきれずに出てきてしまった。

 

「あっ」
……?!
(は、羽田先輩と目が合っちゃった…!どうしよう…まだ心の準備が…。)
「その緑色の美しい髪に澄んだ瞳…ま、まさか貴女は…『プリンセス・リンダ』!」
「えっ?」

 

 プリンセス・リンダとは、グレタガルドの王女プリンセス・ダヴと双璧をなす『ライトエメラルド家』の第一王位継承者。世界で最も清く美しく泉のように穢れなき純真な心を持つ、ガルーダがダヴ以外で唯一心を奪われた麗しの姫。

 ふと伽楼羅は、昨日の翔との戯れの際に、童貞を卒業する決心をしていたことを思い出す。

 

(いやだめだ…私には既にプリンセス・ダヴという心に決めたお方がおられる…その姫を差し置いて他の者と性交など!ましてや、プリンセス・リンダは敵国の主君。そんな相手に恋をするなどあってはならぬことだ。)

 

 

 しかし、伽楼羅が読んだ本の中に、この国では血縁者同士での結婚は禁じられていると記されていたものがあった。

 

 現在は伽楼羅のものだが、その身体は元々小鳩の兄であるヨージのもの。小鳩は伽楼羅の護るべき主君であり妹でもある。

 

(なんと!私と小鳩様は血縁者同士ではないか!!なんということだ…ではむしろ小鳩様への恋こそ禁じられた恋だったということか。……ならば、私の思いは決した!!)

 

「念のためお聞きしますが、貴女様はプリンセス・リンダその人で間違いありませんね?」
「ぷ、プリンセス?!で、でも私、名字が林田なので確かに愛称ではリンダと呼ばれてます」.

 

 伽楼羅は美咲の両肩に両手を添える。

 

 

「えあ、あう、あの……どど、どうしたんでしか……」

 

「姫、私のことを覚えておられますか?」
「ひ、姫?!あっ、あの……あのあのあの……」
「いえ、覚えておられないのも無理はありますまい。何しろ、私が王ガルーダの化身であるように、貴女もプリンセス・リンダの生まれ変わりであり、プリンセス・リンダその人ではないのですから。お初にお目にかかります、グレタガドの王『ガルーダ・ダークブラック』改め『伊丹伽楼羅』と申し上げます」
「あれ、羽田鷹志さんじゃないんですか?」
「ほぅ、私の愚弟をご存知でしたか」
「えっ、もしかして羽田先輩のお兄さんなんですか?!じゃあ、私今まで人違いを…」
「ホークは確かに私の愚弟ですが、人違いかと言われるとそうではないとも言えます」
「じゃあやっぱり羽田先輩なんですか?」
「いえ、私の名は伊丹伽楼羅です。しかし、この身体はホークこと羽田鷹志と同じものです」
「うぅっ…なんだか混乱してきました…」
「そんなことより姫、もし宜しければ現世での名を教えていただきませんか?」
「な、名前ですか?!は、林田美咲です!」

(言えた…羽田先輩に名前が言えた…。これでせめて名前だけでも憶えていてもらえれば、私はもう思い残すことは…)
「美咲様、私は以前貴女の姿を目にしたとき、貴女のあまりの美しさに思わず心を奪われてしまいました。どうか、結婚を前提に性交させてください」
「えっ…いま…なんと?」
「はて、私の声が小さすぎましたかな?では改めて…私と結婚を前提にお付き合いしていただきたい!!」
「け、けけけ…結婚ーーーーーーーーー!!」

 美咲はあまりのことに大きな声を上げて失神してしまった。

 

「姫?!」

 

 

 倒れる美咲を伽楼羅は受け止める。

 

伽楼羅「姫、どうなされたのですか、姫!!…まさか?!」

 

 伽楼羅は美咲の額に手を置く。

 

 

「…熱!」

 

 

 伽楼羅は倒れてしまった美咲を抱いて一目散に走りだした。

 

 

「姫、どうかしばしのご辛抱を…!!」

 

 

 美咲を長椅子に寝かせ、病院に電話する。

 

 

「救急車をよこせ、今すぐだ!ええい早くせんかこのゴブリン脳め!姫に万が一のことがあれば貴様らをバジリスクの餌にしてくれるわ!!」

 

 

 それからしばらくして美咲は伽楼羅の呼んだ救急車によって運ばれた。

 

 

「姫、これでまた私は貴女に別れの言葉一つ申せませんでした。出来る事なら、貴女を永遠に手放したくはなかった。だが、例えどんなことであろうと貴女のお命には代えられません。この腐った国を廃し、グレタガルドを再興し世界に平和が訪れたとき、必ずやお迎えに参ります。例え貴女が世界中のどこにおられようとも、私は…愛する貴女の下へ……」

 


 伽楼羅は美咲を見送り、羽田家へと戻ってきた。

 

「おかえりなさい。えっと……伊丹さん…ですよね?」

 

「小鳩様、何をわかりきったことを申されるか?私が玉座に返り咲いてる今、他の者と交替など起こらないと申し上げたでしょうに」

「わかってはいるんですけど、帰ってくる時はいつも別の人になってるので…」

「もははは、癖というやつですな」

 

 伽楼羅は靴を脱ぎ捨てた。

 

 

「あっ…」

 

「ん?どうなされました?靴なら脱ぎましたが…」

「あの、できれば履物は揃えてください」

「履物を揃える?何故必要なくなったものをそろえる必要があるのですか?」

「お家に入るときのマナーです。それに、今日は必要なくなっても次の日からは使います」

「確かに。なるほどマナーですか…。どうやら図書館の本を全て丸覚えしただけではまだまだ学びようが足りないようですな」

「えっ、伊丹さん図書館でお勉強してきたんですか?」

「はい。レイヴンからそこの本を読めば多少の知識は身につくと聞いたので」

「……」

「小鳩様、何故そんな不思議そうな顔をなさるのです?」

「いえ、勉強するのはとてもいいことです!ただ、伽楼羅さんが勉強ってあまりイメージになかったもので…」

「当然でしょう、私は生まれついての王ですから本来なら勉強などというものは必要なかった。ですが私は後からしゃしゃり出てきた愚弟達に玉座を奪われてしまい、この世界ではまだ一年も生きていません。そのためこちらの世界での私の知性は赤子同然なのです。いくら生まれながらの天才であっても、知識が初期化されいては話になりますまい」

「なるほど、だから今まで情緒不安定だったんですか」

「とにかく今の私に必要なのは知性を養うことただ一つなのです。姫、この城にはなにか本はありますかな?」

「はい。たぶん鷹志さんの部屋にたくさんお勉強の本があったと思いますけど」

「ほぅ、泣き虫ホークの形見ですか。ではさっそく有効活用してやりましょう。ん…?何か忘れているような……」

(回想)

「んじゃ、また遊ぼうねー。」

(回想終了)

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー!!!」

「ど、どうしたんですか?」

「フェニックスとの約束を完全に忘れていたアアアアアアアアアアアアアアア!!急がねば!!」

「伊丹さんだめです!もう外真っ暗ですよ!?」

「しかしフェニックスとの約束が!!」

「こんな時間に出かけちゃ健康に良くないです!!」

「おのれーー!!勉学に夢中で友との約束を忘れてしまうとは、このゴブリン脳めーーーー!!」