何回も歌っていると

懐かしい
甘酸っぱいあの景色この景色

まだ若かった頃の夫と見た景色
匂い

車の音
助手席からの風景
横顔

あの小道
帰り道の坂道

あの夕日

帰りたくないと泣いた夜

夫は 最後は
お前と結婚して良かった
良か嫁さんだ


何度も言ってくれた

自分に言い聞かせるかのように

お父さん
今の私があるのは
ぜーんぶ
お父さんのお陰だよ

ごめんね お父さん

子供のこと
施設にいるお義母さんのこと
義弟のこと

あれこれ心配やろうね

あたし
もうちょっと頑張るね

お父さんに助けてもらった命だよね

もう少し大事にするね

ごめんね お父さん
早くあの世に逝っちゃって

そんな予定じゃなかったよね
あの暑い夏が過ぎて
秋が来たら
京都競馬場に行く約束
とうとう
行けなかったね

あの社宅にも
あの団地にも
暗い生活だったから
戻りたくはないけれど

懐かしさに込み上げる涙が
止まらくなったよ

明日も早い

お父さん
あたし頑張るから
どうか
そばにいてね

あんまり泣くと怒られるから
寝る用意するね

大丈夫
もう大丈夫

ありがとう

大丈夫