3/16は結婚記念日だった

東北の震災の年
暑い夏の真っ盛りの夕方
夫は急性心筋梗塞で
亡くなった

震災をすごく心配していた
初夏
震災でたいへんな人がいるから
今年の夏はエアコン無しで
窓を開けて寝よう

夫の提案通りにした

寝室は一階、道路に面した部屋
車が通ると
ヘッドライトが部屋を照らす
ちょうど曲がり角の我が家

直前でブレーキ、徐行
曲がったらアクセルを踏む

風でカーテンが揺れる
すぅーっと、
山からの風が 入る
夜の散歩の人の声が聞こえる

掃き出し窓が、
南向きと西向きにある

寝ているとカーテンひらひらに目が覚める

そして私は窓側に寝る

私は怖くて眠れないから
場所を変わって欲しいと夫に言った

結局
震災被害者を思いつつも
2日3日で
エアコンを使い出した

震災の影響で
夫の仕事は激減した

数年前脳梗塞で保険金が少し降りた。診断書に歩行困難になる旨が記入されていたから
残りの保険料の払込も免除になった

保険金で生活を賄った

夫は仕事のない半年を
静かに暮らした

ただ
行き場のないどうしようもなさから、私にはキツく当たった
わがままが過ぎた

私も辛くなり、
優しくできない日も増えていた

おぼろげな記憶の中
震災の話が出ると
すぐに夫を思い出す

わたしが
夫をすっかり忘れないように
震災の年に逝ったのだろう

最後になった結婚記念日には
お前と結婚して良かった
お前が奥さんで本当に良かった
と、褒め言葉をのこしてくれた

その年の秋
京都の競馬場に行く計画は
ナシになった
しばらくは仏壇にスポーツ新聞をお供えした

お父さん競馬見てる?
当たった?
当たったら、
こっちにも回してね